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2002/09/13
ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング

ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング

ブランドで競争を勝ち抜くには、顧客との間に豊かな文脈を築くことです。ブランドの深遠なメッセージを伝える文脈に着目し、戦略シナリオを構築する新たなモデルを事例と共に紹介します。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数10340部>━━
=今週の選書=
■ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング
■阿久津 聡 (著), 石田 茂 (著)
■ダイヤモンド社
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■■           今週のサマリー

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ブランドで競争を勝ち抜くには、顧客との間に豊かな文脈を築くことです。ブ
ランドの深遠なメッセージを伝える文脈に着目し、戦略シナリオを構築する新
たなモデルを事例と共に紹介します。

【1】

これまでブランドを構築しようとしてきたのは、衣料や食品、市販医薬品など
を扱う、いわゆる消費財メーカーであった。

ところが最近、意外な企業がブランド経営を標榜するようになっている。例え
ば企業を顧客にするB2B企業や、高い技術力を売りにする技術系の企業だ。

なぜか。激しい価格競争を回避するためだ。そのためにはB2B企業でさえブラン
ドを構築し、ロイヤリティ価格を維持する必要がある。

しかしブランドは簡単には構築できない。これまでブランド経営で知られる会
社でも、理論や哲学があるところは少ない。手探りでやっているのが実情だ。

そうした企業にとって、インテルのブランディングは参考になる。彼らは「イ
ンテル入ってる?」のコピーでブランドになった。結果、今でも強気の価格で
製品を販売している。

【2】

ブランドに対する顧客のイメージや連想を、企業が意図する方向に導くことが
できれば、企業はブランドの価値を意図的に生み出すことができる。

ブランドがあれば、顧客はそこからイメージや連想を広げていく。そのため商品
の目に見えない部分を伝えられるようになる。それが顧客の行動に影響を与えて
いく。

情報が氾濫した現在、企業が顧客に自社に対する好しいイメージを持ってもらう
ことは難い。また高度な技術は顧客にその価値が伝わりにくい。だからブランド
が重要だ。

しかし、企業側から顧客への働きかけには限界がある。だから、ブランド価値を
高めるために、企業はブランドと顧客を取巻く関係者すべてに働きかけなければ
ならない。

【3】

「ブランド」とは、ある商品を見聞したり、使ったりした人たちの、商品に関
する知識、情報を蓄える「器」である。そうして次第にブランドそれ自身が価
値あるものになっていくのだ。

だから、企業が「ブランドの価値を高めよう」と考えるなら、そのブランドに、
効果的にその知識や情報を蓄えさせてやればよい。

ここで紹介するコンテクスト・ブランディングとは、ブランドに豊かな知識や
情報などの文脈を効果的に持たせる方法である。

コンテクスト、つまり文脈に着目したブランディングである。文脈とは、その
ブランドを取り巻く"背景"や"筋道"のことである。

ブランドの価値を生むのはこの文脈である。だから、ここに注目する。これに
よりブランドを構築し、価値を高め、有効に活用することができるようになる。

【4】

ブランドは、それ自体が価値を持つ資産である。しかし、土地や工場と違い、
直接管理ができない特殊な資産である。

ブランドには、次の4つの特殊な性質がある。
・無形性
・間接性
・多層性
・関係性

この4つの特殊な性質のために、我々は、
・形の見える商品にばかり関心が向いてしまう。
・自分の感覚でなく顧客の感覚で、価値を判断する。
・複雑な要因が絡み合って、価値が生み出される。

こうした特殊な性質のために、企業は「ブランドをどう育て、活用すればいいの
か」わからずにいる。やむを得ず次のような対策をとっている。
・とにかく商品をよくしようとする
・まず知名度をあげようとする
・ブランディングを外注してしまう
・ブランドがなくても売れる営業を育てる

そして「この厳しい時代にこんなことをやっていていいのか」と不安を感じてい
る。

【5】

「ブランドの特殊性」に企業が対応するための手段が、コンテクスト・ブランディ
ングである。

これは顧客が持つブランドに関する『コンテクスト』(知識や情報)をデザインす
ることで企業がのぞむ『ブランド・アイデンティティ』を、顧客の『ブランド・イ
メージ』にすることを目指す。

企業は顧客に働きかけるしかない。だからブランディングにコミュニケーションは
不可欠だ。しかし人がブランドをどう受け止めるかは、人それぞれ違う。

だから企業が思ったとおりのイメージを伝えること難しい。そこでコミュニケーシ
ョンをデザインする。

顧客がブランドを判断する際、判断の材料にする知識、情報とその周辺に散在する
ブランド知識に配慮してコミュニケーションをデザインするのだ。こうして企業は
ブランドの特殊性を克服することができるのである。


▼本書の詳細・買いたい人は、以下をご覧ください。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478374007/tachiyomi-22

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■■   選書コメント  
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本書は、コンテクストを使って、従来のブランディングの難しさを解決しよう
とします。例えば、ブランドは目に見えず、つかみどころのないという特殊性
をもっていますが、それをコンテクストで表現すれば、目に見えるものになり、
扱うことができるといいます。

確かに、ブランドと言うと捕らえにくいものです。またその価値は直接目に見
えません。しかしその価値は、企業にとっては絶大です。それは私のクライア
ントである経営者たちが口をそろえて述べるところです。

私のクライアントは、中小企業ですが、そういう企業にとって、ブランドは、
のどから手が出るくらい欲しいものです。それがないという理由で、価格交渉
で煮え湯を飲まされ、売り場で不利な扱いをうけたりすることはたびたびです。

しかし経営者も社員も「それは歴史や規模がなせる業、自分たちには望むべく
もないもの、どうしようもないもの」と考えています。実際、それは企業がお
金で買えない、数少ない資産の一つです。

結局、地道に経営を続け、いつか認めてもらうしかないもの、と感じています。
そのために、地元のお祭りに寄付をしたり、お客様サークルをつくったりと、
涙ぐましい努力をしています。

しかし、それとて戦略的に行わなければ、意味がないばかりか、逆効果を生む
ことさえあるでしょう。それは本書にあるとおりです。

一方、いわゆるブランド企業と呼ばれる企業には、その価値のありがたさに気
づいていない会社も多いようです。先達の築いたブランドに胡坐をかいて、努
力を怠る社員もたくさんいます。

しかしそれを高める努力をしなければ、やがて色あせていきます。それどころ
か、たった一人の社員の、たった一回の不始末で、あっという間に崩れてしま
うほど脆いものです。それは昨今の企業の不祥事を見てもわかるとおりです。

本書は、こうしたつかみ所がないが、すさまじいパワーを持つブランドを、企
業がどうすれば築けるのか、そしてそれをどうすれば維持でき、効果的に活用
できるのかを知るために、ブランドの仕組みを解明しようとする意欲作です。

難しいところはありますが、ブランドがないと嘆く企業の経営者・社員とブラ
ンドに胡坐をかくブランド企業の経営者・社員に読んでもらいたい一冊です。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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