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2002/02/17
2002年4月銀行崩壊
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ビジネス選書&サマリー
http://www.kfujii.com/TCY02.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【読者数8283部】━━━━
=今週の選書=
■2002年4月銀行崩壊/須田慎一郎■
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http://allabout.co.jp/career/bizbook/closeup/CU20020813A/index.htm
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■コメント■
2002年4月、日本もついにペイオフを解禁します。しかし日本の金融シス
テムは、株価急落と国債の格下げ、不良債権などに翻弄されています。
そんな中、ペイオフを実施しても大丈夫なのでしょうか。
銀行システムは、そもそも"信用"で成立っているはずです。お金がそ
うなのですから、それを扱う銀行も"信用力"がすべてといえます。
しかし時代は変わりました。今や銀行も平気で赤字を出す時代です。ペイ
オフ以降倒産もありえます。そうなると預金が戻らなく可能性もあります。
いよいよ"リスクを自己管理しなければならないときが来たのです。そのと
きあなたならはどうするでしょうか?
本書は、日本の金融システムの実態や、金融行政をめぐる人々の悲喜こもご
もをジャーナリスティックな視点で語ります。
金融庁と経済産業省の確執など、政治のワイドショー的裏話も楽しめます。
小泉総理が、親戚の嫁ぎ先と近い柳沢金融担当相に配慮した結果がマイカル
破綻なんて話、知ってました?
しかし本書にはペイオフを迎えるにあたって皆さん自身が何をすれば良いか
に関する答えは書いてありません。それを考えるのは、皆さん自身です。
■本 文■
【1】
2002年4月、ペイオフは解禁され、リスクの自由化が始まる。それがもた
らすインパクトは大きい。それまでに金融危機は回避できるのか?
例えば、あさひ銀行はすでに、不良債権の損失処理額拡大と株式関連損
のため業績予 想を赤字とし、法定準備金の取り崩しを決めた。
法定準備金とは資本の欠損を補うために法律で義務付けられた積立金だ。
この取り崩しには厳しい制約がありそれ以降あとがないことを意味する。
法定準備金は、金融システムの中核を担う他の都市銀行もその取り崩しを
決定している。この状況を第三次金融危機と呼ばずに何とよぼうか?
【2】
今、日本の銀行には三つ巴のプレッシャーがかかっている。まず株価下落
による損失、国債下落による損失、そして不良債権処理である。
株価はバブル後の安値を更新している。また、銀行は65兆円という大量の
国債を抱えている。この国債はいつ暴落してもおかしくない状態だ。
なお本年度から時価会計が導入されている。そのため含み益の60%は自己
資本から引かれる。その結果配当ができなくなれば、公的資金を入れてい
る銀行は、順国有化することになる。
【3】
大手銀行を、法定準備金の取り崩しに追い込んだ不良債権とは何か?金
融庁は債権を以下の4つに分類している。
1)正常債権
2)要注意債権
3)破綻懸念先債権
4)破綻先債権
一般に3と4を不良債権と呼ぶ。しかし要注意先の企業の中にも不良債
権予備軍が含まれている。これを大手30社問題という。
最近の例では、マイカルが2の中にあった。そのため銀行はあまり引当金
を積んでいなかった。
この倒産がダイエー問題に発展した。ダイエーが破綻すれば、UFJ銀
を中心に大手都銀の一角は危機に見舞われる。
【4】
都銀の貸出高を総預金で除したものを"預貸率"と呼ぶ。これにより預
金と貸出の比率を見ることができる。現在都銀は預金が貸し出しを上回
っている。
戦後、大手都銀は、ずっと貸出しのほうが多かった。この資金を地銀や
生保から調達していた。しかしバブル崩壊以降、預金が上回ってきた。
これに加え、昨今ではペイオフ解禁への対策として預金が都銀に集まっ
ている。月2から3%増えている。一方地銀の預貸率はじり貧である。
その結果、信金の多くは、もはや新規の融資に応じることができない。
地方の金融システムは、麻痺的な状況にあるといえる。
【5】
早期健全化法にもとづいて個別の資金を投入する制度は、2002年3月末日
を持って廃止となる。その後この制度による公的資金はなくなる。
金融監督庁は、それまでに自力再建できない銀行はマーケットから退場し
てもらう方針でいる。警戒先は、関東銀行、福島銀行、つくば銀行、石川
銀行、中部銀行の五行だ。
すでにS&Pは日本の国債の格付けづけを先進国中イタリアの次、つまり
最下位においている。理由は銀行の収益力が弱いために貸出し増が難しく、
金融緩和の効果が上がらないからである。
これに対し日本政府は何の解決策も示していない。このままでは国際価格
の暴落と株価下落が景気をさらに冷え込ませるであろう。
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