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2004/10/15
雨の降る日曜は幸福について考えよう

雨の降る日曜は幸福について考えよう

あなたには人生の選択肢がいくつあるだろうか?友人のT氏は東大
卒業後、アメリカの名門大学でMBAを取得し、30代で外資系大手
メーカーの管理部門のトップになったエリートだ。
彼はヘッドハントされて、ある中堅企業の経営再建を託された。業
績悪化に歯止めをかけるには、人員整理が避けられない。その尖兵
である彼には、社員から敵意や反感が集まった。


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■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 25,570部>━
=今週の選書=
■雨の降る日曜は幸福について考えよう
■橘 玲
■幻冬舎
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■■  選書サマリー

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ささやかな幸福を実現することは、難しくはない。必要なのはほん
の少しの努力と工夫、人生を設計する基礎的な知識と技術です。

【1】

あなたには人生の選択肢がいくつあるだろうか?友人のT氏は東大
卒業後、アメリカの名門大学でMBAを取得し、30代で外資系大手
メーカーの管理部門のトップになったエリートだ。

彼はヘッドハントされて、ある中堅企業の経営再建を託された。業
績悪化に歯止めをかけるには、人員整理が避けられない。その尖兵
である彼には、社員から敵意や反感が集まった。

そこで彼が出会ったのは、リストラされれば生きていくあてのない
人々だった。自分の生活と家族を守るために、自分たちを追い出そ
うとする、あらゆる敵に対して闘っていた。彼らは会社にしがみつ
くという"事業"に必死で取り組んでいたのだ。

結局、T氏は辞表を出した。辞表を出したところで、彼は生活に困
るわけではない。転職は数ある人生の選択肢の一つにすぎない。一
方、彼に立ちはだかったのは、たった一つの選択しかない人たちだ。

ならば道を譲るのは自分だと、彼は考えた。もちろん彼が身を引い
たところで問題が解決するわけではないが、ここにはそんな建て前
論では語れない、重い現実がある。

同じサラリーマンでも、T氏には別の道を歩む自由がある。その一
方で闘わざるを得ない人がいる。どちらもかけがいのない、ただ一
回の人生だ。あなたはどちらを選ぶだろうか?

【2】

世界は、悲しみに満ちている。中東では血なまぐさい戦争が続き、
アフリカでは何万という人が飢餓とエイズで死んでいく。

あるとき、ある青年が私に「あなたは、世界のこの不幸な現実から
目をそむけるのですか」と尋ねた。それに対して私はまじめに「自
分の人生とはかかわりのないことだ」と答えた。青年は、怪訝な顔
で私を見た。

社会は自由にならない多くの他者によって構成されている。自由に
見えながら、手に入る自由はほんのわずかなのだ。

彼は、世界中の不正義と闘っていた。自分の苦悩が世界を正しい方
向に変える力があると信じていた。そして、彼の属する教団は、の
ちに救済の名のもとに多くの生命を奪った。

教団の罪が明らかになってから数ヶ月後、若者はひっそりと姿を消
した。のちに、彼が田舎に戻り、結婚して子どもを持ったという話
を聞いた。結局、私たちは目の前にある問題をひとつひとつ解決し
ていくしかないのだ。

【3】

サラリーマンの人生は定期預金に似ている。自分の労働力を会社に
投資すると、毎月給料という名の利息が支払われる。満期を迎えれ
ば退職金として元金が払い戻される。この場合、最も重要なのは信
用と安全だ。銀行が破綻したら利払いは停止、元金も戻ってこない。

一方、自営業者や個人事業主、会社経営者の人生は株式投資に似て
いる。事業の利益はそっくり手に入るが、赤字になれば配当は停止
し、倒産すれば株券は紙くずになる。

ふたつの人生のどちらが有利かの答えは、簡単に出せない。だが、
バブル崩壊後、日本的経営は終焉し、終身雇用は音を立てて崩れた。

磐石だった一流企業でさえ、リストラや経営破綻の嵐が吹き荒れて
いる。定期預金型の人生は狂い始め、現在の財政状況では、年金も
満額で受給できそうにない。

【4】

高度経済成長期、人はリスクについて真剣に考えることはなかった。
日本人の人生設計の基本は、30代でマイホーム購入、定年までにロ
ーンを完済、退職金と年金で隠居生活を送る、というものだった。

あらゆる経済問題は、マイホームの含み益で解決が可能だった。と
ころが、バブル崩壊後の10年で、この基本パターンが消滅した。わ
たしたちは自ら人生を再設計しなくてはならない。

だが悲観する必要はない。時代の大きな変化は私たちに新たな可能
性をもたらしてくれるはずだ。

希望とは、未来への不安の中にこそ大輪の花を咲かせるのだ。少し
の努力と工夫さえすれば、不安は希望に変わるにちがいない。

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■■ 選書コメント  
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本書の著者は、あのベストセラー「お金持ちになれる黄金の羽根の
拾い方」(幻冬舎)の橘玲氏です。

著者の語り口はいつも淡々としていて、しかも論理に隙がありませ
ん。そのため、突き放されたような冷たさを感じる人もいるかも知
れません。

世の中はいろいろな矛盾や問題を抱えています。連日のニュースを
見ていても、政治の腐敗、年金問題、イラク問題、教育の問題など、
理不尽なこと、腹の立つことばかりです。

これらの問題を、いちいち糾弾し、あるべき姿を唱え、世直しの気
運を盛り上げるのがマスコミの報道です。多くの書籍もそんな、
"熱い"スタンスで書かれ、支持されています。

ところが、本書はこのような世直しとか、熱さとかは無縁です。む
しろ今ある理不尽な現実を受け入れ、できる範囲で幸せになろうと
いうのが、本書にも貫かれる著者のスタンスです。

そんなある意味冷めたスタンスは、あまり痛快ではありません。読
書は多くの読者にとって一種の娯楽ですが、人は娯楽には非日常的
なものや、非現実的なものを求めます。

たとえば、本書の主要なテーマであるお金の話題なら、人は本を読
んで億万長者を目指します。その間は、バブル期に買ったマイホー
ムの含み損のことは忘れています。

しかし、非日常や非現実ばかり追い求めるのは疲れます。本を読ん
でいる間、目を背けても、マイホームもローンも、そこにあるので
す。現実とのギャップの大きさに気がつけば、一気にシラけます。

そんなとき、本書の「人生いろいろだけど、ちょっと考て工夫すれ
ば、小さな幸せくらい手にはいるよ」というスタンスに触れると、
最初は冷たく感じた語り口が、とても暖かく感じられるはずです。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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Tel.(03)6273-7950
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