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2003/09/19
「クビ!」論。

「クビ!」論。

1000人の社員のクビを切り「クビキラー」と恐れられた元外資系人事部長が語る異色の体験的雇用論です。長引く不況の影響で、日本の雇用調整は、大きく変わりつつある。
終身雇用制の崩壊、年功序列から成果主義の導入。「大企業に入れば
一生安泰」と言われた時代は、もう過ぎ去ってしまった。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 17850部>━
=今週の選書=
■■「クビ!」論。
■■梅森 浩一
■■朝日新聞社
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■■  選書サマリー

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1000人の社員のクビを切り「クビキラー」と恐れられた元外資系人
事部長が語る異色の体験的雇用論です。

【1】

長引く不況の影響で、日本の雇用調整は、大きく変わりつつある。
終身雇用制の崩壊、年功序列から成果主義の導入。「大企業に入れば
一生安泰」と言われた時代は、もう過ぎ去ってしまった。

働いているのが、大企業だろうと、中小企業だろうと、サラリーマ
ンはサラリーマンだ。このご時世、いつクビを切られてもおかしく
ない。

経営者たちは、「リストラ」に始まって「早期退職」「希望退職」
「雇用調整」などと、巧みにネーミングを凝らしている。だがそれ
らはみんなごまかしだ。何と呼ぼうと、やっていることはクビだ。

彼らがやろうとしていることは、会社から社員の追い出すことだ。
しかも、こうした言葉遊びに熱中しているだけで、日本の雇用シス
テムが抱える本質的な問題は、なおざなりにされたままなのだ。

【2】

正しいクビ切りの本質は「人材の流動化」と「実務の効率化」にあ
る。正しくクビを切れば、企業は息を吹き返す。クビを切られた社
員も残った社員も、以前にも増してやりがいを持って働いていける。

こう考えると、クビ切りは最もダイナミックで、最もやりがいのあ
るビジネスの1つのはずだ。ところが今、日本の企業社会で吹き荒
れるのは、こうした本質を理解しない経営者によるクビ切りだ。

日本のクビ切りは、経営者が、グローバルスタンダードという言葉
を都合よく解釈しているだけでしかないのだ。

「人材の流動化」や「実務の効率化」を無視したクビ切りは、社員
をゴミ箱にぽいぽいと捨てるのと同じ行為だ。ごまかしに満ちた、
不公正な、プロ意識が欠如した経営者のなせる技なのだ。

【3】

社員たちには人生がかかっているのだ。中途半端な経営者、中途半
端な人間に、クビを切られるほど無念なことはないはずだ。

日本の経営者が、最近、声高に唱えているグローバルスタンダード
に照らし合わせて考えても、今の日本のクビ切りは、最も残酷にし
て冷淡、救いようがないものだと言える。

しかし、終身雇用を守ってきた日本企業が、この禁断の果実の味し
めてしまった以上、今後、景気が回復しようとしまいと、もう引き
返すことはない。

これからも日本企業においても、クビ切りはますます定着し、浸透
していくことだろう。会社が恒常的に社員のクビを切る「大クビ
切り時代」はすぐそこに迫っているのだ。

【4】

外資系企業に比べ、日本企業で行われている「リストラ」と称する
クビ切りは、実に悲惨だ。社会状況を無視し、目的も戦略もなく、
ただコスト削減のために社員のクビを切っている。その結果、企業
も社会もどんどん活力を失い始めている。

本来、クビ切りの最終的な目標は、業績アップと企業の再生にある
はずだ。単なる口減らしではないはずだ。

また、外資系企業の世界では、社員に厳しく結果が求められるよう
に、経営陣にも結果が求められる。株主の力が強いため、クビ切り
をして組織がズタズタになり、業績が下がれば経営者もクビになる。

ところが、今、日本企業の経営者の中に、こうした強い経営マイン
ドを持ったトップはほとんどいない。

【5】

日本では「クビを切った」という話は聞くが、その後、その会社の
業績が、上がり続けたという話は全く聞かない。これはほとんどの
クビ切りが失敗だったことを意味している。

多く経営者が、人件費を削減することで目先の業績を回復させるこ
とばかりに関心を持ち、その手段としてクビ切りをしているからだ。
だが、そのクビ切りは、改革に結びつかずに終わっている。

日本企業の多くは、外資系企業のまねをして社員の首を切っている
だけだからだ。彼らはクビ切りの本質を全く理解していないのだ。

中には「経営が苦しい」といって、リストラも賃下げも断行しなが
ら、株の配当だけはどんどん上がる同族企業もあるという。こうい
う経営者は、クビ切りをする前に、自分のハラを切るべきだ。

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■■  選書コメント  

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成果があがれば、昇給も昇進もケタ外れ、反対に成果がでなければ、
あっという間にクビを宣告され、否応なく追い出される...。外資系
企業は、弱肉強食のずいぶんと厳しい世界に見えます。

でも、日本の企業にも酷い面があります。まず、なかなかクビにし
ません。本当は出世の見込みなどないのに、チャンスがあるような
ことを言って、ギリギリまでがんばらせるのが日本の会社です。

見込みがないなら、早く追い出した方がいいはずです。その会社で
見込みが無くても、他の会社や、ほかの仕事なら、高い能力を発揮
できるかも知れないのです。早ければ、仕切り直しも早く出来ます。

しかも、日本企業で評価されるのは、協調性、リーダーシップなど
という曖昧なものです。そんな曖昧なものについて、入社年ごとに
順番をつけておいて、ある時、下からばっさり切り捨てるのです。

だから切り捨てられた方は、生活に困るといった現実的な側面より
も、人間性を否定されたことということにショックを受けます。当
然ダメージも大きくなり、再起に時間がかかります。

本来、人間は、人によって優れたところも劣ったところも違います。
自分の一番優れたところを活かして、会社に貢献すればいいはずで
す。その会社で活かせないなら、別の会社に移ればいいのです。

思えば、我々は生まれてから、ずっと順番を付けられてきました。
成績表で、学歴で、入社した会社のランキングで。そして会社に入
ってからも、社内では順番が付けられているのです。

もちろん、競争は悪いことではありません。問題は、日本の競争で
は、その時々で種目が一種目しか無いことです。自分の向き不向き
で種目を選ぶことが、ほとんどできないのです。

こういう社会を変えるには時間がかかります。でも自分が競争を降
りることは、すぐ出来ます。外に出れば、もっと大事なことはたく
さんあります。

同じ努力をするなら、こんな"より良い従業員として会社に認めて
もらう努力"よりも、そんなつまらない競争から自由になる努力を
したいものです。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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Tel.(03)6273-7950
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