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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2008/04/25
「やる気を出せ!」は言ってはいけない ‐ 石田淳さん

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今回、ご登場いただくのは『「やる気を出せ!」は言ってはいけない』の著者、石田淳氏です。行動科学マネジメントの第一人者である石田氏に、リーダーと呼ばれる人たちが知っておかなければならないことをお話いただきます。
石田淳
石田淳(いしだ・じゅん) さん

株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者。行動科学マネジメント研究所所長。日本の行動科学(分析)マネジメントの第一人者。現在、大手企業をはじめ、多店舗展開を切望する企業の社内研修を活発的に展開。ISO9001、プロジェクトマネジメントに続き、マネジメントの生産性をあげるメソッドとして注目を集め、多くのメディアに掲載される。著書に『「続ける」技術』など。

●現在のお仕事に至るまでの経緯をお教え下さい。

石田:1998年に上場企業を退社。その後、アメリカに渡りまして、人間の行動原理に基づいた行動科学マネジメントについて、学びました。帰国後、行動科学マネジメントを日本に合う様にアレンジし、セミナーや講演、企業の社内研修などを通して、マネジメントに悩んでいる方たちにお伝えしています。

●本書を書かれた経緯をお教え下さい。

石田:多くの人たちに行動科学マネジメントという手法を伝えたい。そんな思いから、誰もが簡単に読める入門書として、本書を執筆しました。本書を通して、行動科学マネジメントに興味を持たれた方は、より詳しく説明しているダイヤモンド社の「短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント」を読んでいただきたいですね。

●行動科学マネジメントとは、どのようなものなのでしょうか。

石田:行動科学マネジメントとは、物事を習慣化するための手法です。この手法を使えば、ビジネスでは、部下に自発的に仕事をしてもらうことができるようになりますし。また、プライベートでは、英会話の勉強やダイエットなど、挫折しがちなことも続けることができるようになります。

●習慣の力について、お教えください。

石田:実は、人間が普段の生活のなかで意識して行動しているのは、たったの5パーセントと言われています。残り95パーセントは習慣で動いているものなんです。
たとえば、中日の落合監督、イチローを教えた伝説のコーチ高畠導宏氏も、平凡な積み重ねが、非凡になると語っています。私たちの習慣は、非常に大切なものなんですよ。

●でも、良いことと分かっていることでも、習慣化することは難しいですよね。

石田:そうなんです。たとえば、セミナーに出て、いい話を聞いたとします。そこで、自分も実践してみようと思い立った。でも、1ヶ月後に続いている人はどのぐらいいるかと思いますか。たったの2パーセントしかいないんですよ。

●多くの人たちが続けることができない理由は、どこにあるんでしょうか。

石田:たとえば、あるビジネスマンが英会話の勉強をしようとします。1日30分ぐらいなら、時間がとれるだろうと思い、いつもよりも早起きしました。でも、長く続けることができませんでした。それは彼にやる気が足りなかったからではありません。人間というものは、急激な変化を伴う行動は、持続できないものなんです。

●なるほど。では、どのようにすれば、習慣化することができるのでしょうか。

石田:まずは普段の生活を変えずに、英会話の勉強を取り込んでいくことが大切です。たとえば、通勤時間を利用して、テキストを読むとか、i-podを聞くとか。それらができるようになったところで、30分、勉強時間をつくるようにするんです。このようにして、少しずつ段階を上げていけば、無理なく続けていけるものなんですよ。

●石田さんご自身はどのようにして、物事を習慣化されていますか?

石田:私は毎日、読書とランニングを欠かしません。これらはすべて時間割を決めてやっていますよ。そうすれば、無意識のうちに体が動くものなんです。

●それでは、普段の生活で心がけていることがあれば、お教えください。

石田:どのようにして、仕組みをつくっていけばいいのか、常に考えるようにしています。たとえば、今年、私は毎月1回、海外に行くと決めています。なので、自分がいなくても、会社が回るような仕組みづくりをしているんですよ。

(続く)

●本書ではリーダーと呼ばれる人たちが知っておかなければならないこととして、行動科学マネジメントの手法を紹介していますが、行動科学マネジメントにおいて、部下を叱ることは正しいのでしょうか。

石田:行動科学マネジメントでは、1回叱ったら、4回ほめることを勧めています。
派生の原理というものがあります。たとえば、いつも怒る上司がいるとします。上司は部下のために怒っているといいますが、部下の方はそうは思いませんよ。怒られ続けているうちに、上司も職場も嫌いになってしまいます。逆に、部下の良いところを見つけ、ほめてくる上司がいるとします。すると、部下は上司が好きになって、仕事も楽しくなってきます。
ちなみに、前出のコーチ高畠氏は、30年間、一度も選手を叱ったことがないそうです。それでも、イチロー選手をはじめ、有名な選手を何人も育てあげました。スポ根全盛時代であるに関わらず、です。人を育成するには、悪いところを注意するよりも、良いところをほめることの方が大切なんですよ。

●やもえず部下を叱る際、注意する点はありますか。

石田:昨今、ビジネスマンのうつ病が急激に増えています。その原因として挙げられるのが、上司からの人格否定なんです。これは部下自身を深く傷つける言動です。それに、上司から「お前はダメなヤツだ」と注意されても、部下としても直しようがないじゃないですか。意味がないんです。上司は部下の間違った行動、つまり、直せる部分に対してだけ、怒るようにしてください。

●この他、上司が部下に接するときに気をつかなければならないことはありますか。

石田:以前、アメリカのアトランタで日本の駐在員の方たちと食事をする機会がありました。そのとき、私が「日本の会社とアメリカの会社では、どちらが働きやすいですか?」と質問したところ、みなさん「アメリカの会社の方がいいですね」と答えました。その理由は、アメリカ人の上司は話をきちんと聞いてくれるからだそうです。日本人の上司の場合は、報告などのときに、目も見てくれないと言います。上司の態度がいかに部下に影響するのかを考えないといけませんね。

●それでは、次回作について、お教えください。

石田:次はメタボの本を出す予定です。これまでのメタボの本はどうすればやせるのか、そのやり方しか説明していませんでした。これではせっかく痩せたとしても、辞めた時点で元に戻ってしまいます。メタボ対策に大切なのは、どうやってやせた体を維持するかなんです。
次回作では、行動科学マネジメントのテクニックを使って、どうすれば無理せず、ダイエットを長続きすることができるかを紹介していきたいと思っています。

●それはおもしろそうですね。最後に、読者にメッセージをお願いします。

石田:ビジネスでは、部下が育たないし、すぐにやめてしまう。プライベートでは、何か始めたとしても、長続きしない。うまくいかないそれらの問題を自分のせいだと責めている人たちは多い。そんな彼らに、行動科学マネジメントという手法もあるんだなということを知ってもらいたいですね。そして、できるところから実践してもらえればと思います。そうすれば、まったく別の世界が広がっていくと思いますよ。

本日はありがとうございました。
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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