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インタビュー

著者に訊けビジネス選書家 藤井孝一の直撃インタビュー

ビジネス書のベストセラー著者に、著者インタビューで定評のある藤井が直撃体当たりインタビューをしてきます。本に書けなかったメイキングから、執筆の苦労話、読者への熱いメッセージまで、著者から引き出します。

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2007/05/15
会計を使って経済のニュースの謎を解く ‐ 望月実さん

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今回は『会計を使って経済のニュースの謎を解く(日本実業出版社)』の著者、望月実氏にお話を伺います。本書では、会計のおもしろさを紹介。数字の裏に隠された物事の真実がわかる1冊です。
望月実
望月実(もちづき・みのる) さん

http://ac-intelligence.jp/
1972年名古屋市生まれ。立教大学卒業後、大手監査法人に入社。監査、株式公開業務、会計コンサルティングなどを担当。2002年に独立し、望月公認会計事務所を設立。ドラッカー学会会員。人気メルマガ「経済丸わかり~公認会計士が教える使える知識」を発行。著書に『<数字がダメな人用>会計のトリセツ』。

●現在のお仕事をお教え下さい。

望月:2002年に望月公認会計士事務所を設立し、会計コンサルティングを行なっています。
また、現在、使える会計を広げようと、執筆の仕事にも力を入れています。

●活動の範囲を執筆にまで広げられた経緯をお教え下さい。

望月:会計士という仕事を通して、多くの経営者の方と接してきました。でも、ほとんどの経営者が企画畑、営業畑から上がってきているので、会計にはそんなに詳しくないんですね。でも、経営者は忙しいから、短時間で一通り説明しなければならない。経営者の方に説明しているうちに、分かりやすい入門書の必要性を感じました。同時に、「分かりやすい会計の入門書はないですか」と聞かれることも多かったんです。
そこで、会計の入門書を書いて出版社に持ち込んだんです。残念ながら、このときは、私の原稿が出版されることはありませんでした。
でも、原稿がもったいないので、ホームページを開設し、そこで、原稿を公開したんです。そうしたら、編集者の目にとまって、私の初めての著書「会計のトリセツ」が生まれたんです。

●「会計のトリセツ」も大変好評でしたね。では、本書を書こうと思ったきっかけは何でしょうか。

望月:経済のニュースを見ていて、「あれ、それってどうして?」と思ったことはありませんか。
たとえば、昔であれば日産のV字回復、最近であればライブドアの粉飾がその典型です。

●確かに。ニュースを見ていても、いったい、どうしてそうなるのか、分からないんですよね。

望月:実は、会計士である私の元にも、いろんな方から「どうして?」との質問が数多く寄せられました。皆さん、ニュースだけでは、そのからくりが分からないんです。理解するには、会計をマスターしなければなりません。
そんなとき、ラジオNIKKEIに出演中、アナウンサーの小原さんから「会計って難しいですよね。でも、会計がわかると経済ニュースが分かるようになると思うんです。望月さん、会計と経済が一度に分かる本を書いてもらえませんか」って言われたんです。
実際に書けるかどうか、その時点では分かりませんでした。でも、編集者の方に意見を聞いたところ、おもしろいという返事をもらい、執筆に取りかかることにしたんです。
本書では、日産のV字回復、ライブドアの粉飾をはじめ、阪急・阪神統合の舞台裏、楽天の株価が高い理由など、7つの経済ニュースを通して、会計がよくわかるようになっています。

●本書はどういう方に向けて、書かれているのですか。

望月:ビジネスマンです。本書は、小説を読むような気軽さで、ビジネスマンに必要な会計知識が身に付くようになっています。この本を読むと、経済ニュースの謎を解きながら、会計という大きな視点でビジネス全体が見えるようになります。

●本書の読み方をお教え下さい。

望月:分からないところは、読み飛ばしてもらってもかまいません。そして、気にかかるところはじっくり読んで下さい。7つのエピソードを読んで、「会計っておもしろいな」と感じてもらえればと思います。

●単純に読み物としても、非常におもしろかったです。でも、会計に苦手意識を持っている人は多いでしょうね。

望月:残念ながら、その通りなんです。会計が苦手なのは、決算書と実際のビジネスの結びつきがよく分からないからだと思うんです。そこをうまく頭のなかでイメージできれば、会計、つまり会社の数字が理解できるのですが・・・・・・。本書を通して、決算書とビジネスの結びつきをイメージできるようになって欲しいですね。

(続く)

●「会計が分かれば、金持ちになれる。いま、自分が貧乏なのは、会計が分からないからじゃないか」という意識を持っている人は多いと思うんです。実際はどうなんでしょうか。

望月:それは間違いではないですね。会計の知識があると、お金で失敗することが少なくなります。たとえば、ローンで何かを買うときも、的確に将来の数字を弾くことができるんです。
逆に会計が分からないと、将来が読めず、場当たり的な判断を下してしまいがちになってしまいます。
たとえ多くのお金を稼いだとしても、無駄に使ってしまえば残りません。会計が分かるとお金の使い方が上手くなります。投資というのはお金を儲ける知識、会計というのはお金を守る知識、この両方を身につけることがお金持ちへの近道だと思います。

●なるほど。会計を学ぶと、いままでとは違った目で経済を見ることができますね。

望月:そうですね。
あと、経済のニュースを見るときは、鵜呑みにしてはいけないんです。
たとえば、マスコミは企業を持ち上げたいときは、資産100億など調子の良い数字を並べます。逆に、叩きたいときは赤字20億と悪いところをクローズアップするんです。つまり、マスコミが報じるニュースは、一部でしかないんです。会計を理解すると、「この会社は資産が100億円あるけど、当期の赤字が20億円あるから危ないかもしれないな。」というような、客観的な視点から判断ができるようになります。

●会計を学ぶと情報に踊らされることがなくなるということですね。

望月:その通りです。また、ニュースだけで判断しようとせずに、経営者の言葉にも耳を貸してほしいですね。
たとえば、日産のホームページのなかには、ゴーンさんが語る中間決算発表会の動画があります。ここでは、ゴーンさんの言葉で決算数値の内容や経済理念が語られています。
経営者の言葉をそのまま鵜呑みにするのもいけませんが、両方の意見を見比べることで、真実はより近くなると思うんです。一部よりも全体が分かった方が成功する確率が高くなります。
会計は道具です。会計に限らず、世の中を見るときは、何か道具を、つまり基準を持って見て欲しいですね。
変化の激しい先の見えない時代には、組織に頼るのではなく、常に外を見ていかないといけないと思うんです。
ビジネスマンのたしなみとして、ぜひ会計の知識を身につけてほしいです。
会計が分かると、数字の裏に隠されたリアルが見えてきます。
また、全体的なものの見方ができるようになりますし、経営者が考えていることが分かるようになります。だから、きっと出世にもつながると思いますよ。

●見回してみると、世の中には数字があふれていますよね。でも、ほとんどの人が数字の意味なんて考えていないと思うんですよ。たとえば、本書を買うときも、定価1400円と言われて、それで納得していてはダメなんですね。定価1400円の意味はいったい、何なのか、考えないといけないんですよね。

望月:そうなんです。できる人とできない人の違いは、ありふれたことをどこまで深く考えられるかにあります。例えば同じくらいのページ数でも、専門書は高いですよね。専門書も普通の本も、本を作るときのコストはそれほど変わらないと思いますが、専門書を読む人はあまり多くはありません。そこで、普通の本に比べて少ない部数で、多くの売上を上げなければならないため専門書は高くなります。これを逆に考えると専門書を読む人は限られているため、専門家の数などから逆算して売れる数字を見積もりやすく、安定的な経営が行いやすくなるというメリットもあります。できる人は、本の値段といったありふれたことから、その背後のビジネスを分析することによって、自分に必要な情報を取り出しています。

●ところで、大ベストセラー「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」の著者・山田真哉さんとは、ご友人なんですか。

望月:以前同じ監査法人に勤務しており、私の方が3年くらい先輩になります。でも、大きな事務所だったので、部が違うとまったく分からないんですよ。あるとき、社内報で「山田さんが女子大生会計士の事件簿という本を出しました」という記事を読んで、初めて同じ会社だということを知りました。女子大生会計士の事件簿が面白かったので、私の方からコンタクトをとって、お付き合いが始まりました。そういえば、何年か前に居酒屋でどういう本を書きたいかという話をしました。当時、数字について、山田さんはエンターテイメントの要素を持ちながら多くの人に教えたい、私はビジネスマンに対して教えたいということを話し合ったことを覚えています。ちょうどその頃話していたことが、私の今回の著書、山田さんの「食い逃げされてもバイトを雇うな」として世の中に出るのは感慨深いですね。

●最後に一言、お願いします。

望月:一般的に会計は「つまらない」、「むずかしい」と思われているので、その概念を変えていきたいですね。
数字の裏には、ストーリーがあります。これからもストーリーのおもしろさを伝えられるような本を書きたいと思います。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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