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2005/02/25
よい上司ほど部下をダメにする

よい上司ほど部下をダメにする

■ジャン=フランソワ・マンゾーニ ジャン=ルイ・バルスー


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 28,900部>━
■よい上司ほど部下をダメにする
■ジャン=フランソワ・マンゾーニ ジャン=ルイ・バルスー
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■■  選書サマリー

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社員を次々にスポイルしているのは、他ならぬ上司かも知れません。

【1】

仕事で失敗する部下、並の成績しかあげられない部下がいる。上司
は「これは自分ではなく部下が悪いのだ」と考えている。問題は部
下にあり、責任を負うのは部下自身というわけだ。

しかし、本当にそうだろか。もちろん、そういう場合もある。知識
やスキルが足りないために与えられた仕事がこなせないとか、本当
にやる気がない場合もあるだろう。

しかし、私たちの研究によれば、部下の成績が伸び悩む原因の大半
は上司にある。上司は無意識に一部の部下に「できないヤツ」とい
うレッテルを貼り、その部下を失敗に導く仕組みを作り出している
ことが少なくない。

私たちはこの現象を「失敗おぜん立て症候群」と呼んでいる。この
症候群が始まると、有能なのに凡庸で仕事の「できない部下」だと
誤解されてしまう社員が続出する。彼らはやがて本当にできなくな
ってしまう。結果、会社を辞めたり、辞めさせられたりしてしまう。

【2】

上司は、部下がのびのびと、そしてやりがいを感じながら働ける環
境を作る責任を負っている。同時に、業務目標を達成できなければ
詰め腹を切らされるリスクも抱えている。

大半の上司はこのバランスを「一部の部下」についてはうまく取っ
ている。しかし「残りの部下」については、それができずに終わっ
ている。

私たちの調査では、上司から「できる」とみなされた部下からは、
「上司はうまくバランスを取っている」とコメントが聞かれた。と
ころが「できない」とみなされた部下からは、同じ上司についてま
ったく異なるコメントが出た。

つまり上司は「できない」部下を相手にすると、パランスをうまく
取れなくなるのだ。そして、この人間関係の溝は少しずつ、外から
力を加えられなくてもどんどん広がっていくことを突き止めた。

【3】

上司がちょっとした出来事をきっかけに不安を覚え、その部下は平
均的な成績を収められないかもしれないと思ったそのとき「失敗お
ぜん立て症候群」の歯車は回り始める。

上司は、まず部下に欠点があると考えるようになる。そしてそれを
カバーしようと、その部下に仕事を命じるときには手順を細かく指
導したり、進行状況を頻繁にチェックしたり、部下の意志決定に口
を出したりしようとする。これはよかれと思ってやっていることだ。

ところが、当の部下はそう受け取らない。信用していない証だと考
える。そしてほどなく仕事の手を抜くようになる。自分の考え方や
能力を疑い始め、独力で決断する意欲も失う。

こうした部下の反応を見た上司は口出しをさらに強める。部下は次
第にいらだってくる。必要最低限の仕事しかしなくなり、自己保全
にエネルギーを注ぎ込む。組織に貢献したいなどとは考えなくなる。

【4】

人間は、ひとたび「できない」というレッテルを貼られてしまうと、
たとえ有能でもレッテルのほうに自分をあわせてしまいがちだ。

また私達の研究では、症候群はあっという間に進行し、いったん進
行するとなかなか止められないことが明らかになっている。

さらに、上司は部下のレベルを最初に判定するとき、誤った認識に
基づいて判断してしまうことが少なくない。「失敗おぜん立て」と
いう表現を用いるのはこうした理由によるものだ。

「できない」というレッテルを貼られた部下の多くは、上司が態度
を改めたり適切なコーチングを施したり、能力に合ったポジション
に異動させることで、その成績を大幅に向上させることができると
私たちは考えている。

従業員には「潜在能力」があるとよく言われるが、どんな能力がど
の程度隠されているかは誰にもわからない。

一方、多くの上司が部下に対して「この部下の責任能力には限りが
ある」と考えていること、そして部下は次第にその見方にそった行
動を取るようになること、そのせいで部下は限られた成果しかあげ
られなくなるということは明らかだ。

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■■ 選書コメント  
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職場の人間関係は、大きな課題です。特に上司と部下の関係は永遠
のテーマです。だからこそ、上司とうまくやる法、部下を動かす法
といった類の本は、いつの時代も、世界中で刊行されてきました。

ただ、これまでの本の多くは「部下がダメだ」というところから始
まりました。その上で、そのダメ部下をどう更生させるか、どう動
かすかを論じていました。ほめるとか、鬼になるなど、その手法は
様々です。

一方、本書は「部下がダメなのは上司のせいだ」という前提に立ち
ます。上司が早々に部下にダメのレッテルを貼ってしまい、偏見に
基づいて接するから部下がダメになるといいます。たしかに上司に
ダメというレッテルを貼られて力を発揮できる人はいないでしょう。

当の上司は、レッテルを貼っても部下にはバレていないつもりでい
ます。でもその試みは失敗しています。部下の上司に対する関心は、
上司の部下に対するそれより数倍高いはずですから、無理もないと
ころです。

ここでいうダメな部下とは、一部の使い物にならない、本当に無能
な人のことではありません。平均以下の社員すべてを指します。つ
まり職場の半分の人、ほとんどの人が対象者です。

内容の中心は、上司が変わることですから、上司の立場にある人は
必読です。ただだからといって、部下の立場にある方は読んで得る
ところがないわけではありません。本書を読めば、悪いのは自分で
はないことがわかるからです。

上司にレッテルを貼られてしまい悩んでいる人は多いと思いますが、
本書を読めば、それが自分のせいではなく上司の偏見のせいだとい
うことがわかります。すると職場の自分に自信が持てるようになり、
きっと仕事に良い効果をもたらすと思います。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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