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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2007/01/16
起業家の本質 ‐ 西川潔さん

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今回は『起業は楽しい』『起業家の本質(英治出版)』の解説者、西川潔氏にお話を伺います。本書では、本格的起業家が求められる今、起業にとって、本当に必要なものとは何なのかについて、教えてくれます。すべての起業家および起業家志望者に捧げる必携の1冊です。
西川潔
西川潔(にしかわ・きよし) さん

株式会社ネットエイジグループ創業者/代表取締役社長。KDD(現KDDI)勤務を経て、
アーサー・D・リトルの米国本社勤務時に起業を志す。帰国後、世界最大のインターネット
企業、アメリカ・オンラインの日本法人の創立に参加。1998年2月、ネットビジネスインキュ
ベーターという、日本初の業態をもってネットエイジを創業。2004年、純粋持ち株会社
「ネットエイジグループ」に改組し、100%子会社2社と、その傘下の約20社のポート
フォリオを持つグループを率い、代表取締役社長を務める。

●現在の西川さんのお仕事を教えてください。

西川:インターネット関連事業、ファイナンス・インキュベーション事業を手がけるネッ
トエイジグループを率いています。

●本書の感想をお教えください。

西川:本書の著者は、実際に事業を急成長させた経験を持っています。そのため、非常        
に説得力がありますね。私自身も、頷くことが多かったです。               

●今の起業ブームを見て、どう思われますか。

西川:起業ブームはいまに始まったことではないんです。
でも、1999年から2000年に起こったIPOビッグバンによって、起業家を取り巻く環     
境は大きく変わりました。もうIPOビッグバン以前に後戻りすることはできないで
しょう。
具体的に言うと、これまでは会社を設立して、存続できるところにまで持っていける
かどうかが、勝負でした。でも、いまは最初から株式公開を達成することを目       
標にしている起業家が非常に多いんです。
実際、IPOのハードルが低くなってから、数多くの企業が、創業からわずか数年で上
場を果たしています。

●起業の段階から株式公開を考えるというのは、少し前では考えられなかったことです。
かつては証券会社が、同族会社を説得して、無理やり公開させていたことがありましたね。

西川:日本に限らず世界のどんな経済圏でも産業の新陳代謝、具体的に言うと、伸び
る企業とそうでない企業の交代が起こります。産業の新陳代謝を促進させるのが、株
式市場です。
株式市場が整備された国とそうでない国とどちらが良いかと言えば、それは整備され
た国です。
新興株式市場の創設を活用して、「自分のビジネスを拡大させよう」、「目標を決め
て、ゼロから走ってみよう」というのは、非常に良いことだと思います。起業できる
環境が整っているのだから、挑戦しない手はないと思うんです。
株式公開は、次元の違う世界に入ることができる登竜門です。やる気のある、そして、
力のある人が狙っているわけです。私は応援したいですね。
にも関わらず、起業のネガティブな面ばかり捉えて、拝金主義、成金主義と罵る風潮
は依然としてあります。もちろん、一部には、そう揶揄されても仕方がない起業家も
いますが・。
もう一つ残念なことが、いまは猫も杓子も起業、起業で、ナンチャッテ起業家が非常
に多いということです。例えば、成功者のライフスタイルにばかり固執する起業家が
目立ちます。
起業家ブームといっても、本格的な起業家は何人いるでしょうか。私はまだまだ本格
的な起業家は足りないと思います。
私は、大量の雇用や取引を生み出し、世界に進出するメガベンチャー志向の起業家が
現われることを願っています。

●私は、サラリーマンを対象に、「会社を辞めず、週末を使って、自分がやりたい分野で起業をしよう」と勧めています。週末起業家については、どう思われますか。

西川:メガベンチャー志向の起業家を応援しているからといって、週末起業家を否定
しているわけではありません。幸せの指標は人それぞれですから。
それに、週末起業家が増えれば、それだけ起業家の裾野が広がります。裾野が広がれ
ば、山も高くなっていきます。つまり、本格的な起業家が現われやすい環境が生まれ
ます。
また、会社勤めだとパーツ、パーツでビジネスをしていますが、週末起業家はひとり
で完結してビジネスを行なうことができます。
ビジネスは大掛かりなものから単純なものまで、基本は同じなんです。基本とは、お
客様を見つけて、お客様の期待以上のサービスを出して、お金をもらうことです。週
末起業家としての経験は、メガベンチャー志向の起業家にとっても、貴重なものにな
ると思います。
週末起業をきっかけに、もしかしたら、メガベンチャー志向の起業家が生まれるかも
しれませんね。

●実際、週末起業だけでは満足できなくなって、会社を飛び出し、メガベンチャーを目指している起業家もいます。

西川:すばらしいことですね。ただ現在、ほとんどの週末起業家が情報を販売し
ています。でも、これでは発展が望めません。この点が残念ですね。

●週末起業からメガベンチャーを育てることができるかどうかというのが、今後の課題でもあります。

西川:そうですね。実は、私も週末起業家をやっていたんですよ。

●えっ、そうなんですか。どのような週末起業をされていたんですか。

西川:ウィンドウズ95が出たばかりの頃、パソコンを買ったものの使い方が分からな
いといった人たちが大勢いました。そこで、パソコンに詳しい学生をパソコン家庭教
師として、派遣する事業を始めたんです。
一時は登録学生が400人いましたね。彼らの中から、年商4億円の本格的なベンチャー
を始めた起業家も生まれました。

●本書には日本人は起業家に向いていないという記述がありますが、その点については、どう思われますか。

西川:それはとんでもない誤解です。この点だけは意義を唱えたいですね。確かに、
アメリカ人はハングリー精神が旺盛です。その一方、日本人は、ハングリー精神が欠
けています。でも、豊かだからこそ、ぬるま湯状態が嫌だと思う人も多いんです。そ
う、ぬるま湯状態から脱却したいというエネルギーが、起業家を生み出していると思
うんですよ。起業家になれば、サラリーマンとまったく違うドラマチックな人生を送
ることができると思います。

●時間感覚も起業家とサラリーマンとでは、まるで違いますよね。

西川:そうですね。起業家は自分の人生は全て自分の時間に使うことができます。例
えば、25歳から65歳まで、40年間、働いたとします。40年というと相当な時間です。
その間、時間決定が、自分自身の手にあるか、他人の手にあるかで、大きく差が出て
きます。起業家は、サラリーマンの3倍の時間を生きることができると思いますよ。
でも、仕事、仕事、仕事では煮詰まってしまいます。遊ぶことも覚えないといけませ
ん(笑)。

●優秀な起業家の方は、会社にいる時間よりも外にいる時間が多いですよね。どのように日々を過ごすべきなのでしょうか。

西川: 業績は、社長の滞在時間と比例しません。
私はある程度、会社が大きくなったら、社長は、デイリーオペレーションに関わるべ
きではないと思っています。社長の仕事は、3年先の構想を練ることなんです。
また、社長は常にスケジュールに余白を持たないといけないと思うんですよ。詰め込み
すぎていては、いい話がきたときに、すぐに飛びつくことができません。
何十件ものアポイントをこなしているだけで、1日が終わってしまうということを自
慢する社長は多いですね。でも、そんな細切れな時間の使い方では、何も分からない
うちに終わってしまうと思います。

●サラリーマンの日常とはだいぶ違いますね。

西川:社長は結果が全てなんです。勤務時間は関係ありません。でも、日本にはサラ
リーマンが取締役になって、そのまま社長になるという文化があるので、そこのとこ
ろが分かっていない人が非常に多いんですよね。
取締役になったら、そもそも雇用契約が違いますからね。そういう基礎の基礎が分かっ
ていないですよね。

●日本における起業の問題点を教えてもらえますか。

西川:起業のハードルは創業資金だと思います。ベンチャーキャピタルは創業にはめっ
たにお金を出さないですね。それはリスキーすぎるからです。
ベンチャーキャピタルによる投資を受けることができるのは、すでに事業をスタート
した人です。
創業資金に投資しやすくするためには、損をした分、税金を安くするという制度を設
けてほしいですね。
実は、創業スタートアップ専門の投資組織をつくるという提案したことがありました。
集めることができる額は、起業家の器によって違います。たとえば、ある起業家
が1000万円集めることができたら、国が1000万円出して、倍にしてあげるんです。融
資ではなくて、投資です。そして、成功したら、国もキャピタルゲインをもらえる仕
組みにするんです。
例えば、1万の企業に、1000万ずつ投資したとしたら、1000億円かかります。1000億
円なんて、一つ橋を造るのをやめれば、簡単に捻出できます(笑)。
1万の企業のうち、30の企業が事業に成功したとします。1000分の3の確率なので、あ
り得ないことではありません。キャピタルゲインはだいたい投資額の300倍です。と
なると、1000万円×300倍×30企業で、国にはキャピタルゲインとして900億円が入っ
てくるんですよ。ほぼ無傷です。
投資によって、企業が育てば、税収も増えるし、雇用も増えるし、いいことづくめで
すよね。ただし、2年以内に最低従業員を5人雇うなど、条件は決めた方が良いですね。
そうでないと、雇用を促すことができませんから。

●西川さんのアイデアが実現したら、起業家が増えそうですね。

西川:ありがとうございます。本書の「起業家革命は米国経済を牽引する」という主
張は、日本にも当てはまります。日本経済を牽引する起業家は、社会の宝です。社会
はメガベンチャー志向の起業家を待ち望んでいます。本格的な起業家が増えて欲しい
ですね。
実は、ライブドアショック以降も、起業家を志す人は減ってはいないんです。起業家
および起業家志望者は、ぜひ本書を読んで欲しいですね。そして、大量雇用と取引を
生み出し、世界市場にインパクトを及ぼす、本格的な起業家を目指して欲しいと思い
ます。

本日はありがとうございました。
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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