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2005/03/18
さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学

会計学が「嫌い」「苦手」という人は少なくない。たしかに、公認
会計士の私の経験からいっても、会計は難しい。いったんわかって
しまえば簡単なのだが、なんとなく敷居が高いため、理解するまで
には、かなり労力を要する。
そこで、苦手意識を持たずに会計学の本質をつかんでもらうため、
身近な例を取り上げて解説してみたいと思う。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 28,900部>━
■さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学
■山田 真哉 (著)/光文社
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■■  選書サマリー

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「女子大生会計士の事件簿」の著者が送る「身近な疑問」から、会
計の重要なエッセンスを学ぶ本です。

【1】

会計学が「嫌い」「苦手」という人は少なくない。たしかに、公認
会計士の私の経験からいっても、会計は難しい。いったんわかって
しまえば簡単なのだが、なんとなく敷居が高いため、理解するまで
には、かなり労力を要する。

そこで、苦手意識を持たずに会計学の本質をつかんでもらうため、
身近な例を取り上げて解説してみたいと思う。

「たーけーやー、さおだけー」。おなじみ、さおだけ屋のスピーカ
ーから流れるメロディだ。しかし、いったいどんなお客がさおだけ
屋からさおだけを買うのだろうか?

少なくとも、買っている人を目撃したことも、買ったという話を聞
いたこともい。ちゃんと利益は出ているのだろうか?どう考えても
大儲けしているようには見えない。

さおだけなど、たいていは引越しのときなどに一度買えば、当分そ
れですんでしまうし、折れたり錆びたりしたら、スーパーかホーム
センターに買いにゆけばいいのではなかろうか。

【2】

つまり、さおだけ屋には、次の2つの問題点があるのだ。
・さおだけという商品にそもそも需要がない
・わざわざさおだけ屋から買うメリットがない 

このような問題を抱えているにもかかわらず、さおだけ屋は事業を
継続している。企業の大前提は「継続すること」すなわち、会計学
では、これを「ゴーイング・コンサーン」という。

継続するためには「利益」を出すことが重要だ。利益とはすなわち
「売り上げ」?「費用」のことだ。これに対し「現金」は無くても
企業は生きていける。「掛け」つまり、ツケで商品購入もできるし、
手形による取引もできるからだ。

したがって、利益を増やして商売を成立させるには「売り上げを増
やす」または「費用を減らす」という2つの方法が挙げられる。さ
おだけ屋が事業を維持できる理由として、次の仮説が立てられる。
・売り上げが高い
・仕入れの費用が低い 

【3】

まず「売り上げが高い」だが、ごく一部のさおだけ屋に限っていえ
ば、これは真実だ。お年寄りに「2本買うなら8000円にしておくよ」
などと巧みに商品をすすめ、さらに「ものほし台の土台が腐ってい
て危ないね」と10万円もする修繕工事をさせたりするのだ。

一方、「仕入れの費用」が低いという仮説も真実だ。というのも、
商店街の金物屋がお得意様に商品を配達するとき、ついでにさおだ
けを売っていることがあるからだ。

要するに、さおだけ屋の正体は、金物屋による初期投資がかからな
い副業という場合がある。仕事の合間にやっているのだから、人件
費もかからないし、ガソリン代も本業のものを流用できる。さおだ
け屋はじつは商売の基本中の基本をよくおさえているのだ。

【4】

さて、それではてっとり早く利益を出すにはどうしたらよいのか。
答は「費用を減らす」ことだ。世間からは「ケチ」と見られるかも
しれないが、ケチとはとどのつまり、利益を出すという会計目的に
対し、もっとも合理的に行動している人を指す。

そして、この目的から言えば「塵も積もれば山となる」方式で、少
ないお金を節約してもしかたがない。大きなお金こそ慎重に使うべ
きだ。また、費用対効果を考えて節約しようとする人もいるが、本
当の費用対効果を見極められなければ無理というものだ。

たとえば「水道代が節約できる」とうたわれている「食器洗い乾燥
機」だが、じつはけっこう電力を食う家電製品だ。トータルコスト
は、手で洗った場合と変わらないともいわれている。つまり情報源
が偏っていれば、本当の費用対効果など見えないのだ。

では、嘘か本当かわからない費用対効果に振り回されたり、会計学
にだまされたりしないようにするためには、どうしたらよいのか。
おすすめは、思い切って数字を無視し「時間の節約になるから」と
いった「事実」を考慮するか、または水道代、電気代などの家計状
況を把握しておくことだ。

このように会計は人を納得させる手段だが、だます手段にもなりう
る。だまされないためには、個人でも会計に強くなければならない
のだ。

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■■ 選書コメント  
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今週は「会計は大嫌い」「会計は苦手」と思っている方に、ぜひお
読みいただきたい本を紹介しました。

これまでも、やさしい「会計」と銘打つ会計の入門書はたくさんあ
りました。しかしその多くが、イラストが動物だったりストーリー
仕立てだったりするだけで、内容は少しも易しくありませんでした。

その点、本書は本当にやさしく書かれています。なにせ会計の本な
のに、専門用語も数字もほとんど出てこないのです。日常の疑問を
会計的発想で探り、最後は再び日常的話題で締めくくってくれます。

だから会計を意識することなく、読み物として読み進めることがで
きます。それでも会計の考え方が理解できます。著者はマンガにも
なった『女子大生会計士の事件簿』シリーズの原作者です。マンガ
の原作まで書ける著者の本ですから、わかりやすいのも納得です。

全くの余談ですが、本書には「週末起業」も登場します。連結経営
の例として「週末起業」を取り上げていただいているのです。(読
んでいる本に突然、自分の名前が出るとビックリしますね)

ビジネススキルというと、英語やロジカル・シンキングばかりもて
はやされますが、私はまず会計だと思います。会計を理解すると、
仕事の本質が見えてきます。日々のニュースも、ビジネス書も数倍、
楽しめるようになります。

少なくとも、会計を修得すると、数字の感度が格段に高まります。
だから、仕事の強力な武器になります。会計の習得は難解ですが、
だからこそ参入障壁が高く、他の人と差がつけられるとも言えます。

自分のキャリアに箔をつけたい方、ライバルに大きく差をつけたい
方は、ここで会計に挑戦されてはいかがでしょう?会計の入り口を
覗いてみたいという方には、本書は格好の一冊です。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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