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2002/06/28
世界を不幸にしたグローバリズムの正体

世界を不幸にしたグローバリズムの正体

2001年ノーベル賞経済学者が、大国のエゴを暴きます。WTO、IMF、世界銀行などの国際経済機関が介入した地域に何が起こったのでしょうか? 利益を得たのは誰でしょうか?ちょっと高度な本格的経済書です。


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■■        ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 9636部>━━
=今週の選書=
■世界を不幸にしたグローバリズムの正体■
ジョセフ・E・スティグリッツ (著)鈴木主税(訳)
                               徳間書店
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■■           今週のサマリー

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2001年ノーベル賞経済学者が、大国のエゴを暴きます。WTO、IMF、世界銀行な
どの国際経済機関が介入した地域に何が起こったのでしょうか? 利益を得たの
は誰でしょうか?ちょっと高度な本格的経済書です。

【1】
  
自由貿易を取り払い、世界経済を緊密化させる、いわゆるグローバリゼーショ
ンは、発展途上国、中でもそうした国の貧困層を豊かにする力を持っている。

ところが、実態は全く逆だ。こうした層に壊滅的な影響を与えている。それは
大国が自国の都合で、発展途上国に各種政策を押し付けてきたせいだ。

私はクリントン政権下で経済諮問委員長をしていた。また世界銀行にもいた。
そのどちらでも、経済政策は権力者の利害や信念で決められていた。

学者の提言は軽んじられ、証拠は彼らの都合で捻じ曲げられた。その結果、見
当違いの行動がいくつもとられ、問題を解決しなかった。

政府は、自国の成長をうながすことだけでなく、その成長が他の国にも公平に
共有されるような経済政策を採るべきなのだ。

【2】

グローバリゼーションを進める機関、つまり国際通貨基金(IMF)、世界銀行な
どに対する批判や抗議運動、暴動が世界中で激化している。

最近では途上国にとどまらず、先進国でも抗議運動が起きている。さすがに為
政者たちも自分たちの考えや行動を再検討し始めている。

本来、発展途上国を成長させ、貧困を効率よく軽減させるグローバリゼーショ
ンが、なぜ貧困を軽減だけでなく社会の安定性保持にまで失敗しているのか?

原因は、欧米諸国の偽善にある。欧米は貧しい国に貿易障壁をなくすよう迫り、
輸出からの収入を奪いながら、自らの障壁は守ってきたのだ。

そして、その恩恵を特定の商業と金融に行き渡らせてきた。これは結果的に途
上国だけでなく、先進国の消費者と納税者にも高い代償を払わせている。

【3】

グローバリゼーションでは、善意の努力さえも逆効果になる。例えば、欧米が
推奨するプロジェクトが失敗しても融資の返済義務は途上国の人にある。

その代価は大きい。環境は破壊され政治プロセスは腐敗し、急激な変化に国の
文化は適応できない。社会が崩壊し、失業者の暴動や民族の衝突を生む。

問題はグローバリゼーションを支配する3つの主要な機関、IMF、世界銀行、
WTOである。

「市場は有効に機能しない」という信念の元に設立されたこれらの機関も、今
ではすっかり市場主義者だ。

きっかけは1980年代レーガンとサッチャーによる市場主義の布教だ。これら
がその伝道機関だった。融資と補助金が必要な国々に見返りとして押し付けた。

国際経済機関の代表IMFは、途上国で経済危機が起きると国民への影響を考慮
せず、時代遅れで不適切な解決策を採用してきた。

どんな痛みを伴っても「それは市場経済に移行するために必要な痛みだ」と決
め付ける。途上国の人は援助打ち切りが怖いので従うしかない。

こうした過ちが起きるのは、経済機関を支配するのが世界有数の富裕な工業国
だからだ。当然政策には、その国の商業的、金融的利害が反映される。

また、各国を代表するのはIMFでは蔵相と中央銀行総裁、WTOでは貿易相だ。
当然、各大臣は国内ビジネス界や金融界とつながっている。

そして、彼らはより多くの貿易障壁と補助金の維持を望んでいる連中なのだ。

【5】

そろそろ国際経済のルールを変える時期である。イデオロギー重視はやめ「何
が機能するか」のほうに目を向けるべきだ。

そのためには、国際レベルの決定を、誰のために、どのようにするのかを考え
る必要がある。

政策立案のプロセスが適切に公正に進められ、それに影響を受けるすべての国
が発言権を持てば、それが新しいグローバル経済を生み出すはずだ。

そうすれば、成長はより持続的になる。しかも成長の恩恵はさらに公平に共有
されるようになるはずだ。

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■■          今週のコメント

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今週は、2001年のノーベル経済学賞の受賞者であるスティグリッツが、アメリ
カ・IMF主導のグローバリズムに異議を唱えた衝撃的な1冊を紹介しました。

紹介するタイミングとしては、カナナスキス・サミットが開催された週であり、
その中でアフリカ支援に関する行動計画が決定するなど、我ながらばっちりだ
なあと思っています。

著者は、1993年にクリントン大統領の経済諮問委員として、また97年からは
世界銀行のチーフ・エコノミスト兼上級副総裁として働いていた人です。

本書は彼が世銀時代にいくつもの発展途上国を訪れ、そこで目の当たりにした
グローバリズムの現実をもとに書かれています。

彼は、エチオピアでIMFの驚くべき政治と算術の世界を目の当たりにしました。
そこで決定される政策は、資金を出している市民や、直接影響を受ける途上国
の人々ではなく、欧米、ことにアメリカの都合で決まります。

やり方は、救済の対象となる国の主権をおびやかすやり方です。途上国には市
場開放を迫り、アメリカの都合の悪い産業については保護貿易を貫きます。

本書では、こうしたIMFの指導のせいで貧困が拡大した例、また東アジア危機、
ロシアの失敗、アルゼンチンの破綻などを紹介します。

逆にIMFと距離を置くことで成功したボツワナや中国の例なども挙げています。
そしてそれはまさにIMFの政策の不手際であることを指摘します。

私は、本書を読んで少し古いのですが、過去に朝日新聞の「天声人語」で取り
上げらた「世界がもし100人の村だったら」の一文を思い出しました。

これは政治学者の故ドネラ・メドウズ著のエッセイが源流なのですがそこに次
のような一文があります。

(もしも世界が100人の村だったら)"すべての富のうち59%を6人が持って
います。それはみんなアメリカ人です。39%を74人が、残りの2%を20人が
分け合っています"

もちろん、グローバリズムそのものが悪いわけではありません。それは貧困を
無くし、世界を幸せにする力を持っています。

要は、それを誰が、何のためにやるのか、そして、どうやるかの問題です。本
書の最終章では、それに対する著者の提言があります。

いろいろと考えさせられる一冊になることは間違いないでしょう。雨模様の週
末の一冊としていかがでしょう。
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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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