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2002/02/22
脱所有社会の衝撃
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時代は所有から脱所有へ。多くの人はそれでも所有したがります。モノを持てば、その価値がどんどん上がっていくという時代の名残なのでしょう。人はついモノを持ちたがります。
例えば家です。不動産屋は、月々の家賃とローンの返済額を比べて「同じだから買いなさい」と説得しようとします。負担が同じなら、家が手元に残る分、買ったほうがお得というわけです。
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ビジネス選書&サマリー
https://www.kfujii.com/TCY02.htm
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=今週の選書=
■脱消費社会の衝撃/水木 楊■
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■■ コ メ ン ト
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時代は所有から脱所有へ。多くの人はそれでも所有したがります。モノ
を持てば、その価値がどんどん上がっていくという時代の名残なのでしょ
う。人はついモノを持ちたがります。
例えば家です。不動産屋は、月々の家賃とローンの返済額を比べて「同
じだから買いなさい」と説得しようとします。負担が同じなら、家が手
元に残る分、買ったほうがお得というわけです。
しかし、モノを持つことには当然リスクも伴います。最近のように地価
が暴落したら、結局買わなくて得だったということがおきます。
第一、モノを持つのは窮屈です。私なんか、家を買うことが現実には定
住の場所を決めることである以上、買う気なんてとても起きません。
少々お金がかかっても家族構成や年齢を見てそのときベストの場所に住
み代えたいと考えるほうです。皆さんはいかがでしょうか?
なお本書にある、事例は面白く読めました。500万円安いが通勤時間が余
計に片道30分かかる物件は買い得かというわけです。
通常は、お父さんだけが我慢すれば済むという理由で、通勤時間は犠牲
になりがちです。
でも、もしその時間、お父さんがその時間稼げたら、話は変わってきま
す。単純に物件の価格だけでは判断できないはずです。
私の本業、コンサルタントはフィーのベースが時給ですから、こうした
感覚はよくわかります。
サラリーマンで年収600万円の人なら、時給ベースでざっくり2700円ぐら
いもらっている計算になります。
この人が往復一時間余計に通勤に費やすことは、毎日2700円失うことに
なるわけです。これからこうした感覚を持つ人はふえてくるでしょう。
本書で著者はこうした感覚を持つ人を対象にするビジネスがこれから元
気になると言い、そうしたビジネスの事例をたくさん紹介してくれます。
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■■ 本 文
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所有を前提にした経済には限界があるのです。 所有から機能経済へと移行
する日本人はむしろ豊かなのです。
ジャーナリストとして綿密な取材を元に、初めて明かす「モノ社会」から
「時間社会」への流れ。時間をサービスする企業、時間長者が成功する社
会がやってくるのです。
【1】
この十年間のキーワードの一つは「商品から機能へ」であった。80年代
までは豊かとはモノ持つことであり、日本はモノづくり大国として成長
した。
しかし、その路線は変更を迫られている。これからは世界の工場でなく、
面白い、優れたものを研究開発、商品企画して創るソフト主導の国にな
る。
これは脱所有を意味する。つまりモノを所有するために消費することが
これまでより少なくなってきたのだ。
例えば携帯電話は持つだけでは意味がない。使って何ぼというわけで商
品を利用してからお金が動く機能経済の要素が濃くなる。
【2】
今、世の中で元気なビジネスは「5コウ一楽」である。つまり末尾にコ
ウがつく、健康、学校、旅行、不幸、代行の5業種である。
そして、楽はエンターテイメントである。生活の中にエンターテイメン
トを求める志向が広がっている。これは世界的な動きである。
ここに共通しているのは、消費者が「所有」のためでなく「時間」のた
めにお金を出していることだ。「持つ」でなく「する」のだ。
これからは無駄な時間は節約し、自分らしい時間のすごし方にお金をか
ける時代だ。好きなことをする時間が沢山ある"時間長者"の時代だ。
【3】
人は衣食住への根源的需要がある。しかしモノの豊かさがある段階を超
えると、安心、安らぎ、楽しさ、優越性などを求めるようになる。
この需要の高まりが、モノから時間への需要を高める。今後は「より自
由な時間をすごしたい」という欲求を対象にしたビジネスが注目だ。
こうして商品経済に機能経済の要素が加わり脱所有社会は進展していく。
人の自由な時間への欲求は減ることがない。時間をもてあましている人
は、自由な時間をすごす金がないか、時間の使い方がわからないだけだ。
逆に脱所有社会が進めば、時間を犠牲にしてまで、過大な金を求めて走
り回る人は特殊な人間とみなされるようになるだろう。
【4】
これからの十年で起きそうなこと、それは、コンピュータのネットワー
ク化、高齢化、環境問題などである。
これらの動きは「モノ」よりも「時間」への転換の大きな要因になる。
これらが"脱所有社会"をますます促すことになるであろう。
脱所有社会に寄与する要因がもう一つある。それは規制緩和である。こ
れから通信の自由化などサービスなど無形財の分野が緩和の対象になる。
これを中心に新しいビジネスが生まれ、市場が広がっていく。それに従
い脱所有・機能重視の経済がウエートを増すことになるだろう。
【5】
時間本位の生き方をするにはどうすべきか?時間を3つに区分して管理
する。
1)肉体が要する時間(睡眠時間や食事など)
2)選択時間 (楽しさ、感動、達成感などを求める時間)
3)拘束時間 (お金を稼ぐため、付き合いなど義務的にすごす時間)
限られた時間をできるだけ「選択時間」として過ごすことが、豊かに生
きることが大切だ。当然、そのためのプランや戦略が必要になる。
例えば、モノを買うためのおカネを稼ぐために「拘束時間」を増やすこ
とは、その分「選択時間」を失うことになる。時にモノを買わないこと
も有効だ。
結局、一番大切なのは、人生というポートフォーリオの中に、カネとモ
ノに加え、時間、とくに「選択時間」を加えることなのだ。
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