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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2006/10/05
なぜ、社長のベンツは4ドアなのか? ‐ 小堺桂悦郎さん

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今回は『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?(フォレスト出版)』の著者、小堺桂悦郎氏にお話を伺います。本書では、表題を始め、「なぜ、年商の4倍の借金のある旅館が潰れないのか?」「なぜ、ラブホテル経営者は税金を払わないのか?」といった疑問を解き明かしながら、「会計のカラクリ」について、教えてくれます。
小堺桂悦郎
小堺桂悦郎(こざかい・けいえつろう) さん

http://www.kozakai-keietsurou.com/
金融機関の融資係として過ごし、その後、税理士事務所に転職。顧問先の銀行対策を含めた資金繰り重視のコンサルティング業務に専任する。2001年末に独立し、2002年4月(有)小堺コンサルティング事務所を設立し、現在にいたる。『借金バンザイ!』『粉飾バンザイ!』『税金バンザイ!』のバンザイシリーズは、いずれも10万部を超えるベストセラーに。

●現在の小堺さんのお仕事を教えてください。

小堺: 銀行マン、税理士事務所のコンサルタントを経て、現在、中小企業向けのコンサルティング事務所の代表を務めています。個別の顧問コンサルティングのほかに、電話やファックス、メールなど、全国の中小企業の社長から、資金繰りに関する相談を受けています。

●小堺さんがやっておられるようなコンサルティング事務所は、他にないのではないですか。

小堺:そうですね。だって、ビジネスの基本は、お金を持っている人を対象にすることじゃないですか。私のように、お金に困っている人を相手にしようと思うところはなかなかないでしょうね(笑)。

●本書をお書きになった経緯を教えて下さい。

小堺:今、会計をテーマにした書籍がブームです。でも、ほとんどが上場企業向けに書かれたものだと思うんです。中小企業の社長にとっては、上場企業の会計の話なんて、まるでリアリティがないんですよ。中小企業には、中小企業の会計のカラクリがあるんです。そこで、「中小企業に焦点を当てた会計の本を書いてみたいな」と思ったわけです。

●表題の「ベンツ」から会計のカラクリが分かるのでしょうか。

小堺:はい、そうです。本書は、ベンツが「どうの、こうの」というような話ではないんです。「どうして会社のお金で、ベンツを買おうとするのか」、「どうしてベンツに乗っている社長が多いのか」、「どうして社長のベンツは、中古の4ドアなのか」という疑問を解き明かしながら、中小企業の会計のカラクリが分かるようになっているんです。本書を読めば、「経費」、「在庫」、「決算書」、「税金」、「粉飾」、「不動産」など、中小企業の会計の実態が掴めると思います。

●本書は、銀行、税理士事務所に勤務されていた当時の経験を元にして、お書きになられたのでしょうか。

小堺:はい、そうです。本書は、銀行と税理事務所で働いているときに抱いた「会社は黒字なのに、どうして現金がないのか」、「逆に会社は赤字なのに、どうして社長は現金を持っているのか」、「ベンツは社用車として経費で落ちるのに、2ドアのスポーツタイプは駄目なのか」、「あからさまな税金逃れをしても大丈夫なのか」という疑問をベースにして、書いています。本書を読めば、銀行マンも税理士も教えてくれない、または知っていても話すことができない、会計のカラクリが分かるようになっています。

●どうして、そのような疑問を持つようになられたのでしょうか。

小堺:実は、私自身、この仕事をするまでは、中小企業の会計のことがよく分からずにいました。というのも、銀行にも、税理士事務所にも、それぞれ仕事に限界があるからなんです。例えば、銀行は決算の前に生のお金が大切ですが、税理士事務所は決算書が税務調査に通れば、それで問題はないんです。そのため、どちらの仕事をしているときも、常に歯がゆさというか、疑問がありました。

●ベストセラー「バンザイシリーズ」に続いて、大変な売れ行きですね。その理由はどこにあるとお考えですか。

小堺:ありがとうございます。誰でも楽しんで読んでもらえるように、「税金を払いたがる借金社長」、「生命保険が好きな社長」、「失敗しても投資し続ける社長」など、興味を引くようなエピソードを出すようにしました。また、テンポよい文章で、一気に読めるようにもしています。

●会計本というと、退屈な話で構成されていることが多いのですが、本書はさらっと読むことができました。

小堺:ありがとうございます。本書は会計の入門書です。極力、難しい数字や用語は省くようにしました。だから、会計のことを何も知らない方でも、さらりと読めると思います。もし分かりにくい箇所があれば、読み飛ばしてもらってもかまいません。

●誰でも読むことができるように工夫されているんですね。

小堺:はい。会計士を目指している方には物足りなく感じるでしょうが、自分の会社の会計だけ理解できれば良いという方には、これ1冊で十分なはずです。

●中小企業の社長は、仕事でどのように本書を活用することができますか。

小堺:例えば、中小企業の社長は税金は払いたくないわけです。でも、銀行からは資金を借りたい。個人経営であれば、赤字だろうが、黒字だろうが、どちらでも関係ないわけです。本書を読めば、どうすれば会社にとって、ベストなのかが、見極められるようになります。

●中小起業の社長以外も役立ちそうですね。

小堺:ビジネスマンの場合、給料の交渉が有利に運びます。説得力のあるセールスができますし、そのタイミングが掴めます。また、真面目なビジネスマンであればあるほど、社長が会社のお金でベンツを買ったりすると、目くじらを立てて、注意したくなります。でも、社長がなぜベンツを購入したか、その理由が分かるので、イライラしなくてすみます(笑)。
また、学生であれば、就職活動に有利に働くと思いますよ。
(続く)

●本書のポイントを教えて下さい。

小堺:ポイントは3つ挙げられます。まず、設備投資と資金調達の仕方が分かります。会社にとって、一番重要なのは資金調達です。ところが、購入したベンツをいっぺんに経費で落とすことはできません。それは、1年以上で、10万円以上のモノは全て耐用年数に合わせて、減価償却することに決まっているからです。
例えば、耐用年数6年のベンツを買ったとします。1200万円の新車であれば、毎年200万円ずつしか経費で落とすことができません。

●そうなると、資金繰りが苦しくなりますね。

小堺:でも、どうしても、どーうしてもベンツが欲しいとします(笑)。じゃ、どうすればいいか。減価償却の対象になるようなベンツは、耐用年数に合わせて、借金して購入すればいいんです。支払い利息は経費として落とせますから。
中古であれば、耐用年数が短くなった上に、減価償却の方法はそのまま。経費で落とす場合、中古の方が断然おトクなんです。新車よりも中古のベンツが多いのは、そのためです。

●私自身、起業しようという方のコンサルティングを行なっているんですが、皆さん、減価償却については、あまり理解されていないですよね。

小堺: 減価償却は抽象的なので、分かりにくいですからね。ベンツは一例であって、全ての設備投資にこれが当てはまります。ベンツに限らず、パソコン、事務所、机やイスなど、全ての事業用品に耐用年数があります。パソコンが4年で、鉄筋コンクリート事務所が50年、金属製の机やイスが15年です。これらの年数は税務署によって決められているんですよ。でも、パソコンの耐用年数が4年というのは、どういうことなんでしょうか。いまどき4年も持つパソコンなんてありませんよ(笑)。税務署は実際、使える年数よりも長めに設定しているんですよ。

●確かにそうですね(笑)。

小堺:経理上、簡単なのはベンツをリースするやり方です。リース代はもちろん、経費で落とすことができます。減価償却なんて、関係ありません。実は、私の車もリースなんですよ。

●中小企業の社長は資金調達を見据えた上で、設備投資しなければならないんですね。

小堺:2つ目は税金と会計のルールは、まったく違うということが理解できます。中小企業の決算書がよく分からないと言われるのはなぜだと思いますか。税金のルールでやっているからなんですよ。3つ目は不動産や株など、投資することへのリスクについてです。中小企業の社長はやたらと投資したがるんですよ。そして、失敗してしまう。損をすることで、節税しているんでしょうか(苦笑)。
中小企業の社長は本業だけでも、相当なリスクを背負っているんです。これ以上、リスクを増やす必要はないと思います。
私の周りにも、「ベンツなんか絶対に買わない」という社長がいます。でも、不動産やら株やらには投資して、損をしているんですよね。どうしてでしょうね。

●まさに中小企業の会計のカラクリが分かりますね。

小堺:税理士さんが顧問先の中小企業の社長に本書を勧めているらしいんですよ。先日も「銀行から融資を断られまして、税理士の○○さんに相談したら、小堺さんのところに行きなさいと言われたんです」という電話を受け取りました。でも、私は税理士の○○さんなんて、まったく知らないんですけどね(笑)。

●「バンザイシリーズ」も、税理士さんが教えてくれない裏ワザについて、書かれたものでしたね。

小堺:『粉飾バンザイ!』の読者の方から「税理士さんに、粉飾決算したいって相談したんですけど、まともに答えてもらえませんでした」といった相談を受けたことがあります。落ち着いて考えて下さい。そんなこと、税理士さんが勧めるわけがないじゃないですか(笑)。

●いままで小堺さんのようにアドバイスされる方はいなかったのではないでしょうか。

小堺: 私はノンタイトルですから、会計の裏ワザなど、自由にモノを言うことができるんですよ(笑)。でも、税理士さんは国から資格をもらっているから、どうしても制限があるじゃないですか。知っていても、話せないことがあるんです。

●社長になってから、分かることってありますよね。私自身、会社員のときは、社長はうまいことしているなと思ったものです。でも、本当は違うんですよね。

小堺:借金を抱えながら、会社を経営していくということは、常に凶器と背中合わせということなんです。中小企業の社長は、ストレスがたまるんですよ。ベンツぐらい買ったっていいじゃないですか。ベンツを買えば、モチベーションが上がりますよ。

●最後に読者の方にメッセージをお願いします。

小堺:娯楽小説のように読んで下さい。缶ビール片手に、出張で使う新幹線の中で、さっと読み切ってしまって下さい。この本から、会計に興味を持ってもらえれば、こんなうれしいことはありませんね。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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