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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2008/07/04
がつん!力 会社を救う5つの超原則 ‐ 鈴木貴博さん

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今回、ご登場いただくのは『がつん!力 会社を救う5つの超原則』の著者、鈴木貴博氏です。百年コンサルティング代表取締役である鈴木氏に、何を出しても売れない時代の戦略(=がつん!力)について、お話いただきます。
鈴木貴博
鈴木貴博(すずき・たかひろ) さん

百年コンサルティング代表取締役。東京大学工学部物理工学科卒業。1986年、世界的な戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに入社。ハイテク領域の大企業に対するコンサルティングを数多く手がける。99年、インターネットベンチャー企業のネットイヤーグループの取締役SIPS事業部長に転身。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業。「企業の寿命30年」の壁を越えるための成長戦略支援を行っている。

●現在のお仕事内容をお教えください。

鈴木:事業の平均寿命は、約30年であると言われています。事業が寿命を終えてしまうと共に、企業も衰退してしまいます。そこで、百年コンサルティングでは、基幹事業が成熟期を迎えた大企業に対して、百年を超えて成長できるように、戦略立案、実行支援などのお手伝いをしています。

●本書を書かれたきっかけをお教え下さい。

鈴木:職業柄、これまで多くの企業のビジネスプランに目を通してきました。そんな中、私が感じているのが、どのビジネスプランもソツがなく、きちんとまとめられてはいるけれども、インパクトが足りないということです。いまは大埋没時代です。商品にがつんとくる力!がないと、何を出しても売れません。その事実を感じ取ってほしい。そんな気持ちから、本書の執筆を決意しました。

●大埋没時代について、詳しくお教えいただけますか?

鈴木:私たちがモノを選ぶときは、必ず「1・3・7の法則」が働きます。「7の法則」とは、人は選択肢が7つまでであれば、瞬間的に1つのモノを選ぶことができるというもの。「3の法則」とは、人は特定のモノについて、3つまでしか思いつくことができないというもの。「1の法則」とは、人は何かモノを買うときは、最終的には1つだというものです。でも、いまは、モノであふれています。そんな中、新しい商品やサービスを出したとしても、選んでもらえことができる7つ、思いつくことができる3つに入ることは難しく、すでに出ている商品の中に埋もれてしまうのです。これが大埋没時代の意味です。

●そんな大埋没時代を勝つ抜くために、大切なのが、がつん!力ということですね。

鈴木:その通りです。競争相手が少なかった頃は、広告宣伝費をかければ、商品は売れました。でも、いまはそんな時代ではないんです。

●がつん!力に共通する要素をお教えください。

鈴木: 1つ目は、素材自体に「がつん!力」があること。2つ目は、共感が若者や子どもの間で口コミで広がりやすいこと。3つ目は、映像としての「絵」がたくさん撮れること。4つ目は、話題に希少性があり、そのため話題占有率が高くなること。5つ目は、突っ込みどころがたくさんあることです。みなさん、1つ目には力を入れているんですが、2つ目から5つ目を軽く見ていますね。

●2つ目の「口コミで広がりやすい」というのは、納得です。私自身も、失敗できないモノを買うときは、ネットでどう評価されているか、調べますから。

鈴木:それは、ネットが出現する以前と以降では、人々がモノを購入するまでの行動モデルが違うからですよ。以前は、商品に関心を惹かれる(A=アテンション)、商品に興味を持つ(I=インタレスト)、商品への欲求を持つ (D=デザイア)、商品を記憶する(M=メモリー)、商品を購入する(A=アクション)という「AIDMA」モデルでした。でも、今は商品に関心を持つ(A=アテンション)、商品に興味を持つ(I=インタレスト)、商品を検索する (S=サーチ)、商品を購入する(A=アクション)、そして、口コミ掲示板やブログなどで商品の情報を共有する(S=シェア)という「AISAS」(電通の登録商標)モデルです。つまり、欲求と記憶がなくなり、その代わりに検索と共有が生まれたんですね。そのため、ネットによる口コミが非常に重要になってきたんです。

●「AISAS」の第1段階である商品に関心を惹いてもらうには、どうすればいいんでしょうか。

鈴木:それは、分かりません。みんながそれを知って、実践してしまうと、途端に数ある商品の中に埋没してしまうことになりますから。
いま、ネット上では、どんなキーワードが話題になっているのかを測定するためのツールが出てきています。昔と違って、何が流行るか、その兆しが読み取りやすくなってきているんです。これをビジネスチャンスと捉えてほしいですね。本書には、この他にも、商品に関心を惹いてもらうための事例を出していますので、それぞれ考えてください。

●なるほど。5つ目の「突っ込みどころがたくさんある」というのが面白いですね。

鈴木:5つ目は重要なんです。テレビで取り上げてもらうときは、特にそうです。茶化しやすいと話題に火をつけやすいからです。また、ビジネスパーソンも何か突っ込みどころがある人、つまり長所だけでなく、短所もある人の方が人として愛されます。
実は、このがつん!力の元祖が松下幸之助なんですよ。ベンチャー時代、彼は経験則としてのがつん!力を武器に、商品を売り出していました。彼のがつん!力とは、「競争相手の商品よりも3割安くかつ3割品質が高ければ売れる」というものです。3割安くかつ3割品質が高いということは、0.7÷1.3=0.54で、実質、商品を4割6分引きしているということになります。これは、がつん!ときます。それなら、最初から4割6分引けばいいじゃないかと思われる方もいるかもしれません。でも、材料費や人件費を削って安くするのは、3割が限界なんです。そこで、質を高くすることで、4割6分引きを可能にし、がつん!力を生み出したんですね。

●ところで、本書では、沼尻エリカ、朝青龍、のだめカンタービレ、くいだおれ太郎など、幅広い例を出されていますよね。楽しみながら、読むことができました。

鈴木:ありがとうございます。実は、趣味がクイズを解くことなんですよ。以前、アタック25に出演し、優勝したこともあります。雑学は豊富なので、連載しているコラムのネタには困らないですね。

●最後に、読者にメッセージをお願いします。

鈴木:「出る杭は打たれない」という時代は終わりました。これからはいかに「出すぎた杭」になるかにエネルギーを注ぐ時代なんです。ぜひこの本を読んだ方は、自分自身が、商品が、そして会社が「出すぎた杭」になるためには、どうすればいいのか、真剣かつ楽しみながら考えてもらいたいですね。

本日はありがとうございました
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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