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2012/08/24
読書の技法
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「速読」するなら「熟読」から
正確で深い情報を入手するためには、書籍をどう読むかが鍵だ。その読書の技法を考える上で大原則となるのが「熟読できる本は限られている」ということだ。読書に慣れている人でも、300ページ程度の専門書なら1カ月に3~4冊しか熟読できないはずだ。筆者が毎月目を通す300冊のうち、熟読するのは4~5冊。500冊を超える場合でも6~7冊だ...
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■今週の選書
■読書の技法
■佐藤優
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■■選書サマリー
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「速読」するなら「熟読」から
【1】
正確で深い情報を入手するためには、書籍をどう読むかが鍵だ。そ
の読書の技法を考える上で大原則となるのが「熟読できる本は限ら
れている」ということだ。
読書に慣れている人でも、300ページ程度の専門書なら1カ月に3
~4冊しか熟読できないはずだ。筆者が毎月目を通す300冊のうち、
熟読するのは4~5冊。500冊を超える場合でも6~7冊だ。
熟読する本以外は、速読、超速読のいずれかで処理する。1冊5分
程度で処理する「超速読」が240~250冊、30分から2~3時間か
けて取り組む「普通の速読」が50~60冊だ。
もっとも、速読する場合も、その本に書かれている内容についての
基礎知識がなければ、そもそも読書にならず、指で本のページをめ
くっているにすぎない。そういう指の運動は、速読ではない。
読書の要諦は、基礎知識をいかに身につけるかだ。その基礎知識は
熟読でしか身につかない。しかし、熟読できる本は限られている。
だから、本の精査として速読が必要なのだ。
【2】
本屋には、速読術の本が並んでいる。だが、これらを読んでも速読
術は身につかない。なぜなら、速読術とは熟読術の裏返しだからだ。
熟読術を身につけずに、速読術を体得することはできないのだ。
本には「簡単に読み流せる本」「そこそこ時間がかかる本」「もの
すごく時間がかかる本」の3種類がある。
エロ小説なら約1時間、わかりやすい新書なら2時間で読める。こ
れを簡単に読み流せる本」と定義する。
「そこそこ時間がかかる本」とは、標準的な教養書だ。普通のビジ
ネスパーソンが毎日2時間読んで、1週間程度かかる本だ。
「ものすごく時間がかかる本」とは、語学や数学の教科書だ。筆者
の場合、読み終えるのに1年半かかった本がある。
【3】
標準的なビジネスパーソンの場合、新規語学の勉強に取り組む必要
がなく「ものすごく時間がかかる本」がないという条件下で、熟読
できる本の数は、新書を含め1カ月に6~10冊程度だ。
つまり、最大、月に10冊読んでも、1年間で120冊だ。だからこそ、
熟読する本をいかに絞り込むかが大事なのだ。本当に読むべき本を
選び出すために必要なのが速読術なのだ。
速読の第一の目的は、読まなくていい本をはじき出すことだ。一般
論として、難解な本には2通りある。第一は、概念が錯綜し、定義
がいい加減で、論理構成も崩れている本だ。
古典的名著とされている本の中にも、このようなトンデモ本がたく
さんある。こういう本にはかかわり合うだけ時間の無駄なので、早
く扉を閉ざすことだ。
第二は、議論が積み重ね方式になっていて、覚えなくてはならない
約束事や、押さえておかなくてはならない事実関係が多く、読むの
に時間がかかる本だ。
語学や数学の教科書、外交文書などがこれにあたる。この種の本は、
手続きを踏んで読めば、知識と教養が必ず身につく。
【4】
熟読する本を選ぶ際、いちばん簡単で確実な方法は、その分野に詳
しい人に聞くことだ。たとえば学者や、企業や官庁の実務家だ。
周囲に専門家がいないなら、書店の活用をお勧めする。東京の八重
洲ブックセンター本店などの専門書売り場の書店員は、取扱商品に
関する知識なら、月並みな大学教授を凌駕することもある。
雑誌や新聞の連載から、説得力があると思う論者を見つけ出すのも
手だ。優れた学者や評論家は、必ず自分の言説の根拠となる出典を
明示する。また、お勧めの入門書や関連図書も紹介するはずだ。
このように、未知の分野で本を選ぶには「水先案内人」が必要だ。
誰かに手引きしてもらうことで、入り口でつまずく確率を大幅に減
らすことができるはずだ。
★本書の詳細、お買い求めは、
→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492044698/tachiyomi
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■■選書コメント
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久しぶりに、読書の本です。タイトルから、速読などの読書術を連
想するかも知れませんが、本書はそれにとどまらず、社会人に、書
籍を用いた勉強の仕方を詳しく教えてくれる、むしろ勉強法です。
少し前、速読がブームとなりました。しかし、最近は鳴りを潜めて
います。理由は、速く読めても、内容が速く理解できるわけではな
いことに、みんなが気付いたからでしょう。
その点、本書は「技術としての読書法」にとどまらず、いかに読み、
いかに知識として定着させ、いかに日常に活用していくのかを教え
てくれます。
本書は、三部構成になっています。前半が「読み方や学び方」、中
盤が「読むべき本」を分野別に、最後に「読む場所や時間」など、
勉強の環境について解説してくれます。
なお、本書の読書法が対象にしているのは、教科書や学習参考書な
ど、本格的な本です。ビジネス書でも、ハードカバーで400ページ
を超えるような経済書や経営書などです。
ただし、著者は漫画や小説を否定しているわけではありません。本
書でも、動機付けや娯楽を目的に読むべきとして、紹介しています。
何かをはじめる際、真っ先に本を読むという人は少なくないと思い
ます。私もその一人です。本は、すべての始まり、入口なのです。
ところが、その入り口の、本を読むことで挫折してしまい、新しい
分野に挑戦すること自体を諦めてしまう人も少なくありません。こ
れは、もったいないことです。
作法を身につければ、読むだけで終わったり、挫折してしまったり
する確率を激減させられます。この際、きちんとした勉強法を身に
着けたい人にお勧めします。
★本書の詳細、お買い求めは、
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発行元:(株)アンテレクト 藤井孝一 Copyright 1999-2012
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