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2003/02/07
非連続の時代

非連続の時代

「社長本はだめだ」と言いながらまた紹介してしまいました。以前紹介したベストセラー「ONとOFF」に続き、ソニー会長兼CEO出井伸之氏が贈る1冊です。
本書はスピーチ集です。著者が社長に就任した1995年から2002年までのスピーチをまとめたものです。その独自の思想や経営哲学、ソニーが描く21世紀のビジョンを窺い知れる内容になっています。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━< 読者数11730部 >━━
=今週の選書=
■非連続の時代
■出井 伸之 (著)
■新潮社
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▼本書の詳細、お買い求めは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104539023/tachiyomi-22
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■■  選書サマリー

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【1】

21世紀の幕開けに世界は3つの激震に見舞われた。ITバブルの崩
壊、一連の粉飾決算、そして9・11のテロ事件だ。他にもこうし
たさまざまな問題が複合的に絡み合って起こる事件が各所で起きた。

これは国家、企業、そして個人まで含んだあらゆるレベルにおいて、
20世紀に効率的に機能してきた仕組みや常識が限界に来ているこ
とを示している。

例えば、エンロンなどの粉飾決算では、これまで盲目的に信じられ
てきたアメリカ発のコーポレート・ガバナンスの「グローバル・ス
タンダード」に疑問符がついた。

本来、コーポレート・ガバナンスはその国の資本主義の発達の歴史
を反映すべきものだ。にもかかわらず各国がアメリカ発のコーポレ
ートガバナンスを絶対的なものととらえ、盲目的に従おうとした。

ところがそのアメリカで今回のような不祥事が起きた。これにより
これまでの常識が覆ってしまった。

【2】

こうしたコーポレート・ガバナンスの問題だけでなく、今後は様々
な問題に対して、掘り下げてきちんと認識する必要がある。

特に有形のものを生産したり、取引したりする、モノベースの工業
化社会を前提にした仕組みは、有形のものを介在しない、知識ベー
スのビジネスには適さなくなっていることを知るべきだ。

一定の条件下で整ったものは、条件が変われば機能しない。だから
モノづくり中心の工業化社会を基盤とするものが機能しなくなって
くるのは当然の帰結なのだ。

エンロンやワールドコムの例を見ても、工業化社会から知識社会へ
の移行の中で、モノを生産しない企業が粉飾決算の温床となってい
たという見方もできる。

【3】

ITバブルの崩壊、一連の粉飾決算、そして911のテロ事件とい
った出来事の原因を解きほぐし、解決することの困難さを目の当た
りにするとき、我々は新たな混迷の時代にいることを実感する。

だがいまこそ我々はこれらの問題の本質をとらえ、そこから未来の
「あるべき姿」を描き、その実現に向けて実行していく必要がある。

工業化社会から知識社会への転換期において、国家、企業、個人の
あらゆるレベルにおいて変革が求められている。今はまだはっきり
とした形が見えないが、危機は確実に迫り来ている。

その危機を定義し、進むべき方向性、つまり明確なビジョンを示す
こと、そして具体的なアクションへとつなげていくことこそ、混迷
の時代を生きる我々にとって最も重要なことなのだ。

【4】

正確な時代認識と、それに基づくビジョンを打ち立てることは容易
なことではない。解があるわけでもないし、試行錯誤の繰り返しだ。

ただ一ついえることは「内向きの発想は捨てよ」ということだ。自
分自身、現場を回り、社外、国外に出ることに努めてきた。多くの
視点から、多くの情報を得れば包括的な時代認識が可能になる。

日本でも大企業の不祥事が頻発している。これに対してガバナンス
の仕組みが各所で議論されているがそれ以前に考えることがある。

それは、そうした企業が、社内や業界団体にばかり目を向け、内向
きの思考を重ねてきたということだ。不祥事はその結果だ。

業界の外で起きている環境変化、時代の流れと言う現実から目をそ
むけ、変化を嫌っていては変化の時代に生き残ることはできない。

【5】

この混迷の時代に直面した我々はどうすればいいのか?ここでは2
人の人間が2手に分かれてすすまなければならない。一人は混迷の
溝を埋める。もう一人は将来の改革を準備する。

つまり連続的な改革と非連続的な改革を同時にやら無ければならな
い。例えば利益を上げることと、長期的なビジョンの実現に向けた
取り組みの両方を、同時にならなければならないのだ。

ローマ時代には国家も組織も、成功したのと同じ要因で衰退したそ
うだ。これは今の日本という国家や企業にも当てはまる。

つまり今の日本の苦しみは、日本の戦後の成功が足かせになってい
るのだ。それは地方に利益誘導する政治、日本列島改造論、行政指
導、護送船団方式、終身雇用制、特殊法人だ。

戦後の日本の成功はこうしたやり方に負うところが多い。だがこう
したやり方が急にだめになった。これから過去のやり方をどう否定
し、どう新しいことをやるのか、それが我々の任務だ。

▼本書のお買い求めは、

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4761260564/tachiyomi-22

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■■  選書コメント  
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「社長本はだめだ」と言いながらまた紹介してしまいました。以前
紹介したベストセラー「ONとOFF」に続き、ソニー会長兼CEO出井
伸之氏が贈る1冊です。

本書はスピーチ集です。著者が社長に就任した1995年から2002年
までのスピーチをまとめたものです。その独自の思想や経営哲学、
ソニーが描く21世紀のビジョンを窺い知れる内容になっています。

世界企業のトップの現状認識とそこから未来へを描き出すところは、
うーん、さすがです。

タイトルにある「非連続の時代」と言うのは「これからの時代は過
去の延長線上にはありませんよ」ということを意味しています。

ただ、もちろん過去からの延長線上にも粛々と取り組んでいく必要
はあります。「足元を固めることも忘れちゃいけません」というわけ
です。

これまでと違い「足元を固めてから、さて長期の取り組み」という
動きでは、もはや変化のスピードについていけないということです。

だから今後は、足元を固める「連続的な改革」と「長期ビジョンに
たった非連続的な改革」を同時にやらなくてはいけない、これが著
者の時代認識です。

例えるならば、溝に橋をかけてから、車を作りはじめたのでは遅い
うことです。橋を作ることと車を作ることは一緒にやって、橋が架
かったら、すぐに車に乗って渡らなければ競争に勝てないよという
わけです。

昨今、リストラという「連続的な改革」を進める会社は多いようで
すが、併せて次世代に向けた人材育成や、研究開発を進めなければ、
足元の危機は乗り切れても、いずれ競争に負けて消えることになる
のです。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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