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2002/05/31
チャイナ・インパクト

チャイナ・インパクト

コンサルタント大前研一氏が、自ら中国各地を取材し、書き上げた1冊です。
中国を1つととらえて議論する風潮を批判し、地方ごとに丁寧に分析する点が見逃せません。


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■■        ビジネス選書&サマリー
http://www.kfujii.com/TCY02.htm
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=今週の選書=
■チャイナ・インパクト 大前 研一 (著)■
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■■           今週のサマリー

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コンサルタント大前研一氏が、自ら中国各地を取材し、書き上げた1冊です。
中国を1つととらえて議論する風潮を批判し、地方ごとに丁寧に分析する点が
見逃せません。

【1】
  
かつて眠れる獅子と呼ばれた中国は、沿岸部に関しては完全に目覚めた。安価
で良質な労働力と最新鋭設備を取り入れた産業基盤を背景にさらに発展する。

日本は、その圧倒的低コストが引き起こす価格競争から、もはや逃れられない。
またその面で彼らに勝てる見込みも無い。

これを利用して成功するユニクロやホンダ、サンヨーのような企業がある一方、
中国を、市場や職を奪う脅威として見る企業もある。大半は後者だ。

実は中国製の製品や農作物を輸入しているのは、日本メーカーや日本の商社だ。
中国を利用する企業が、利用できていない企業を責めているというのが本質だ。
中国脅威論を唱えているだけでは、こうした本質は何ひとつ見えてこない。

【2】

中国は、政治的には北京の中央集権国家だ。しかし経済的には地方に権限委譲
された連邦制の統治機構だ。

特に発展し経済的自立に成功したのが、東北三省、北京・天津回廊、山東半島、
長江デルタ、福建省、珠江デルタの6つの沿岸部だ。

これらの地域は、それぞれが独自性を持って発展しており、独立性が高い。面
積や人口、経済力から見ても一つの国家として認識したほうがわかりやすい。

このメガリージョンは、それぞれ文化、歴史、言語的つながりで結ばれた複数
の都市からなる文化圏として一つの国のようになっている。

【3】

中国は、このメガリージョンが互いに競争しながら、外資系企業を呼び込み、
その力を借りながら経済発展するという「貸席経済」で伸びてきた。

その典型はアメリカだ。資本や人材をためらい無く輸入し、世界中の企業に自
国内の雇用創出をさせている。これが21世紀の繁栄の雛形だ。

いまや資本は瞬時に国境を越えて行き来し、情報も企業も消費者も雇用さえも
電話一本で国際移動する時代なのだ。

自分の持つ地下資源や国土の広さ、軍隊の強さなどで、繁栄を引き寄せる20世
紀までの経済原理は通用しない。

【4】

中国は、ダイナミックな経済の動きを本能的に察知し、他人の力を借りる貸席
経済で自国経済のキャッチアップと建設、躍進へとつなげている。

資本も企業も投資が保証され、リターンが期待できるところに吸引されていく。
中国には投資が集まり、強固な産業基盤が出来てしまった。

今後この基盤は伸びることがあっても、国家権力やイデオロギーが原因で滅び
ることは無い。長い期間かけて成熟し、他の地域に置き換えられていくという
ライフサイクルをたどるはずだ。

シンガポールの巨大バージョンがいくつか出来たわけだ。こうした経済発展は、
今後、北京の統治機構にも少なからぬ影響を与えると予想される。

【5】

中国は経済面で日本に依存している。だが政治、行政の面でプレゼンスが悪い
ため、中国は日本を見下している。日中関係はゆがんでいるのだ。

だが今後、中国はアメリカと二分する有力な国家になることは間違いない。日
本はこのままいくと中国の周辺国家に成り下がる可能性もある。

日本はまだ経済力があるうちに地域国家やメガリージョンとの付合いを深め、
彼らが日本なしには立ち行かない程の相互依存体勢に持ち込めばいい。

そのためにも、日本は東京対北京という国民国家的発想から抜け出すべきだ。
日本と中国の地域同士が深い付き合いをするという新しい考え方が必要なのだ。

我々は、チャイナインパクト、つまり中国の衝撃を、いかに自分たちの変革の
原動力にするのか、という応用問題を、今突きつけられているのだ。

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■■          今週のコメント

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本書は氏の名著「ボーダレスワールド」と「地域国家論」の理論を、中国にあ
てはめて展開した、いわば「大前論中国応用編」です。この本のすごさは、大
前氏が中国を実際に見聞し、地域別に分析、対策まで提言したところです。

ほとんどの識者が"中国"問題のように中国を一言で言い切ります。他で見聞
きした情報や、短期の滞在で知ったかぶって書くからでしょう。こうしたスタ
ンスを完全否定、何度も足を運び、自説を展開するところは、さすが!と思わ
せてくれます。

やはり、学者やジャーナリストの論調を含む一般常識も、一旦は「本当かよ」
と疑うべきだ、と言う認識を新たにしました。

以前は、アメリカで同じようなことがありました。あの広いアメリカを、すぐ
「アメリカ人は」とか「アメリカでは」なんて一言で片付けようとする人がた
くさんいました。

例えば自動車の通商問題がおきると、真っ先にデトロイトの人たちが取材され
ます。当然彼らは日本に文句を言っています。それをテレビで見た我々は「ア
メリカ人は怒っている!」と思ってしまうわけです。

でも私のいた西海岸では違いました。そこには日系の自動車会社に勤めるアメ
リカ人がたくさんいます。その人たちの意見は、全然違います。でもそういう
ときに彼らは取材されません。だから日本にいる人には伝わりません。

これは余談ですが、アメリカでジャーナリストをしている友人が、ITバブルの
ころ「最近スラム街に行っても(みんなお金もちになって)スラム街らしい画
が取れないんだよなあ」と嘆いていました。

その時「報道って真実を伝えるのでなく、我々の偏見や先入観を裏付けるよう
にされるんだな」と思った記憶があります。

中国といえば、日本大使館の失態が記憶に新しいところです。あれだって中国
の役人の公式発言ばかり報道されます。これを見た我々は「やっぱり中国人は
日本をなめている!」と気持ちを新たにします。でも中国を知っている人なら、
あれが中国人の総意とは思わないでしょう。

その点、さすがに日本のマスコミや識者のあり方を否定してきた大前氏です。
本書でも自ら足を運び、自ら考え、自分の言葉で伝えることの大切さを教えて
くれます。その結果が中国を6つに分けて地域別に考えることだったのです。

かく言う私も、実は中国には10年ぐらい行っていません。本書を読んで「や
っぱりコンサルティングをしている人間がこれではだめだ」と思いました。近
いうちにぜひ行かねば!と決意を固めました。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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