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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2007/09/05
だから、部下がついてこない! ‐ 嶋津良智さん

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今回は『だから、部下がついてこない!(日本実業出版社)』の著者、嶋津良智氏にお話を伺います。本書では、最高の上司になるにはどうすればいいかを紹介。部下の育成に悩む上司をサポートする1冊です。
嶋津良智
嶋津良智(しまず・よしのり) さん

1965年東京生まれ。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。その後28歳で独立、代表取締役社長に就任。翌年、縁あって知り合った2人の経営者と情報通信機器販売の新会社を設立。 その3年後、出資会社3社を吸収合併、6年目に株式上場を果たす。そして2005年、株式会社リーダーズアカデミーを設立し、"ペイフォワードビジネスカレッジ"を主宰。

●現在のお仕事をお教え下さい。

嶋津:2回の上場から得た経験を活かして、リーダー育成のための講演・セミナーを行なっています。

●本書を書かれたきっかけをお教え下さい。

嶋津:次世代を担う子どもたちが、もっとも影響を受ける人物は親です。
たとえば、休日、疲れてぐったりしている親を見ている子どもは、早く大人になりたいなんて思いません。
反対に、「仕事って、楽しいんだよ」「大人になると、楽しいことが待っているんだよ」ということを示せる親のそばにいる子どもは、将来に希望を持ち、早く大人になりたいと思います。
しかし、残念なことに子どもたちが憧れるような大人って少ないんですよね。
では、どのようにしたら、子どものお手本となるような魅力的な大人を増やすことができるのでしょうか。私はそれを考えました。
大人がもっとも影響を受ける場所は職場。そして、職場でもっとも影響を受ける人物が、上司です。
上司からよい学び、よい言葉、よい思い込みを吸収することができたら、魅力的なビジネスパーソンに変わることができると思うんです。ビジネスパーソンも、家では、子どもの親です。そんな親の姿を見れば、子どもたちも良い方向に変わっていくのではないでしょうか。
人を、企業を、そして、社会を良くするのは、職場に優秀な上司がいるかいないかで決まります。それが、上司向けの本を書こうとしたきっかけです。

●本書も大変、好評ですね。

嶋津:おかげさまで、発売から9ヶ月経ったいまも、増版がかかっています。
実は、この本に書かれていることは、ごく当たり前のことなんです。でも、その当たり前のことに気づけていない人が多いんじゃないかなと思っているんです。人って、特別なことに関心を持ちますが、当たり前のことには目を向けないものですから。
たとえば、毎日、会社で女子社員にお茶を出してもらっていたとします。でも、日々のことなので、そこに何か感じる人は少ないはずです。でも、たまに昆布茶が出てくると、いつもとは違うので「おっ!」と関心を持ちます。でも、日々出してくれるお茶に関心を示して、それに感謝するという気持ちを持つことの方が大切なんです。それができるようになると、視野が広がります。当たり前のことに、いかに関心を寄せられるか。その点に迫ったことが、読者に受けている理由のひとつではないでしょうか。

●本書を読まれて、部下を見る目が変わったという上司も多いのではないでしょうか?

嶋津:「いままで部下は、仕事の成果を上げるための道具だと思っていました。でも、この本を読んで、部下は社会から預かった大切な人材ということに気づきました」と言われることが多いですね。
そう、上司が部下を育成するのは、社会貢献のひとつなんです。たとえば、ひとりの優れた上司が5人の部下を持ち、2人の優秀の部下を育てることができたとします。この2人の部下が今度は上司になって、それぞれ5人の部下を持ち、2人の優秀の部下を育て、さらにその部下が上司になって・・・・・・というように、ねずみ算式に優秀な人材が増えていきます。優秀な人材は、企業を、そして、社会を活性化させます。
私にはお世話になった上司が2人います。彼らが育てた部下たちは、いま、私も含めて、会社経営または企業の役員といったポジションで仕事をしています。私たちは優秀な上司との出会いで人生が変わりました。

(続く)

●いま、若手社員を教育するために、さまざまなセミナーが行われていますが、同じ教育に携わる立場として、どのように思われますか?

嶋津:この世の中のほとんどのセミナーは不要であると思っています。
たとえば、一般社員や若手社員に教育を施したとします。しかし、彼らがどんなに良いことを学んだとしても、それを現場の上司が実践していなければ、結局、彼らはセミナーを受ける前の姿に戻ってしまうんです。
たとえば、あるセミナーでは、若手社員は大きな声で挨拶するように教えられます。しかし、セミナーが終わって、会社に戻ってみると、先輩たちは皆、例えば、「ちぃーす」などといって軽く挨拶しているわけですよ。これでは、せっかくセミナーを受けても、若手社員たちは先輩たちに感化されてしまいます。若手社員たちが「ちぃーす」と挨拶するようになるのは時間の問題です。実は若手社員よりも、上司を育てることにお金をかけることの方が大切なんです。
3年で3割を辞めさせないためには、若手社員を教育することではなく、まずは上司を鍛えることなんです。そして、上司が部下に仕事の魅力を伝えることなんですね。

●私のテーマはサラリーマンの自立なんです。いま、上司と言われる人たちは会社に依存して、自立していないように思えます。それよりも、若い人たちの方が就職難でもまれてきたせいか、独立志向が強く、スキルも目的も持っていると思うんですよ。

嶋津:その通りです。部下を教えようとする気持ちもあまりありません。いま、上司と言われる人たちは30代後半から50代。つまり、バブルと高度成長期の世代の人間なわけです。彼らが部下だった頃は、作れば売れるという時代ですから、上司からろくな教育を受けていないわけですよ。だから、いざ上司となったとき、部下にまともに教えることができないんです。下手したら、就職氷河期で入社してきた部下の方が、自分よりも優秀なんじゃないかと思っているところもあるんじゃないでしょうか。
また、一生懸命、部下を教えたとしても、昔と違っていつ辞めてしまうか分かりません。部下を育成したって、無駄だと考えているのかもしれませんね。関係も希薄です。

●確かに。私もサラリーマン時代、上司に飲みに連れて行かれたことがあります。当時は嫌でしたが、振り返ってみれば、それが勉強になった面もあります。でも、いまはそんな上司と部下の付き合いも少なくなっているような気がします。

嶋津:そうですね。社内コミュニケーションも不十分ですし。隣りの席なのに、わざわざメールで会話しているという部署も珍しくはありません。
仕事で付き合いのあるグローバル企業の話なんですが、最近になって、社内運動会を辞めたんですよ。理由を聞くと、社員から「休日にわざわざ出向くのは、面倒だ」という声が多く寄せられたからだと言うんです。でも、どんな時代にも、面倒だという社員はいたんです。会社が社員の声に敏感になり過ぎているんじゃないかと私は思います。
会社としては一体感を持つためにやりたいと言います。だったら、運動会に参加したい社員だけでやればいいんです。おもしろければ、噂になって、参加しなかった社員も次の年には参加するようになりますよ。

●仕事でベンチャー企業との付き合いがあるんですが、実は彼らの方が「花見だ、スキーだ」と、昔ながらのことをやっているんですよね。嫌だと思っていても、上司の別の一面も見れますしね。仕事の一環だと思ってやれば、意外と面白いと思うんですよね。

嶋津:確かに。日本が好景気で、アメリカの成長が伸び悩んでいたときのこと。アメリカが日本の景気の秘密を調べてみたところ、社員同士の濃密な関係が仕事にプラスに働いていることが分かったんです。にもかかわらず、いま、上司と部下の関係が弱くなってきているんです。これは良くないことだという気がします。

●最後に一言、お願いします。

嶋津:私のテーマは上司です。上司は経営者側も含みます。経営者の影響力が強いのは、いい会社ではありません。「自分がいないと、会社の仕事が滞る」と自慢げに語る経営者がいますが、私は「そんな部下を作った自分を恥じた方が良い」と言いたいですね。
上司の究極の仕事は、部下に仕事を任せ、自分の仕事をなくすことです。部下に仕事を任せるのは心配だからと言って、何でも自分でやってしまうのは、部下を育てるという仕事を怠っていることになります。人を育てる側である上司の皆さんは、社会に及ぼす影響の大きさに気づいてほしいですね。

本日はありがとうございました。
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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