HOME > ビジネス選書&サマリー > 無料版・バックナンバー > 悪魔のマーケティング?タバコ産業が語った真実

ビジネス選書&サマリー

無料版・バックナンバー

解除ご登録

ビジネス選書&サマリーのバックナンバーをご覧いただけます。


f

2005/03/11
悪魔のマーケティング?タバコ産業が語った真実

悪魔のマーケティング?タバコ産業が語った真実

欧米のタバコ産業は、これまで驚くほど計画的に、そして組織ぐる
みで"ウソ"をついてきた。たとえば、タバコ産業は、タバコの広
告の目的はあくまで「ブランドのイメージ告知」にあり「タバコの
消費量増加は決して目的ではない」と主張してきた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 28,500部>━
■■悪魔のマーケティング?タバコ産業が語った真実
■■ASH(Action on Smoking and Health)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■  選書サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

次々と明らかになるタバコ産業の内部文書を収集し、1冊の本にま
とめたものです。

【1】

欧米のタバコ産業は、これまで驚くほど計画的に、そして組織ぐる
みで"ウソ"をついてきた。たとえば、タバコ産業は、タバコの広
告の目的はあくまで「ブランドのイメージ告知」にあり「タバコの
消費量増加は決して目的ではない」と主張してきた。

しかし、内部文書には「タバコの広告は、人々にタバコを吸うきっ
かけを与える不可欠の要素だ」と明記されている。タバコ産業は、
広告を通じて「大人っぽさ」「男っぽさ」「色っぽさ」「知的」と
いったタバコに対する偏った、ポジティブなイメージをひとびとに
植えつけ、彼らに喫煙を促してきたのだ。

20世紀初頭のタバコ広告では、タバコの害を堂々とごまかし、健康
に対する影響についても「心配ない」と言いふくめ、さらに特定の
製品については「タバコは健康に良い」とさえ言い切っていた。

たとえば、1942年のフィリップモリスの広告は「タバコの煙を吸っ
ても喉の刺激はありません」、1949年のキャメルの広告は「キャメ
ルの喫煙者で喉を痛めた人は誰ひとりいません」と謳っていた。

【2】

1950年代には、さらにインチキな広告まで打たれるようになった。
米国連邦取引委員会には、キャメルのCMで「タバコはエネルギー
を補給し、体力を回復させます」と言っていた記録が残っている。
また1952年、ケントの広告は「タバコは健康によい」と言っている。

米国連邦取引委員会は、「このCMは明らかに虚偽で、詐称行為と
いえる。タバコは体力を回復させる成分など含まない」とコメント
している。

1960年代になると、喫煙と肺がんの因果関係が注目されるようにな
る。これに対してタバコ産業は、広告を利用してタバコと健康への
害の因果関係を否定しようとした。

もちろん1950年代の終わりには、タバコ産業の科学者が、喫煙と肺
がんの因果関係を突き止めている。にもかかわらず、その後30年以
上も、タバコ会社のほとんどは発がん性を否定し続けたのだ。

【3】

1967年、ブラウン・アンド・ウィリアムソンのヴァイス・プレジデ
ントであるJ.W.バーガードは、PR会社タイダロックに「『タ
バコが肺癌の原因になるという説は科学的に根拠がない』と訴える
広告を早急に作らなければならない」と手紙を送っている。

これを受けて、広告代理店ポスト・キーズ・ガードナー社は、宣伝
キャンペーン「プロジェクト・トゥルース」を開始した。その目的
は、政策決定者に働きかけて、論争をタバコの害に関する科学的事
実の解明から、喫煙者の権利の主張に移行させることだった。

1980年初めになると、タバコ会社による広告やスポンサー活動を規
制する機運が高まった。タバコ会社は、それに対する対抗策として
"ブランド・ストレッチング"を展開するようになった。

"ブランド・ストレッチング"とは、ブランド名のついたグッズを
販売したり、銘柄と同名のショップを展開したり、レーシング・チ
ームを所有するなどして、ブランド名を世間に知らしめる手法だ。

【4】

たとえば1981年、インペリアルタバコの「プレイヤーズ・フィルタ
ー・クリエイティブ・ガイドライン」には「16歳から20歳の若者
に人気があるか、または将来的に彼らが興味を示すだろうスポーツ
などのイベントのスポンサー活動をするべきだ」と明記されている。

また、タバコ会社は宣伝のためにテニスのウィンブルドン選手権直
前に『キム・トップ』というスポーツブランドを立ち上げた。そし
て、米国の人気テニス選手マルチナ・ナブラチロウに、キム製品を
着用させた。彼女はウィンブルドンに出場し、勝利をおさめた。

こうしたタバコ産業による引伸ばしは続いた。だがついに1998年6
月、欧州連合EUは、2006年までにタバコ会社の宣伝広告、スポン
サー活動及びプロモーション活動をすべて禁止する方針を発表した。

このようにタバコ産業の歴史は、喫煙の健康への悪影響を隠蔽し、
否定し続ける歴史だった。政府の規制を遅らせ、これまで犯して
きた罪の責任を回避するために、様々なウソをついてきたのだ。

今ではタバコに発がん性があることも、その依存性も明らかだ。そ
れでもなお、タバコ会社の多くは、その事実について首をたてに振
ろうとはしていないのだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■
■■ 選書コメント  
■■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今週の選書は、欧米のタバコ産業のウソの歴史を暴く本です。米国
のタバコ関連訴訟の過程で明らかになったタバコ産業の内部文書を
テーマ別に拾い出し、一冊の本にまとめています。

欧米のタバコ産業は、自らの存続のために、タバコの健康への影響
を隠蔽し、女性や未成年者へと対象を拡大してきました。こうした
実態が、内部告発で公になった社内文書から明らかされています。

ただ、私がこの本を手に取った理由は、嫌煙家だからでも、タバコ
撲滅論者だからでもありません。タバコ産業のマーケティングに強
い興味を持ったからです。

興味を持った理由は、本来ものすごく売りにくいはずのタバコとい
う商品を、世界中に売ってきたタバコ会社のマーケティングとは、
どんなものだったのかを知りたいと思ったからです。

本書で問題とされているのは、タバコ産業がタバコと肺がんとの因
果関係やその依存性を知りながら、長いことそれを認めず、また未
成年者までターゲットにしながらそれを隠してきたということです。

しかしタバコ産業がどんなに隠しても、タバコが健康を損なうこと
も、強い依存性を引き起こすことも、税金のかたまりであることも、
未成年者が吸えば違法になることも、誰もが知っていることです。

そんな、最悪のイメージをもつ商品を、売りまくってきたのがタバ
コ会社です。商品や企業のモラル多くには、疑問を感じざるを得ま
せんが、マーケティング手法には学ぶところも多いと思います。

他にも、本書は会社の倫理など、いろいろと考えさせる内容でした。
また、本書を読むとタバコを吸う気がしなくなると思いますので、
禁煙したいと考えている人にはお勧めの一冊になると思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ツイートする FACEBOOK いいね! このエントリーをはてなブックマークに追加

主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
東京都千代田区神田小川町3-10 新駿河台ビル4F
Tel.(03)6273-7950
Fax.(03)6273-7951

企業情報はこちら

著者の方へ

広告掲載についてはこちら

TOP