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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2006/11/01
社長のプロになる条件とは ‐ 竹田陽一さん

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今回は『プロ☆社長(中経出版)』の著者、竹田陽一氏にお話を伺います。本書では、相談企業1000社、倒産企業取材1600社のデータを元に、従業員100人以下の会社では、業績の98%が社長ひとりの戦略実力で決まるとし、社長の役目とやり方を教えてくれます。
竹田陽一
竹田陽一(たけだ・よういち) さん

ランチェスター経営(株)代表取締役。1938年生まれ。久留米市出身。福岡大学卒業。34歳でランチェスター法則と出会い、経営に苦しむ中小企業経営者のために人生を捧げる決心をして45歳で独立。テープ・ビデオ制作にエネルギーを注ぐ。相談企業1000社、倒産企業取材1600社。主な著書に『1枚のはがきで売上を伸ばす法(中経出版)』『「ランチェスター経営」がわかる本(フォレスト出版)』など。

●現在の竹田さんのお仕事を教えてください。

竹田: ランチェスター法則と出会い、その伝道師として、従業員100人以下の会社の専門コ
ンサルタントを行なっています。また、中小企業の社長に向けて、学習用のテープ・ビデ
オを制作し、販売しています。

●本書をお書きになった経緯を教えて下さい。

竹田:書店に並んでいるビジネス本の大半は、大企業の社長向けです。大企業の社長の仕事は、中小企業の社長の仕事とはまったく違うんです。にも関わらず、中小企業の社長は、大企業の社長向けのビジネス本を読んで、その真似をしているんですね。これでは間違った経営を行なってしまうことになります。ビジネス本には、従業員何人の会社向けなのか、書いておかないと、人をまどわすことになると思います。

-そこで、私はランチェスター経営を元に、従業員100人以下の社長に向けた本を執筆することにしました。本書は、相談企業1000社、倒産企業取材1600社のデータを元にしています。

●本書の反響はどうですか。

竹田:ファックスにて、1日に6、7通ほど、感想が送られてきますね。

●すごいですね。皆さん、どのような感想が多いのでしょううか。

竹田:皆さん、オペレーションズリサーチ、ランチェスターの法則を使って、重点をおく仕事のウエイト付を計算する方法を知らなかったと言います。そして、会社の業績の98%は社長ひとりの実力で決まることに驚いていますね。

●会社の業績の98%が社長ひとりの実力で決まるとは、社長にとっては耳が痛い話ですね。

竹田:凡庸な2代目社長には、気に入らない考え方だと思いますよ。彼らは「オーナーは威張っておくだけでいい。従業員が戦略を勉強して、利益を出すべきだ」と思い込んでいますからね。そうそう、私が最初に入社した会社の社長も二代目で、やたら威張ってばっかりいましたね(苦笑)。こういう会社は業績が悪くなります。

もちろん、2代目全員がそうというわけではありません。向上心がある2代目もいます。社長が向上心が高いと、従業員の向上心も高くなります。

●理論と実際の現場がずれていることは多いでしょうね。

竹田:そうですね。例えば、飛び込みで商品を売るとします。受付で、社長に取り次いでもらえないと商売ができないわけです。まずは初対面の人に上手に近づいて、警戒心をもたれないようにしなければなりません。これが第1段階です。

第2段階は人間関係を構築することです。ニーズのない人に物を売ることはできません。免許を持っていない人が車を買うと思いますか。買いませんよね。商品を説明する前に、顧客のニーズを聞く必要があります。しかし、人間関係ができていないと、人間は本当の気持ちを話しません。

第3段階には商品説明がきます。商品がどういうものか、分からないと、契約することができないからです。

そして、最後に契約の成立がきます。契約のウエイトは、非常に低いんです。
しかし、売りにきた人は契約が目的だから、ここが重要に思えるんです。アプローチなんかどうでもいい。でも、お客から見たら、アプローチの方が大切なわけです。ずれているんですね。

アプローチもそこそこに、「この商品、どうですか、どうですか」では売れません。

●本書の活用法をお教え下さい。

竹田: 本書では、社長が戦略実力を身につけるために何を勉強すればいいのか、そのテーマを知らしめたに過ぎないんです。
本書では、経営の8大要素として、(1)「商品対策」、(2)「営業地域対策」、(3)「業界・客層対策」、(4)「営業対策」、(5)「顧客維持の対策」、(6)「組織対策」、(7)「賃金と経費の配分対策」、(8)「仕事時間対策」を挙げて、それぞれにウエイト付をしています。
たとえば、(1)の要素「商品対策」だけでも、説明しようとしたら、2冊もの本になります。中小企業の社長は、自社に何が足りないのかを探して、そこを重点的に勉強して下さい。そすうれば、早く成果を出すことができます。

●では、どのようにして、自社に足りないところを探していけばいいでしょうか。

竹田: 人間、どうしても先入観があります。異業種の会社を手本に考えてみてはどうでしょうか。商品は違っても、やっていることはそっくりという会社は多数あります。
そこから、足りないところの見当をつけて、勉強していくといいですね。
アメリカのモチベーションのテープにいきなり200万円もかける人がいますが、最初から大金をかけてはダメです。当たれば、天国、外れれば、地獄を見ますから。少しずつ、小銭をかけながら、勉強していくことです。
見当がつなかい場合は、(1)「商品対策」、(2)「営業地域対策」、(3)「業界・客層対策」、(4)「営業対策」、(5)「顧客弄の対策」といったウエイトの高いところから勉強するといいでしょうね。

(続く)

●社長が勉強する際に、気をつけるべき点をお教え下さい。

竹田:必ず思索するようにして下さい。残念ながら、ビジネス本やコンサルタントの話をうのみにしてしまっている社長は、非常に多いんです。

例えば、キャッシュフローが大事だという本が売れています。そんなにキャッシュフローが大切というのであれば、キャッシュフロー100%の会社が一番いいということになります。しかし、キャッシュフロー100%の会社は、利益を生む生産手段が0%ということです。製造業、卸売業、小売業で、在庫がなければ、どうでしょうか。当然、赤字になってしまいます。しまいには倒産してしまうでしょう。

逆に、キャッシュフローが0であれば、どうでしょうか。従業員への給料の支払いもできませんよね。こちらも倒産してしまいます。だから、どこがいいのかという問いに対する答えは、中間ということになります。

では、どういう方法で、中間点を見つければいいのか。それを説明しないで、キャッシュフローが大事だ、大事だといっても仕方ないんです。

ビジネス本なり、コンサルタントの話なり、必ず、自分で思索してみないといけません。
もう1つ、思索してほしいのが、成果主義の賃金制度です。ビジネス本などで、やたら取り上げられていますが、こちらも疑ってみることが大切です。

●成果主義もブームになりましたが、実際はどうなのでしょうか。

竹田:成果主義は歩合制の賃金制度が複雑化しただけのものです。実際、歩合制の会社の業績は落ちています。倒産する会社も多い。

社長は、成果主義を導入することによって、社員のモチベーションアップを期待しているのかもしれません。しかし、例えば、売るべき商品が適切でないにも関わらず、そこを見直さずに、従業員の働きだけを期待しても意味がないのです。

また、成果主義を導入すると、たいていの人間が自分の実力を高く見積もっていることが分かります。例えば、自分の社長が「実力主義の賃金制度を採用しよう」と提案すると、たいていの従業員は賛成するんです。でも、いざ実行すると、全員反対してしまう。

なぜだと思いますか。皆、自分の実力が分かっていないんですよ。自分の都合のいいように考えて、皆、自分の実力を10?20倍高く考えているんです。高校を卒業してから、実力をテストされることがないので、そうなってしまうんですね。年をとればとるほど、そうなります。

なので、成果主義が採用されるとなると、いまより給料が増えると思ってしまうんです。でも、実際は違います。社長にしてもそうです。自分の実力テストがないから、時間が経つにつれて、実力があるように錯覚してしまうんですよ。そして、業績が悪かったら、社員の働きが悪いと思うわけです。人間は皆、自己中心的ですからね。

唯一、社長の実力を教えてくれるのは奥さんです。従業員がマトモに言ったら、クビになるようにことでも、ばしっと言ってくれます。客観的に見ているから、納得できることを言ってくれますよ。いい社長にはいい奥さんがついています。これは間違いありません。いい社長になるには、いい嫁さんを見つけることも大切ですね。

●サラリーマンも、勉強は大事ですね。勉強にはどのぐらい投資すればいいのでしょうか。

竹田: 年収の3?5%が目安です。例えば、手取り1000万円の場合、30?50万円を勉強費用にあてるといいですね。10年続けたら、300?500万円になります。これぐらい勉強したら、いいものと出会うチャンスがあるでしょう。ただ、ここまでお金を使っている人は少ないかもしれませんね。

そうそう、なかには、政治家のパーティーやタレントの勉強会など、全く本業と関係ないものに金を費やす人がいます。でも、これは間違った使い方です。

また、一から勉強しようとコンサルタントと契約する社長もいますが、これもあまりいいとは言えません。それは効果を出さないコンサルタントが増えているからです。原因として、コンサルタントが「従業員が100人以下の会社では、業績の98%が社長ひとりの実力で決まること、社長の役目とやり方を理解していないこと」、「仕事のウエイト付が間違っていること」などが、挙げられます。

まずはCDやDVDを使った勉強をお勧めします。コンサルタントを雇うよりも、安くつき、また、何度も繰り替えし勉強することが可能だからです。

そして、社長自身、ある程度まで勉強した後で、コンサルタントに相談するようにして下さい。すると、コンサルタントの実力が掴めるし、また、何から相談するばいいのか、分かります。結果、短期間でよりよい効果を挙げることができるのです。

●最後に読者の方にメッセージをお願いします。

竹田:経営には形がありません。常に自社に足りないところを探し求める社長はすばらしいと思います。

-ありがとうございました。
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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