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2002/10/25
勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来

勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来

われわれは、より長く、一生懸命に働いて、豊かになったのになぜ幸せになれないのでしょうか?
「生計を立てること」と「人生を豊かにすること」その両者を両立
することは、ニューエコノミーの到来でますます難しくなった。
ニューエコノミーのすばらしさは散々語られてきた。だが、それが
人間としての我々にどれだけ意味があるのか?そして我々はどんな
人生を送りたいのか?その議論はほとんどされていない。


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■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数10701部>━━
=今週の選書=
■勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来
■東洋経済新報社
■ロバート・B. ライシュ、清家 篤 (訳)
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■■  今週のサマリー

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われわれは、より長く、一生懸命に働いて、豊かになったのになぜ
幸せになれないのでしょうか?

【1】

「生計を立てること」と「人生を豊かにすること」その両者を両立
することは、ニューエコノミーの到来でますます難しくなった。

ニューエコノミーのすばらしさは散々語られてきた。だが、それが
人間としての我々にどれだけ意味があるのか?そして我々はどんな
人生を送りたいのか?その議論はほとんどされていない。

繁栄の時代と言われながら、家族は崩壊し、コミュニティは分解、
自分自身の誠実性を守ることすら難しくなっている。これは新しい
経済のもたらす莫大な恩恵と比べても小さなものではない。

労働者と個人の生活のバランスをとることは、もはや個人の問題で
はない。仕事やその報酬がどうあるべきか、つまり社会に対する問
いなのだ。

【2】

ニューエコノミーは、我々に大量かつ簡単に経済的機会を享受する
手段を与えてくれた。これは申し分のないことだ。しかし忘れては
ならない。我々は買い手であると同時に売り手でもあるのだ。

買い手としての私たちが便利になるということは、売り手としての
私たちがますます激しく戦わねばならないことを意味している。

大事なことはニューエコノミーのもたらす恩恵と、それにより被る
損失はコインの表裏であるということだ。これが加速するほど利益
も損失も大きくなるのだ。

技術革新が買い手により多くの選択肢を与え、買い手を喜ばせよう
とすればするほど、売り手である我々はより不確実、不安定になる。
こうしてすべての人が収入も仕事も不安定で予測しにくくなった。

【3】

ニューエコノミーはコミュニティにも影響を与えている。今や我々
は自分のコミュニティを選べるようになった。しかしそれは稼ぎで
選別される。どこに住んでいるかはいくら稼いでいるかと同義だ。

この選別メカニズムが、貧しいものの費用負担を前より大きくした。
学校、大学、育児、医療、保険、税金、投資収益などが富の大きさ
で決まる。貧しいものほど不利だ。

誰もこうした結果を望んだわけではない。各人が自分や愛する者の
ために最善を尽くした結果だ。また富める者が貧しい者に慈悲をな
くしたわけでもない。心から助けたいと望み寄付や活動もしている。

しかし選別のメカニズムが行動を難しくしている。富める者と貧し
い者の暮らしの統合は、今、自分たちが享受している最高の近隣社
会、学校、医療と保育、人脈などを犠牲にすることだからだ。もは
や個人の徳義だけで、この問題は正せない。

【4】

我々は、現在、今3つの視点からニューエコノミーを見ている。

まず、そのすばらしさを熱狂的に語る視点だ。それが我々の生活を
豊かにしてくれたことは紛れも無い事実で称賛するのは当然だ。

もう一つは解き放たれた資本主義の危険性と略奪性を語る視点だ。
世界企業や国際金融資本の力と貪欲さ、移民、外国人、少数民族の
侵食など、ニューエコノミーがもたらした混乱を考えれば、それを
恐れ、不当な負担を負わされたと感じるのも当然だ。

そういう人たちは激動の原因を企業、グローバリゼーション、国際
的資本の流れ、移民の流入、少数民族と考える。しかし本質はすべ
ての人の取引が容易になったことによる競争の激化が原因だ。

最後はバランスよい生活を得ることの難しさを語る視点だ。我々は
懸命に働き、金持ちを目指すほど、自分の家族、友情、コミュニテ
ィ、そして自分の心がどうかなってしまうのではないか不安になる。

我々は、このようにニューエコノミーという一つの事象に異なった
視点で反応し、そのつながりを見ないでいる。

【5】

今こそ、我々はつながりに眼を向けるべき時だ。そして経済ダイナ
ミズムと社会的平穏のどんな組み合わせを望むのか、さらに両社の
バランスを得るためにどんな選択をすべきか議論すべきだ。

求めるのは純資産や国民総生産ではなく精神基盤の安定、人間関係
の豊かさ、家族の健全性、コミュニティの品性などのはずだ。

今こそニューエコノミーを整理するべきだ。これにより市場を組み
立て、家族やコミュニティもそれに応じて機能させる。個人はその
中でバランスをとる。こうした決定を通して、社会を再定義する。

我々は現在の潮流や選別メカニズムの奴隷ではない。本当に望むな
ら経済的有用性を超えて、市民としての相互義務を果たすことが出
来る。またそのような形の仕組みを作ろうと主張することもできる。

あとはこれを皆で行うのか暗闇で一人取り組むのかということだ。

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■■  今週のコメント  
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本書はニューエコノミーの到来で、米国がどう変質したのか反省を
こめて分析します。著者はクリントン政権で労働長官を務め、完全
雇用を提唱したロバート・ライシュ氏です。

ニューエコノミーで豊かになったのは、ほんの一握りの上層の人、
大半は長時間労働のサイクルにのみこまれました。アメリカ人の労
働時間はヨーロッパ人よりも年間350時間も多くなり、個人の生活
は傷つき、コミュニティは崩壊しました。

もちろん著者が見ているのはアメリカの社会です。ですがそのアメ
リカをお手本にしてきたのが日本ですから、遅かれ早かれ日本の行
く末ともいえます。

すでに似たような兆候は現れています。少し前から企業を「勝ち組」
「負け組」と分けてとらえるようになりました。最近では、この言
葉は今では個人に使われます。「勝ち組サラリーマン、負け組みサラ
リーマン」といった見出しを電車の中吊りなどでよく見かけます。

均質と言われてきた日本でも2極化を意識するようになったのでし
ょう。「金持ち父さん貧乏父さん」という本が売れるのはその象徴で
はないでしょうか。

現に失業率が高止まりして、路頭に迷う人がたくさんいる一方、年
収数千万円というサラリーマンがいます。強きにやさしく、弱きに
厳しい構造改革もこうした二極化に拍車をかけそうです。

そして社会がそれを当然のこととして受け入れはじめている気がし
ます。

本書には、反面教師アメリカが描かれていますが、では一体日本は
どこに向かっていけばいいのでしょうか?

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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