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2001/12/16
日本経済生か死かの選択

日本経済生か死かの選択

瀬戸際の日本経済。バランスシート不況を見誤った小泉政権への緊急提言。不良債権処理と財政再建は構造改革ではない。早急に小泉構造改革とは切り離し、現実的な景気対策で大恐慌シナリオを回避せよ!本書と同内容の著者の論文が2001年度最優秀論文として米国NABEのAbramson賞を受賞。


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 今週は、当初著者名を間違えて表記していました。たくさんの皆様から
 お叱りやご指摘のメールを頂戴しました。お騒がせいたしました。
 
 さて今週の選書はいかがでしたでしょうか?私が本書を面白いと思うの
 は、著者の鋭い分析やわかりやすい論理展開だけではありません。

 著者が多くのエコノミストを含む世の中の考え方と、物を180度違う視
 点から見ていることです。

 現在、財政出動に関する国民のコンセンサスは「過去10年間で140兆円
 も景気対策を打ったが、結局景気はよくなっていない。だからこれ以上
 同じことをやっても意味がない!」というものです。

 しかし本書の著者は「140兆円使ったから、これぐらいで済んでいるの
 だ」と言っています。同じ現象を見ているのに、物の見方が違えば、そ
 こから導き出される対応も全く違うものになります。

 我々コンサルタントの仕事でも、クライアントが一面的な見方にとらわ
 れていることはよくあります。その場合、それが唯一の見方でないこと
 に気づいてもらうことが、非常に重要な仕事になるのです。

 【1】

 小泉内閣の聖域なき構造改革の柱は、規制緩和、財政再建、不良債権処
 理の3つである。

 最初の規制緩和は全速力でやるべきである。だが残りの二つは戦後処理
 であり、急ぐ必要はない。

 急ぐと経済全体がさらに悪化し、政府の財政赤字も銀行の不良債権も今
 よりずっと増えてしまう。

 世界最悪の土地利用がもたらす高コスト体質や、多くの参入障壁は是正
 されるべきだ。しかし、これが経済を失墜させたわけではない。

 【2】

 この10年間で日本経済を弱めたもの、それはバランスシート不況であ
 る。

 日本経済の構造には二つの車輪がある。一つは家計貯蓄の高さであり、
 もう一つは企業の投資である。家計がせっせと貯めた預貯金を企業が一
 生懸命借り入れて投資にまわしてきた。

 ところがバブルが崩壊し、資産価格の暴落が始まった。投資した際の借
 金が残っているのに、その資産の価格が大暴落してしまったのだ。

 本業であげた利益で借金を返済するようになった。しかも、これを多く
 の企業がいっせいにやりはじめた。その結果景気が悪循環に陥り、見る
 見る悪くなっていったわけだ。

 【3】

 家計は、消費も貯蓄の金額もバブル期も景気が悪化してからもほとんど
 変わりがない。

 これを考えると「一般消費者が将来に不安を感じて貯蓄を増やし消費を
 抑えているから景気が弱いのだ」という議論は間違いだ。

 変わったのは企業の消費のほうだ。企業がお金を借りてつかっていたこ
 ろと今の企業の消費とでは大きなギャップがある。

 銀行にはお金がジャブジャブあるのに誰も借りようとしない。だから金
 利は下がりつづけるのだ。

 【4】

 この悪循環は、家計が本当に貧乏になり、一円も貯蓄できなくなるまで
 続く。つまり大恐慌に陥るまで続くのだ。

 バブルのあと、日本経済が大恐慌にならずにここまできたのは、政府の
 財政支出が、企業の借金返済に回ることでできた需給ギャップを埋め、
 悪循環を未然に防いできたからである。

 財政支出の話になると、評論家はこぞって140兆円も景気対策を打っ
 てきたが、景気はよくならなかったという。

 しかしこの十年間で失われたと富は株と土地だけで1300兆円にのぼ
 る。これは日本の2.5年分の国内総生産に匹敵する。

 にもかかわらず、日本が恐慌に陥らなかったのは、140兆円が日本経
 済を防いできたからだ。つまり日本の財政政策は有志以来最も成功した
 経済政策といえるのだ。

 【5】

 今、日本が取り組むべきは何か?それは企業の借金拒否症である。家計
 の膨大な貯蓄を誰かが借りて使わないと経済は回らない。

 当初はともかく、このままではいつまでも民間の資金需要が回復せず、
 政府は半久的に財政赤字を出しつづけなければならなくなる。
 
 今の日本に必要なのは、財政による景気下支えで、バランスシートをき
 れいにしたい8割の企業のそれを支援することである。

 そして、バランスシートがきれいになった企業が借金拒否症に陥らない
 よう前向きの構造改革で、面白い投資機会を次々と作ることである。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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