HOME > ビジネス選書&サマリー > 無料版・バックナンバー > 日本の真実

ビジネス選書&サマリー

無料版・バックナンバー

解除ご登録

ビジネス選書&サマリーのバックナンバーをご覧いただけます。


f

2004/08/27
日本の真実

日本の真実

日本の元号が平成に変わって以来、わたしはずっと「平成維新」を
叫び続けてきた。平成維新とは、規制をなくし、民間にできる限り
自由を与える「小さな政府」の実現にほかならない。
日本は世界のどの国よりお金を持っている。個人金融資産の総額は
じつに1400兆円だ。ところが高齢者たちは平均3500万円のお金を
握ったままで死んでゆく。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 24,497部>━
=今週の選書=
■日本の真実
■大前 研一 (著)
■小学館
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■  選書サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

平成維新を唱え続けてきた著者が放つ衝撃の「日本論」と処方箋で
す。

【1】

日本の元号が平成に変わって以来、わたしはずっと「平成維新」を
叫び続けてきた。平成維新とは、規制をなくし、民間にできる限り
自由を与える「小さな政府」の実現にほかならない。

日本は世界のどの国よりお金を持っている。個人金融資産の総額は
じつに1400兆円だ。ところが高齢者たちは平均3500万円のお金を
握ったままで死んでゆく。

これら死に金をマーケットに引き出し、消費を活発化させれば日本
はまだまだ立ち直れるはずだ。そのためには、税制改革や規制緩和
が不可欠だ。

「神の見えざる手」ならぬ「民の見えざる手」にゆだね、若い人た
ちの起業家精神を育てるとともに、新しい産業を作り出す仕掛けを
作れば、5年後、10年後にはおのずと明るい未来が開ける。

【2】

だが、政府は規制緩和どころか公共土木に税金を注ぎ込むばかりだ。
小泉首相の構造改革や骨太の方針も、スローガンにすぎない。問題
は国の利権集団が徐々に拡大化していることだ。

強固に結びついた政・官・財の「鉄のトライアングル」は今や「鉄
のオクタゴン」へと変貌している。官僚たちが、敵になりそうな組
織、人を自分たちの利権システムに取り込むようになったからだ。

よい例が大マスコミと御用学者だ。彼らは政府の審議会や懇談会を
通じて官僚に取り込まれつつある。論説委員といえば新聞の顔だ。

しかし裏を返せば「上がり」のポストとも言え、それ以上出世する
見込みはない。審議会や懇談会メンバーは、彼らにとってかなり魅
力的なポストなのだ。

論説委員の下にいるデスクたちも、同じようなポストにありつきた
いと思うから、反体制的な記事は書かなくなる。こうして、常識的
に明らかに間違っていると思われる政策を、平気で大新聞がヨイシ
ョするようになったわけだ。

【3】

オクタゴンの癒着はますます緊密なものとなりつつある。たとえば
かつて財界は、政治家や官僚と一定の距離を保っていたものだが、
2002年5月に経団連と日経連が統合され、日本経団連が発足してか
らは財界と政治の距離はぐんと縮まった。

その結果、政治献金も復活している。また官の中でも本来、独立し
た機関であるべき検察庁や国税庁もマスコミと癒着し、相互依存の
関係に陥っている有様だ。

たとえば秘書給与を流用していた国会議員を起訴しなかったケース
について、弁明じみた検察庁の見解を載せたのはある大新聞だった。

マスコミは彼らから情報をリークしてもらい、かわりに提灯記事を
掲載する。世論に訴え、あたかも検察庁が正義の権化であるかのよ
うな状況を生んでいるのだ。

【4】

今や政府に盾突く人や組織はほとんど見当たらない。危険な人物は
スキャンダルをマスコミに流され、おとしめられてしまうからだ。

一般の人は、マスコミの意図的な情報によって、まんまと操作され
ている。たとえばマスコミはあえて「小さな政府論」について報道
しない。

新聞やテレビは御用学者を起用し「そんなことを言っても、銀行が
つぶれたら大変だ」「ます景気回復が先」などと、大きな政府論を
擁護している。

鉄のオクタゴンに組み込まれた銀行や証券会社の系列社員である、
大手総研のエコノミストたちも同様だ。民主党も2003年総選挙でマ
ニフェストを発表したが、キャッチフレーズ並べに終始している。

党内の議論も整理できていないのが現状だ。もし日本に米国のヘリ
テージ財団やスタンフォード大学フーバー研究所のような、自由な
立場の機関があれば「小さな政府論」について健全な政策論議が戦
わされたことだろう。

しかし、哀しいかな今の日本ではこうした議論はまったく聞こえて
こない。重大な政策的選択をすみやかにおこなわねばならないとき
が来ているというのに、その選択肢さえ提示されない状況だ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■
■■ 選書コメント  
■■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本書の著者、大前研一氏は、私が最も尊敬する経営コンサルタント
の1人です。なんだかんだと言っても、彼は日本のコンサルタント
の草分けであり、第一人者だと思うからです。

本人にもお会いしたことがあります。かつてこのメールマガジンが
書籍(ムック)化された際に、巻頭インタビューをお願いし、応じ
ていただいたのです。

当然、書籍もほとんど(おそらく95%以上!)読んでいます。この
メールマガジンでも、選書として取り上げた回数が最も多い著者だ
と思います。

そんな大前氏の書籍の中でも、本書は指折りの良書だと思います。
今回は、経済やビジネスにとどまらず、日本が国家として抱える問
題という、より大きなテーマに切り込みます。

核問題、憲法問題、教育の問題、国際問題、日本人のナショナリズ
ムなど、微妙な話題にも大胆に切り込んでいます。しかも指摘はす
べて実名入りでおこなわれています。

さらに、これが大前本の最大の魅力だと思いますが、すべての問題
に対して、具体的な解決策がしっかり提示されています。その内容
は、いずれもユニークなものばかりです。

ただし、氏の論としては「道州制」の導入など、ベーシックなもの
が中心です。そういう意味では、むしろ大前論の総括のようになっ
ています。私のような大前フリークや、「日本の真実」が知りたい
人にはもちろん、大前初心者にもお読みいただきたい本です。

ただ、どういうわけか、本書は現時点で入手が困難になっています。
「参院選の際、読まれると困る人が有害図書として駆逐したのでは」
という人もいますが、アマゾンで数週間待ち、都内の書店でも見か
けません。ただここは予約してでも、ぜひ読んでいただきたいと思
います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ツイートする FACEBOOK いいね! このエントリーをはてなブックマークに追加

主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
東京都千代田区神田小川町3-10 新駿河台ビル4F
Tel.(03)6273-7950
Fax.(03)6273-7951

企業情報はこちら

著者の方へ

広告掲載についてはこちら

TOP