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2004/11/12
ブランドの達人―3万人のブランドデータバンク

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かの芥川龍之介は「歯科医の看板にしても、それが我々の眼に入る
のは看板の存在そのものよりも、看板のあることを欲する心―ひい
ては我々の歯痛ではないか?」と語った。
「歯痛」つまり「欲する心」を理解することこそ、マーケティング
の基礎といえる。現在「欲する心」は芥川が生きた80年前とは比べ
ものにならないほど多様化している。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 26,477部>━
=今週の選書=
■ブランドの達人―3万人のブランドデータバンク
■WATER STUDIO+EP‐engine
■ソフトバンクパブリッシング
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■■  選書サマリー

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好きなブランドをキーにして、まるで占いのようにその人の購買パ
ターンや、人となりを知ることが出来ます。

【1】

かの芥川龍之介は「歯科医の看板にしても、それが我々の眼に入る
のは看板の存在そのものよりも、看板のあることを欲する心―ひい
ては我々の歯痛ではないか?」と語った。

「歯痛」つまり「欲する心」を理解することこそ、マーケティング
の基礎といえる。現在「欲する心」は芥川が生きた80年前とは比べ
ものにならないほど多様化している。

看板どころではない。あらゆる媒体を通して嵐のように情報が降っ
てくる時代だ。欲しない情報はすぐに忘れられても不思議はない。
そんな今、マーケティングはいったいどうあるべきなのだろうか。

1992年末、トヨタは、色、内装、オプションまで含むと100万種以
上のクルマを製造することができるようになった。実際92年のある
月には、4万種のクルマを20万台販売した。

すなわち、予測を立ててからある種類のクルマを計画生産するので
はなく、多様な種類の中から顧客の注文に合うクルマを生産するこ
とに成功したのだ。

これを称して、カンバン方式の生みの親、大野耐一氏は「すべての
賭けに必ず勝つシステム」と呼んだ。

【2】

本来、人間は多様な価値観を持ち、多様な行動を望んでいるものだ。
みんなと同じ既製品のスーツを着るより、オーダーメイドのスーツ
のほうが好ましいはずだ。

ところが、産業革命により大量生産がおこなわれると、人々は多様
性を諦めざるを得なくなった。オーダーメイドにおける時間やコス
ト負担を考えると、安価で手っ取り早い既製品を購入せざるを得な
かったのだ。

これに対し、生産する側は大量生産を前提としながらも、みんなが
欲しがるものをある程度予想することによって、消費者の志向へと
歩み寄ってきた。そのために使われた手法がマーケティングだ。

【3】

やがて情報革命の時代が到来すると、マーケティング自体に大きな
変化がもたらされた。たとえばデルがおこなったカスタマイゼーシ
ョンがそれだ。

ひとりひとりの顧客の要望に合わせた注文生産、情報化による迅速
な生産工程、これまでの流通経路を通さない直接販売システム、こ
れらにより、同社はコストと時間を削減しつつも顧客の多様性に応
えることに成功した。

トヨタやデルは、顧客の嗜好の多様性を認識し、そのニーズの現状
を詳細に把握することに努めてきた。またそれに応えるため、生産
システムのダイナミックな変換をおこなっている。今後、マーケテ
ィングに必要とされるのは、こうした発想の転換だろう。

ワトソンワイアット淡輪敬三代表の言葉を借りれば「顧客が『感動
する』何か、『圧倒的』なものを提供しなくてはならない」のであ
り「すべての顧客を相手にする必要はなく、ある一定規模の顧客に
対して圧倒的な価値を生み出す」ことも重要だ。

【4】

具体的には次の3つのステップが不可欠だ。第一に年齢や性別にと
らわれず、超多様な顧客層があることを認識すること。そして、そ
れらが刻々と変化し、情報交換により頻繁に入れ替わることを知る
ことだ。

第二に、自社や商品ブランドの「変態的」強みを把握し、ブランド
が顧客に与えている印象、強みに対する顧客の理解度を認識するこ
とだ。どんな顧客層に受け入れられているかも把握する必要がある。

第三に、これらをもとにアクションを起こし、コミュニケーション
を促進することだ。顧客の反応をフィードバックし、さらにアクシ
ョン・コミュニケーションを再考し、実施するのだ。

顧客に一様な価値観があるという思い込みのもとに、マーケティン
グを行うのはまったく無駄だ。顧客ひとりひとりの顔を常にきちん
と見ることこそ、マーケティングの原点なのだ。

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■■ 選書コメント  
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人はなぜブランド品を持つのでしょう?きっと自分がそのブランド
を持つに値する人間であり、そのブランドを持つ他の人たちと同類
の人間だということを確認したいからでしょう。

だとすると、ブランドは企業に「あなたをこのブランドにふさわし
い人として認めましょう」と押してもらった太鼓判ということにな
ります。我々は太鼓判を押してもらうために高いお金を払うのです。

太鼓判を押すことでお金がとれるなら、企業にとっては魅力です。
だから企業はブランドづくりに躍起になります。結果、生活のあら
ゆる局面にブランドが入り込みます。今やファッションだけでなく、
新聞や銀行、病院にまでブランドがあります。

人が生活の中で、どんなブランドを選択しているのかを調べ、同じ
選択をした人ばかり集めて共通点を探り、特定の人物像を浮かび上
がらせようとするのが本書の試みです。

本書によると「ビールはアサヒスーパードライ!」という人は、服
はラルフローレン、時計はタグホイヤー、車はトヨタのエスティマ、
雑誌は週刊ポスト、テレビはテレビ朝日なのだそうです。

一方「ビールはエビス!」という人は、服はバーバリ、時計はオメ
ガ、車はホンダのオデッセイ、雑誌は日経ビジネス、テレビはNHK
なのだそうです。

なぜかはわかりませんが「ふ?ん、そうかもな」という気もしてき
ます。それだけで本書の著者は「してやったり」でしょう。

このように、特定の現象をたくさん集め、それを分析すると、思い
も寄らない法則を見いだすことがあります。

私の知っている経営者は、自分の日常生活を克明に記録しています。
この方、ある時トイレに行く回数が増えると風邪をひくということに
気付いたそうです。今ではこれを健康管理に活かしているそうです。

このように、何でも記録しておくと、いつかいろいろなことを物語り
始めるかもしれません。日記でも営業月報でも、きちんと記録してお
くと、いつか思わぬ気づきを与えてくれるかも知れませんよ。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
〒101-0052
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