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2004/12/24
マツダはなぜ、よみがえったのか?

マツダはなぜ、よみがえったのか?

03年、マツダがよみがえった。一度はどん底に落ち込み、フォード
に資本支援を仰ぎ経営の実権を明け渡し、新車開発すらままならな
かったマツダが、なぜここにきて鮮やかに復活できたのか?
話は96年まで遡る。4月12日、フォードがマツダの経営権を握る
とのニュースが流れ、96年6月、マツダの指揮をとるために、フォ
ード出身のヘンリー・ウォレスが正式にマツダの社長に就任した。


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■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 27,470部>━
■今週の選書「マツダはなぜ、よみがえったのか?」
■著:宮本喜一/出版社:日経BP社
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■■  選書サマリー

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外資の傘下に入り存在意義を失いかけたマツダが、自社のブランド
の再構築を行い、グループの中での地位を向上させていく再生物語

【1】

03年、マツダがよみがえった。一度はどん底に落ち込み、フォード
に資本支援を仰ぎ経営の実権を明け渡し、新車開発すらままならな
かったマツダが、なぜここにきて鮮やかに復活できたのか?

話は96年まで遡る。4月12日、フォードがマツダの経営権を握る
とのニュースが流れ、96年6月、マツダの指揮をとるために、フォ
ード出身のヘンリー・ウォレスが正式にマツダの社長に就任した。

4月の時点では、マツダ同様フォードにマツダ復活の具体策があっ
たわけではない。ただ両者は共通して、マツダの経営を再建するた
めに一刻も早く手を打たねばという危機意識があった。

そしてマツダは復活をかけ、長い"トンネル"をくぐることになる。
トンネルは3本存在したが、マツダはそれらをすべてくぐり抜け、
立ち直ったのだ。

【2】

1本目のトンネルは96年4月から97年11月を指す。フォードから
送り込まれたウォレス、リーチたち経営陣の最優先課題は、とにか
くマツダの大火事=赤字を消すことにあった。

まず、あるゆる経費を削減し、不要不急の施設や保有株式など資産
の売却を進め、徹底的なスリム化を図り、財務の健全化を目指した。
生産面でも可能な限りコストダウンを実行した。

とりわけ厳しい目が注がれたのがクルマの開発部門だった。マツダ
は創業以来、技術開発志向が非常に強く、開発部門に資金を与える
ことには伝統的に寛容な企業だった。しかしフォードは違った。

会社全体が大きな赤字を抱えてあえいでいるとき、開発部門に対し
て新たな技術開発のための資金が与えられる余裕はない。マツダの
開発エンジニアが要求されているのは、いかに低いコストで短期間
のうちに「売れる新車」を開発できるか、その一点に尽きた。

【3】

同時に、業績を回復させるための緊急の課題は「これがマツダのク
ルマだ」というブランドイメージを再構築し、そのイメージを体現
する製品で市場における地位を回復することだった。

その使命を果たすための施策がサイクルプランの構築だった。まず、
個別モデルごとに商品力を強化する方策を打ち立てることが優先さ
れた。

並行して、メーカー本来の仕事である製品の開発作業も続けられて
いた。その中から生まれたのが、ウォレスの社長就任から2ヵ月後
の96年8月に新規投入されたデミオだ。

デミオは「クルマに必要な機能はこれとこれだけ」といういさぎよ
い製品の作り方が大いに評価された。そして、国内の自動車ジャー
ナリスト団体RJCのニューカーオブザイヤーを受賞した。

90年代前半、ヒット作がなく市場から忘れ去られようとしていたマ
ツダは、このデミオのヒットでぎりぎりなんとか持ちこたえた。

【4】

もうひとつ、マツダに復活のきっかけをもたらしたのは新エンジン
の開発だった。フォードはグループの各企業に新型のエンジンの開
発を競わせた。

それは2010年まで、つまり「開発完了後10年以上にわたって生産
し、製品の使用に耐えうる」という条件のついた2リッタークラス
の新型エンジンの開発だ。

エンジンはクルマの心臓部であり、最も重要な部品だ。自社の技術
にプライドのあるマツダにとっては、この与えられたせっかくのチ
ャンスを、なにがなんでもつかみたいと考えた。

エンジンがフォードに認められれば、マツダのグループ内での存在
価値を上げることができる。またこのエンジンがフォードグループ
の中核エンジンとして採用されれば、年間生産量150万基、供給期
間10年と、マツダ1社で使うのとはケタ違いの数字になる見込みだ。

マツダはこの開発競争に勝つ。これはマツダにとってビッグニュー
スだった。何より、自社の技術力に対する自信を確かな物にしたこ
とが、その後の復活劇の原動力になっていくのだ。

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■■ 選書コメント  
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本書は、マツダの復活物語です。これまで、同社の復活物語は、カ
ルロス・ゴーン氏率いる日産のV字回復物語などに比べると、ほと
んど耳にすることがありませんでした。

しかしマツダも03年、一度は当期利益441億円のマイナスと、どん
底に落ち込み、フォードに経営の実権を明け渡し、新車開発すらま
まならない状態にまで落ち込みました。

その後、長い低迷の時期を経て、2002年になって次々と新車を市場
に投入しはじめます。どの車種も好調なセールスを記録し、2003年
には、ついに当期利益339億円を計上と復活を果たします。そんな
マツダの復活が本書のテーマです。

本書を読んで、改革に必要なのは"自己否定"と"自己肯定"だと
感じました。自己否定とは成功体験を否定することです。大成功し
た後に失敗する企業の失敗要因は、ほとんどが成功した要因と同じ
だと言われています。

環境変化で過去の成功体験が通用しなくなっているのに、それにし
がみついて失敗する会社が多いのです。マツダの例ではRX-7が象
徴でした。それを一旦否定した車を開発することが必要でした。

一方、自己肯定とは、変えないものを絶対に変えないことです。マ
ツダの例では、ロータリエンジンがこれにあたります。変えないも
のは、何があろうとも決して変えない、そんな姿勢も大切です。

変革というと、ゼロクリアの大切さばかりが語られます。しかし本
当は、絶対に変えない部分を明確にすることが、大切なのです。変
えないことが明確化だからこそ他を全否定する決意が出来るのです。

本書は、車好きの人はもちろん、苦闘する製造業や変革を迫られる
企業に働く人など、多くの人が読んで参考になる1冊だと思います。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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