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2002/05/17
ライオンは眠れない

ライオンは眠れない

山之内家の夕食の席に持ち込まれた謎の小冊子には、中国発の不思議な寓話が書かれていました。これは小泉純一郎、田中真紀子ら注目の政治家が動物になぞらえられて登場する、日本の将来を予測した読み物のようです。本書はトヨタ自動車の奥田会長が薦めて有名になりました。メルマガでは寓話部分を省略してエッセンスを紹介しましょう。


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■■        ビジネス選書&サマリー
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【読者数8722部】━
=今週の選書=
■ライオンは眠れない サミュエル ライダー (著)葉 夏生 (翻訳)■
                             実業之日本社
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■■           今週のサマリー

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山之内家の夕食の席に持ち込まれた謎の小冊子には、中国発の不思議な寓話が
書かれていました。これは小泉純一郎、田中真紀子ら注目の政治家が動物にな
ぞらえられて登場する、日本の将来を予測した読み物のようです。本書はトヨ
タ自動車の奥田会長が薦めて有名になりました。メルマガでは寓話部分を省略
してエッセンスを紹介しましょう。

【1】
  
日本は世紀末の経済戦争に敗北してすでに焼け野原になっている。小泉首相は
これに対し、構造改革をはじめとするあらゆる創造的破壊を行うだろう。

それでも猛烈な不景気が襲い、さらなる失業時代がやってくるだろう。予想さ
れる原因は二つある。

ひとつは中国の安価な商品と労働力の流入、そしてアメリカ株式暴落による経
済不況の飛び火である。そして大恐慌が始まるだろう。

結果、構造改革は進まなくなる。これに対し、小泉首相は国会を二つに割り、
新党を発足させるだろう。そしてX計画を行うはずである。

【2】

これから我々の社会では「破壊」がテーマになる。ただし、ここでいう破壊は、
変革、再生、復活、創造のための破壊だ。

歴史を紐解いても、時代が停滞や腐敗を見せると必ず破壊がやってきた。例え
ば縄文時代の終焉、蒙古襲来、織田信長の出現、明治維新、太平洋戦争だ。

いずれも、凄まじい「破壊」を招いた。しかし、日本はその後に必ず奇跡とも
思えるような大きな飛躍を見ている。

今は、まさにこの「破壊」の時期にあたるといえる。当然、痛みを伴う。だが
起き上がればその向こうに必ず再生がある。

【3】

「破壊」に伴う痛みとは何であろうか?歴史では例えば太平洋戦争後、財閥解
体と農地改革で、富裕層は富を取り上げられた。

そのとき当事者は、これ以上ない痛みを味わった。だが結果的に富は公平化し
民主近代国家が実現できた。

今回の痛みは日本の破産だ。その痛みは国民全員で分け合うことになる。特に
金持ちほど、大きな痛みを味わうことになる。それがX計画である。

国が懸命にペイオフを進めるのは、それに伴う預金者の犠牲に対して、国が責
任逃れできるようにするための準備と考えられる。

【4】

X計画とは何か?それは「預金封鎖」「デノミ」そして「新円切替」の同時実施
だ。まず預金を封鎖し新貨幣を発行、旧貨幣は紙くずにすると発表する。

こうして隠し資産、アングラマネーをあぶりだす。また切替時、交換比率を下
げるか税金を課すかして強制的に財産を取り上げる。仮に平均課税率30%なら
日本の借金と銀行の不良債権は一挙に返せる。

これに対しては国を救うという大義名分があるので暴動など起きないはずだ。
もちろん国民の反発を和らげるため、富裕層ほど厳しい累進課税にする。

現に、預金封鎖は昭和2年と21年に行われた。そのとき新円切替えも行われ
たが、併せて国民の資産調査が行われ、10万円を超える資産には25?90%の
財産税がかけられた。こうして資産家はつぶされた。

また郵便貯金をしていた人は、10年間の払い戻が拒否された。そして10年た
ってみたら、物価はなんと300倍に跳ね上がっていた。

【5】

日本の財政はもはや国民の財産を取り上げなければならないほど逼迫してい
る。平成12年度の税収は52兆円だが、政府と政府保証の特殊法人の借金合計
は916兆円、これでは利払いすら不可能だ。

しかも国民の預金1400兆円は、すでに財政投融資にまわり公共投資に投じら
れほとんど不良債権化している。

国債の発行を抑え郵貯を民営化し国民の金を守る構造改革だが、それでは間
に合わない。いずれさらに不景気になって失業者があふれ、銀行はつぶれ、
大恐慌の一歩手前になる。

「聖域なき構造改革」というが、その「聖域」とは国民の財産なのだ。
米100俵の小泉首相なら、同時代人から非難されても子孫から感謝され後世に
名をのこす道を選ぶだろう。

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■■          今週のコメント

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さて今週の選書はいかがでしたか?賛否両論ありそうです。アマゾンの書評欄
でも、本書に関する議論が白熱しています。なかなか面白いですよ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4408394823/tachiyomi-22

まあ、確かにかなり飛躍したところもありますね。でも日本の財政が深刻なの
は、飛躍でも何でもありません。真実です。

最近も米格付会社のムーディーズは、日本と仲良く最下位だったイタリアの長
期国債の格付けを1段階引き上げると発表しました。

その結果、日本はG7で単独最下位になりました。しかもムーディーズは日本
国債をさらに格下げする方向で調整しています。

本書は最近売れているのですが、実は発行は去年です。トヨタ自動車の奥田会
長が日経新聞の書評欄で薦めて、ヒットしたのです。

以前このメルマガでも紹介した「勝ち組の構想力」という本の中で、かの大前
研一さんは「トヨタの強みは、経営者がいつも『どうしたら社員に危機感を持
たせられるか』を考えていることだ」といっていました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569616992/tachiyomi-22

もしかしたら奥田会長は日本人に危機感を持たせるために、本書を薦めたのか
もれませんね。

確かに、我々はなんだかんだ言ったって国を信じています。だから結局、郵貯
に貯金し、国債を買ってきたのです。でも国が破産しないなんて保証はどこに
も無いですよね。

「平和」だって同じです。多くの人が「自分が戦争に巻き込まれることなんか
ありえない!」と考えてます。でも去年のテロを見れば、とてもそうは思えま
せん。

結局、大事なことは、政府にも、自分の会社にも頼りきっちゃいけないという
ことに気づくことですよね。時にはこうした本で自分の「危機感チェック」を
するのも悪くないかもしれません。


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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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