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2003/12/12
人間が幸福になる経済とは何か

人間が幸福になる経済とは何か

史上最大の経済発展のひとつ90年代のアメリカは、いかにして自らを破綻へ導く種をまくことになったのか。ノーベル賞経済学者ジョセフ・E・スティグリッツの最新作です。


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■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 19630部>━
=今週の選書=
■■人間が幸福になる経済とは何か
■■ジョセフ・E・スティグリッツ (著), 鈴木 主税 (翻訳)
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■■  選書サマリー

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史上最大の経済発展のひとつ90年代のアメリカは、いかにして自ら
を破綻へ導く種をまくことになったのか。ノーベル賞経済学者ジョ
セフ・E・スティグリッツの最新作です。

【1】

90年代、クリントン政権下のアメリカでは、経済は30年ぶりの急
成長を見せた。マスコミも専門家も「ニューエコノミーの到来だ、
不況は過去のものになった」と宣言した。

クリントンが政権を引き継いだとき、アメリカの巨額の財政赤字と
貿易赤字は増大しつつあった。クリントンはこの問題を解決し、経
済は景気後退から抜け出した。

特に生産性の向上など、いくつかの分野では、誰も予想しないほど
の成功を収めた。貧困は軽減され、所得最下層の収入はついに増加
し始めたのだ。

もちろん財源不足や、議会の協力が得られずに挫折した政策もある。
例えば、研究開発や教育、環境の改善などだ。だが財政赤字は巨額
の黒字に変わり、失業率は数十年ぶりの低水準になった。

一応、次のブッシュ政権には強い経済を引き継ぐことができた。い
ろいろな問題は指摘できるものの、少なくとも経済の分野では、ク
リントン政権は十分な成果を残したと言える。

【2】

アメリカ流資本主義は、他国の資本主義に勝ったと言われた。G7な
どの国際会議では、アメリカは自分たちの成功を誇らしげに語り、
うらやましげな各国の閣僚に向かって「我々を見習え」と説いた。

アジアは、それまでのやり方を捨てるように言われた。終身雇用制
度など、もはや過去のものと断じた。こうしてアメリカ流資本主義
が世界中にばらまかれていった。

この新しい新秩序のもとで、世界中が恩恵をうけているように見え
た。先進国から後進国に資金がながれ、前例がないほど貿易は盛ん
になり、貿易と資金が成長を生み出した。

アメリカ流資本主義の牽引役を果たしたのが、ドットコム企業が主
役のニューエコノミーだ。これが世界のビジネスのやり方を変えて
しまった。まるで産業革命が再び起きたかのようだった。

【3】

ニューエコノミーは、重要性がやや誇張されている面がある。だが
本物であることは間違いない。インターネットや携帯電話のおかげ
で、今日の経済は10年前とは全く異なるものになってしまった。

こうした新しいテクノロジーが、ビジネスやコミュニケーションの
方法を変化させ、われわれの生活水準は劇的に変化した。その変化
はこれからも続くのだ。

こうした変化のおかげで、インフレを抑制しながら同時に失業率を
下げるなどということができたのだ。失業率を低く抑え続けること
で経済は成長し、その他の社会問題に取り組むこともできた。

冷戦の終結でアメリカは唯一の超大国となった。社会主義に対する
市場経済の勝利は明らかになった。そして世界はひとつになったよ
うに見えた。それが新時代の到来を予感させていた。

【4】

しかし「何かがおかしい」という兆候がアジアで起きた。1997年、
韓国、インドネシア、タイが立続けに経済危機に見舞われ、ついで
ロシア、ブラジルと続いた。確かに何かがおかしくなっていた。

その後、新世紀に入ってアメリカでハイテク株が大暴落し、ついに
バブルは弾けてしまった。それから2年、アメリカの証券取引所で
は、アメリカを除く国の総歳入を上回る額の資産が失われた。

90年代が終わりに近づくにつれ、新時代の幕開けだと思われていた
ものも単なるバブルに過ぎなかったことがわかった。バブルである
以上、弾けることも、そのあとに不況が訪れることも必然だ。

ただし今回のバブルはこれまで無いほど大がかりなものだった。そ
のために、その後に続く景気後退はこれまで以上に大きく、それが
大きな悪影響を及ぼした。

【5】

不況はアメリカに留まらず、世界中の経済を直撃した。これが世界
的な景気後退につながった。狂騒の90年代は、そもそも土台が偽り
だったために終わる運命にあったのだ。

だが不況がこれほど長引いて深刻化し、大損害をもたらしたのは、
決して必然の結果ではない。ブッシュ政権が政策を誤ったことが最
大の原因だったのだ。

今、再び経済は疲弊しつつある。次の政権が、今のアメリカが落ち
込んでいる罠を回避することを祈りたい。そして長期的な問題に取
り組み、新たな繁栄を築くことを期待したい。

そして今度こそ、その繁栄をすべてのアメリカ人、さらに世界のす
べての市民と、分かち合えるようにしたいものだ。

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■■  選書コメント  
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史上最大の経済発展のひとつ、90年代のアメリカは、その経済発展
の中で、自らが破綻する種子をせっせと蒔いていたようです。一体
どのようにそれは蒔かれたのでしょうか。本書はこれに答えます。

著者は、前作『世界を不幸にするグローバリズムの正体』(徳間書店)
の中で、自由市場主義に対する間違った信仰が、多くの途上国の人々
を苦しめている実情を語りました。本書では、同じ論点でアメリカ
そのものに目を向けます。

確かに、90年代の繁栄で雇用は生まれ、テクノロジーは進歩し、イ
ンフレは収まりました。でも自由市場に肩入れしすぎた結果、企業
が会計基準から外れることを黙認し、規制解除を過度に進めました。

国家は、企業の拝金主義に迎合してしまったのです。そして今、そ
のつけが回ってきています。今日われわれが直面している経済問題
の下地はこの繁栄の90年代にできたものなのです。

なお本書の中に、時々「日本のことでは」と思うほど、日本の事情
と重なるところがあります。そこから我々は多くを学ぶべきでしょ
う。「愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶべきだ」と言います。

現に、著者自ら「本書は90年代の経済史を書き直そうとするもので
なく、アメリカをはじめとする先進諸国が今後どこへ進むのかを示
すのが意図だと言っています。

日本がバブル後の長引くデフレ不況から脱却するためには、90年代
から今日に至るアメリカ経済の検証が必須です。本書はそのための
最良の書と言えるでしょう。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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