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2000/01/17
未来社会への変革

未来社会への変革

利己的人間に満たされた都市は崩壊する。利他的に生きなければ都市に未来はない。
組織のメンバーは、とかく組織が自分に何かをしてくれることを期待しがちである。
景気が悪くなれば、政府の景気対策を非難する経営者がそうだ。教育の問題をすべて学校のせいにする親もしかりだ。


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=今週の選書=
    ■未来社会への変革/ピータードラッガー■
              フォレスト出版
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<コメント>

利己的人間に満たされた都市は崩壊する。利他的に生きなければ都市に未来はない。

組織のメンバーは、とかく組織が自分に何かをしてくれることを期待しがちである。
景気が悪くなれば、政府の景気対策を非難する経営者がそうだ。教育の問題をすべ
て学校のせいにする親もしかりだ。枚挙にいとまがない。

まずは、自分が人のために何ができるかを各人が考え、それをうまく実行するために
集まる。こうしてできた共同体が、企業にも、公的機関にも、政府にも、都市のあら
ゆる組織に自然発生することだけが、都市を救うのだ。
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<本 文>

【1】共同体をつくる

近年、世界中のあらゆる国の主要都市が、混沌たるジャングルのように
になった。今後、あらゆる国でこれらの都市を文明化することが最高の優
先課題となる。

そのためには、各都市に新たな共同体が築かれなければならない。もとも
と、都市とは強制的共同体の抑圧から逃れるために構築されたものだ。
しかし、その後都市独自の共同体が築かれなかったために、現在の破滅
的状況を招いてしまったのだ。

我々人類は、本来的に共同体を必要とする生き物なのだ。自分に似てい
る人を探し出し、それ以外の人から自分を防衛しようとする。インターネット
上のチャットルームはその典型だ。

だから、もし建設的目的のための共同体が築かれなければ、代わりに破
壊的、殺人的共同体が出現するのだ。


【2】都市共同体を築く非営利組織

都市における共同体は、自由かつ自発的組織でなければならない。なお、
この共同体を築くのは、非政府、非民間の非営利組織の役目だ。

なぜなら、我々が必要としている共同体とは、教育ある知識労働者のため
の共同体だからである。そして、非営利組織だけが我々の望む多様性に
対応できるのだ。

また、この組織は、住民に貢献する有能な市民のニーズにも応えることが
できる。つまり、ボランティア活動の機会だ。こうした活動が、社会に秩序と
変化の両方を実現するのだ。


【3】自発的組織への参加

共同体のメンバーは、真の意味で相互扶助精神を持ち、自分の時間を組
織のために自発的にささげるべきだ。ただし、これは強制されたり、政府の
支配下におかれるべき類のものでもない。

このようにして築かれた共同体は、都市住民に達成感と貢献と意義を与え
るだろう。

20世紀は、先進国を中心に、政府と企業が成長した時代であった。しかし、
21世紀には、都市において共同体を築くことができる組織が成長する必要
がある。


【4】通信技術が組織を変える

未来の企業組織は、これまでのようなトップダウン型の「たて型組織」ではな
く、いくつもの共同体の組み合わせとして機能するようになるだろう。

もともと、これまでの「たて型組織構造」も、管理のツールとしてではなく、コ
ミュニケーションをより効率よく行うために構築されたものだった。しかし今日
では新しい通信技術が登場し、コミュニケーションは非同時的、グローバル、
共同作業的になった。

このコミュニケーションは、時間と空間を超えてチームを作ることを可能にし
組織の壁を打ちこわし、人々の結びつきをより強くする。これにより、未来の
組織は共同体に近づくものと思われる。


【5】共同体の運営

新しいパートナーシップが、共同体を再生する力の源である。これを築くため
に必要なのは、偉大な社会的リーダーである。ビジネスと同じように、ビジョン
を持ち、努力をマネジメントできる指導者が公共、民間、産業の三つの分野
を巻き込んでパートナーシップを築いていく。

このパートナーシップが、チームワークを生む。建設的で、人を癒すことができ、
指導力のある強力なパートナーの指導のもとで壁を超えることは、未来の共
同体建設には不可欠である。

なお、公共への奉仕は、共同体運営の前提条件だ。しかし、この質を維持
するためには、努力でなく結果を管理されなければならない。そのためには、
意見でなく事実に基づき管理をし、また成果は客観的に測定されなければ
ならない。

また、従来の共同体は、地理的に区分されていた。しかし、未来には価値に
より区分される。つまりどこに住むかでなく、何を信じるかによって区分される。

共同体とは、本来共通の利害のもとに個人が集合した組織だ。この新しい、
利害の共同体は、組織内部にとどまらず、顧客、取引業者、パートナーにも
利益を与え、その利益を社会全体に及ぼすことになるはずだ。


これを創造し、運営するには6つの手順と方法がある。すなわち、アイデンティ
ティーを育て、ルールをつくり、情報を共有し、相互奉仕関係をつくり、価値を
生みだし、類似性を運用するのだ。


【6】他の人々との連帯

科学技術の発展は目を見張るばかりだが、私たちの倫理はほとんど進歩して
いない。例えば、私たちは他人の痛みや苦痛に対して敏感であるとは言えな
い。だから、相変わらず将来に対する不安に怯えているのだ。

我々は今日、世界中の出来事を瞬時に知ることができる。だから、もはや知ら
なかったということは言い訳にできない。確かにこれを解決するための手段や可
能性は限られているが、絶望や努力の放棄は所詮言い訳だ。無関心を生む
だけだ。

無関心とは孤独なものである。無関心な人間は、他人を見ていない。だから
周囲に何も感じないし、他人の身に何が起きても気にしない。底知れない虚無
に包まれ、内面を虚無で満たされている。彼らはいかなる希望も将来も持てない。

我々は、21世紀を迎えるにあたり、弱く、虐げられ、孤独で、病み、絶望してい
る人びとと連帯しなければならない。その思いが、共同体に対して気高く人間
的な貢献をしたい!という願望になる。そして、自らが何者であるかでなく、他
者にとって何かということで自らを規定するようになる。(了)
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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