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2003/04/11
質問する力

質問する力

最近、質問が注目のテーマです。書店に行けば、タイトルに「質問」の2文字を冠した本がいくつか並んでいます。ベストセラー「会議革命」の斎藤孝氏も「質問力」という本を出しました。
その多くが、対話における質問の効用や、質問の仕方を説いた本です。というわけで、そのタイトルから、本書もこうした本の類書と思われるむきもあるかもしれません。しかし違います。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━< 読者数15004部 >━━
=今週の選書=
■質問する力
■大前 研一 (著)
■文藝春秋
▼本書の詳細、お買い求めは、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163594809/tachiyomi-22
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■■ 選書サマリー

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【1】

今の日本人には「質問する力」が足りない。政府、マスコミ、評論
家の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭で考え、疑問があればとこ
とん追求し、納得してから決断する力が重要だ。

例えば1991年から96年ぐらいまでにマンションを買い、苦しんで
いる人が推定約700万人いる。

当時、政府や不動産業界、評論家は「今、不動産は底値だ」と言っ
ていた。しかしその後地価はその通りにはならず、ついにバブル前
の水準に戻ってしまった。

もし、彼らに質問する力があれば、政府や業界に騙されることなく、
3000万円近い節約ができたはずだ。

【2】

地価がまだまだ下がることは容易に予想できたことだ。当時まだバ
ブルの後始末が済んでおらず、都心から50キロ圏内だけで37万ヘ
クタールの土地が放出されるという試算ができたのだ。

不動産の供給が増えれば、価格は下がる。つまり一戸建てもマンシ
ョンもさらに安くなることは95年には確定的なっていたのだ。

政府も業界もそんなことは分かっていた。だが彼らは塩漬けになっ
て、価格がつかなくなった土地を流動化させたかった。

このとき考えたのが、最後の借り手、国民だった。住宅需要を喚起
できれば、しかもできるだけ高値で販売できれば、もう1度時計の針
を逆に戻せると考えたのだ。

【3】

土地の値段を下げずに国民に買わせれば、不動産会社もゼネコン、
銀行も、一息つける。そうすれば景気は回復すると考えた。結局、
国民を犠牲にしてゼネコンや銀行を救済したかったのだ。

この、国の基本方針、すなわち国民ではなく銀行やゼネコン救済す
るという方針、国民は経済政策の手段に過ぎないという考え方は、
今も公的資金や債権放棄という形で全く変わっていない。

だから行政、銀行と組んで大々的キャンペーンを張り、国民の持ち
家購入を後押ししたのだ。だが、これは決定的に誤った判断だった。

結果的に国民の多くが家を買い、金が市場に流れたにも拘わらず、
景気は回復せず、土地はさらに下がり、経済は縮小した。そして無
理をしてローンを借りた人は自己破産した。

【4】

もし数年前に家を買って損をした人たちが、当時こんな質問してい
たら、随分状況は変わっていたはずだ。「住宅関連の情報誌はどこ
がスポンサーなのだろう?」

そうすればスポンサーの大半が、不動産業界であることに気付き、
なぜ不動産を買わせるような記事を載せたのかが分かったはずだ。

もっと鋭い人はこういう質問発していただろう。「なぜ政府は住宅金
融公庫の融資枠を拡大したのだろう?なぜゆとり返済などというロ
ーンを作ったのだろう?」

そうすれば、当時政府関係者が国会答弁などで「住宅需要を喚起し、
景気を浮揚させる」という発言をしていたことに気がついたはずだ。

ローン返済のために35年も勤労させられる前に、なぜこういう分析
をしないのか、不思議でならない。

【5】

家を買うことだけでなく、結婚、転職、子供の教育といった人生の
大きな意思決定は、これからは自分で決めなければならない。世間
の常識とか、回りの言うことなどは気にしてはいけない。

もはや、かつてのように政府を信じて従っていればよかった時代で
はない。政府すら国民をだますからだ。政府は世界を動かすルール
が大きく変わったのに、その対応に遅れた。そのため国民をだまし
て食いつないでいる状態だ。

今、世界は暗やみの中にある。国も、企業も、そして個人も、道な
き道を自ら見つけていかなければならない時代なのだ。

そのために質問する力を身につけ、それを駆使しなければならない。
「なぜだろう」と疑問を持ち、質問をしてみる。こうして自ら考え、
自ら決めていくことが極めて重要なのだ。

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■■選書コメント  
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最近、質問が注目のテーマです。書店に行けば、タイトルに「質問」
の2文字を冠した本がいくつか並んでいます。ベストセラー「会議
革命」の斎藤孝氏も「質問力」という本を出しました。

その多くが、対話における質問の効用や、質問の仕方を説いた本で
す。というわけで、そのタイトルから、本書もこうした本の類書と
思われるむきもあるかもしれません。しかし違います。

本書のテーマは「前提条件を疑う」ことです。質問を問う対象は自
分です。世間が「当たり前だ、常識だ」と思って、ロクに考えもし
ないことを「本当にそうか?」と自問し、考えてみろと提起します。

皆さん自身も、例えば、自分の人生設計において、

・退職まで今の会社にいる
・自分はずっと健康だ
・預金が元本割れを起こすことはない

などという前提をもとに設計しているはずです。でもそんなもの、
どうなるか分かりません。今の延長線上というだけで、何の根拠も
ないことです。

と言うと暗くなりますが、質問することで、ポジティブな生き方を
引き出すことができます。

例えば、昨今のマスコミの論調には「サラリーマン受難の時代」と
いったネガティブな論調が目につきます。ただそこには「サラリー
マンとは、会社から与えられる仕事を受け身でこなし、給料に100%
依存する存在だ」という前提があります。

これに対して「本当にそうか?」と疑うことが可能です。そして、

・社会から評価される抜群の成果を上げ、破格の条件を引き出す
・サラリーマン法人を作り、今の会社の仕事を請ける
・才能を生かした副業で、むしろ今の仕事を副業にしてしまう
・会社にいながら、好きなことで起業してしまう

など、前提条件を覆すアイデアだって出てくるのです。

このように、質問することは、厳しい時代を受け身で耐えしのぐの
でなく、能動的に対峙するための道具になるのです。

▼関連図書

「質問力」(斎藤孝)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480816267/tachiyomi-22

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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