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2003/04/18
強い会社をつくる失敗学

強い会社をつくる失敗学

人は、何故失敗するのか、その失敗はどうすれば防げるのか、そこから何を学ぶべきかといった「失敗」の周辺を学ぶ失敗学は、将来の失敗を予見し、防ぐ意味で大いに役立ちます。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━< 読者数15004部 >━━
=今週の選書=
■強い会社をつくる失敗学
■畑村 洋太郎 (著)
■日本実業出版社
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→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534035470/tachiyomi-22
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■■ 選書サマリー

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【1】

牛丼の吉野家もかつて倒産したことがあるのをご存じだろうか?業
績不振による資金繰りの悪化で倒産し、会社更生法の適用を申請し
たのだ。もう20年以上前のことだ。

築地の一牛丼屋だった吉野家は、1970年代チェーン展開を開始、76
年には50店舗、翌77年に100店舗、78年には200店舗と倍々ゲ
ームを続けた、

当時は、外食産業の株式公開が続いた時期だ。金融機関は吉野家に
金を貸そうと日参し、マスコミは時代の寵児とはやした。そんな優
良成長企業が、200店突破祝賀会からわずか2年で倒産した。

彼らはコストのために味を落とし、さらに値上げまでした。結果、
客足が遠のき、あっという間に赤字がふくらんだ。そこに他店舗展
開から来る資金需要で急速に資金繰りが悪化、銀行が見限った。

【2】

ただし再建も早かった。倒産した年から黒字転換、更生計画が認め
られた4年後に債務完済、その3年後に株式を公開した。まさにV
字回復だ。

吉野家は再建のために不採算店を閉鎖し、成長優先の拡大路線を転
換したわけだが、興味深いのは、その失敗体験をデータベース化し、
今も大切にしていることだ。

彼らは失敗の条件については100%学習したと言う。失敗した要素
を集約し、今後、失敗の要素が揃ったことは一切やらないと決めた
そうだ。

このように、失敗を積極的に研究すれば、次の失敗を避けることが
できる。そして強い会社に生まれ変わる可能性が大きくなるのだ。

【3】

多くの企業では失敗を避けようとマニュアルを作る。会社によって
は、べからず集を作る。しかしそのどちらも失敗防止には不十分だ。

なぜなら、マニュアルは、いろいろな指示が書いてあり、その通り
にやれば失敗しないが、指示通りにやらないとどうなるか書いてい
いない。そのため予想外の事態に全く対処できないのだ。

また社員は「マニュアル通りにやればいい」と考え、ものを考えな
くなってしまう。

べからず集は「こうしたらいけない」ということが書いてある。だ
が、では「どうすればいいのか」が書いていいない。

【4】

必要なのは、この両方が詰まった失敗知識だ。つまり、
・どう失敗したか
・どうして失敗したか
・どうすれば避けられるか

が整理して描かれていることが必要なのだ。

これがあって初めて、失敗を避け、成功へと至ることができる。い
わば失敗地図だ。これがある会社は強い。

だから、失敗したら、その体験からどうすれば次の失敗を避け、成
功にたどり着けるのかという知識が身に付ければいいのだ。吉野家
はそういう会社になったから、強い会社として再生したのだ。

【5】

もうひとつ吉野家から学ぶことがある。それは成長企業も挫折する、
あるいは成長企業ほど挫折しやすいということだ。つまり失敗学は
創業間近で経営基盤がぜい弱なベンチャー企業にこそ必要なのだ。

今でも有望なベンチャー企業の倒産が続出している。本来なら強い
会社として日本経済に活力をもたらしたはずだが、経営不振に陥り、
挫折したのだ。その失敗経験こそ本当に貴重なものなのだ。

日本は、経済の舞台での入れ替わりをもっと大切にすべきだ。この
入れ替わりがスムーズに行われることが経済を活性化させる。

ところが、日本では既存の企業や大企業を残すことに力が注がれ、
新陳代謝を行う仕組み作りが遅れている。それが現在の日本の苦し
みの大きな原因だ。

多くの先駆者の残した失敗という財産を、もっと活用する方策を提
示すべきだ。失敗の構造を明らかにし、危険地帯を避けるための地
図が作れれば、本当の強い企業になるための武器になるはずだ。

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■■選書コメント  
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失敗学の第一人者が贈る「失敗学シリーズ」の最新刊です。

人は、何故失敗するのか、その失敗はどうすれば防げるのか、そこ
から何を学ぶべきかといった「失敗」の周辺を学ぶ失敗学は、将来
の失敗を予見し、防ぐ意味で大いに役立ちます。

当たり前ですが、失敗しなければ成功はあり得ません。私は独立開
業してから、特にそれを感じるようになりました。

会社に勤めている間は、投資は不要でした。自分の時間を会社に提
供すれば、一定のリターンがあるからです。リターンが保証されて
いる以上、これは投資ではありません。

ところが起業するとわずかなお金でも、自分の時間かお金を投資し
なければ得られません。当然、投資には失敗するリスクを伴います。

投資に失敗すれば、投じた時間もお金は戻ってきません。独立開業
した当時は、どうもこの感覚になじめませんでした。

この感覚に慣れると、投資マインドが働くようになります。つまり、
お金も時間も使う前に「これは投資か?それとも単なる消費か?」
と意識するようになります。そして消費は極力控えます。

投資のコツは、自分のとれるリスクの許容範囲を知ることです。失
敗したら再起不能になるようなカケは決してしてはいけませんが、
リスクが許容範囲なら、どんどん投資しなければ成功もありません。

そして大事なこと、それが失敗とのつきあい方です。特に失敗した
とき、そこから何を学ぶかです。

失敗したら「なぜ失敗したのか」そして「次に失敗しないためには
どうしたらいいのか」これを知ることが大事なのです。こうするこ
とで、次にとれるリスクの許容範囲が大きくなっていきます。

一番良くないのは、失敗を他の人やものに責任転嫁することです。
「あいつが言ったからそのとおりにやったら失敗した」
「あのときは寝不足だったから...」

つい言ってしまいそうです。でもこれで済ますと貴重な学習の機会
を逸します。そしてまた同じ失敗を繰り返してしまいます。

▼関連図書

『失敗学のすすめ』(畑村洋太郎/講談社)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406210346X/tachiyomi-22

『社長のための失敗学』(畑村洋太郎/日本実業出版社)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534033907/tachiyomi-22

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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