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2004/12/31
経営者、15歳に仕事を教える

経営者、15歳に仕事を教える

私は3年ほど前から会社のこと、仕事のことなどを、中学生に向け
て語りかけている。日本IBMの経営者である私がなぜ中学生に仕
事のことを教えようと思ったのか。
それは自分のやりたいことを探す大事な時期である中学、高校時代
に、企業の経営者が会社の仕組みや仕事の楽しさを語りかければ、
大きな刺激になるのではないかと考えたからだ。


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数 27,900部>━
■経営者、15歳に仕事を教える
■北城恪太郎/丸善
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■■  選書サマリー

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IBM会長である著者が、経営者の視点で、仕事を語ります。

【1】

私は3年ほど前から会社のこと、仕事のことなどを、中学生に向け
て語りかけている。日本IBMの経営者である私がなぜ中学生に仕
事のことを教えようと思ったのか。

それは自分のやりたいことを探す大事な時期である中学、高校時代
に、企業の経営者が会社の仕組みや仕事の楽しさを語りかければ、
大きな刺激になるのではないかと考えたからだ。

こうした活動の原点は、社員が日本IBMの職場を家族に見せるオ
ープン・オフィスという制度にある。親の働いている姿を見せるこ
とで、子供たちは働くということはどういうことなのかを知ること
ができるのだ。

人生の多くの時間は仕事に費やされる。楽しみ、喜びを見出せる仕
事に出会えれば、実りのある人生を過ごせる可能性は非常に高いは
ずだ。

【2】

私が日本IBMに入社したのは、今から40年近く前のことだ。最初
の本格的な仕事は、ガス製造装置の運転を監視するコンピューター
システムをつくることだった。

当時、私はほとんど毎日のように工場に泊まり込み、1年間、食事
の時間以外はほとんどコンピューターと向い合っていた。でも、そ
れを大変だとも飽きたとも思わなかった。

コンピューターのソフトウェアをつくることは学生時代からやって
いたが、仕事としてやるのは初めてだった。自分の作ったソフトウ
ェアで工場の装置が動いたり、生産状況が分かったりすると、単純
に嬉しかった。

自分のつくったものがうまく動いて、社会の役に立っていると実感
できれば、やり甲斐を感じるものだ。それはどんな仕事でも一緒だ
と思う。

自分のつくったものが社会の役に立っていると分かったときにこそ
人は「仕事の喜び」を実感できるのではないだろうか。

【3】

お客様のシステム講習の講師を勤めたことがある。しかし、お客様
からの質問のなかには、当然分からないものもあった。

つい、うろおぼえで答えてしまい、あとで調べると違っていたこと
もあった。お客様に謝ると、「分からないときは分からないと言っ
てほしい。間違った答えを覚えたら後で困る」と言われた。

メーカーの立場、教える立場としては「分かりません」と答えるの
はためらわれるものだ。そこを「分かりません。後で調べてお答え
します」と対応する。すぐに分からなければ、その状況を報告する。
ここではその重要さを教わった。

分からなくても、その後の対応さえしっかりしていれば、お客様は
不満を持たないものだ。「分からない」と言える勇気を持つことが
重要なのだ。

【4】

どんな会社でも、社員の誰もが「おかしい」と思いながらも続いて
いる規則や慣例のようなものが必ずある。でも誰も「変えよう」と
言い出さなかったり、言っても会社の上のどこかで反対にあって消
えていくことがほとんどだ。

しかし、会社が利益を上げていく上で大切なのは、お客様に満足し
ていただくことだ。それを邪魔するような規則や習慣は、本来、排
除していかなければならないものだ。

現場で働く部下達は、そういった「おかしなこと」をお客様から突
き上げられる立場にいる。お客様と会社にとって何が大切でどうす
るべきかを、日々切実かつ具体的に感じている。ところが正論が通
らない体験を重ねていくことで、徐々にあきらめ流されてしまう。

そんな中、上司の私が率先して「おかしなこと」を改めるために会
社のルールを変えていった。それをみて部下も「今度の上司はおか
しいことは会社を動かしてでも変えてくれる」と思うようになる。

その結果、部下も失敗を恐れずに、与えられたチャンスに積極的に
挑戦するようになった。そこから、部下たちに必要なのは、正論を
会社に通していく上司であることを学んだ。

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■■ 選書コメント  
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本書は、日本IBMの会長で、経済同友会の代表幹事でもある北城
恪太郎氏が、15歳前後の子供たちやその親、そして教師たちに会社
の仕組みや仕事について語ることを意図して書かれた本です。

著者は、経済同友会で教育委員長を務めた際、中学・高校生に対し
て仕事について語る必要性を感じたそうです。そして実際に30校
ほどをまわり、授業や講演会を行ってきたそうです。

たしかに、学生のころから仕事について学ぶことは大切なことです。
特に、町の○○屋さんなどと違い、会社に勤める人の仕事は抽象的
で、学生には分かりにくいものです。そんな、よくわからない状態
で自分の進む路を考えざるを得ないのが学生の実態です。

学生のころには、仕事の楽しさ、すばらしさを学ぶ機会は限られて
います。学校教育も親も、仕事の大切さや必要性は教えても、楽し
さや、すばらしさについては、あまり教えようとはしません。

仕事は、本来楽しいものです。人は、人のお役に立つことで自分の
存在理由を確認し、充実感を得る存在だと思いますが、それを実感
できる数少ない場の一つが、仕事だと私は思います。

ところが、現実には多くの大人が生きるために仕方なく「やらされ
感」いっぱいで仕事をしています。日常的にそれを目にすることで、
子供たちも自分の将来に夢や希望が持ちにくくなっていきます。

「仕事=やらされること」になる前に、仕事のやりがい、すばらし
さを誰かが語る必要があると思います。ただし、それが語れるのは
自ら仕事を楽しんできた人です。

自信がないなら、本書のような書籍を頼るのもいいでしょう。子供
とその親、教師向けとありますが、実際はもっと多くの人が対象で
す。これから仕事を始める学生や新入社員、さらに経営者や管理職
など仕事を語る責任がある人すべてに読んでいただきたい1冊です。

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

東京事務所:
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