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2006/08/26
起業家の本質

これから会社を創ろうとしているみなさん、「恐怖のクラブ」へよ
うこそ。ここで味わう恐怖は、これまであなたが経験したことのな
いものに違いない。

それは、心配やイライラ、不安といった、ありきたりの感情ではな
い。そんな感情は、もはや取るに足らないものなのだ。

起業家につきまとう恐怖とは、己に課されるもので、意思決定を行
うときに襲ってくる。起業の世界では、安眠することは許されず、
悪夢にさいなまれ続けることになるだろう。

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成功起業家の哲学、理念、苦悩とは？

【１】

これから会社を創ろうとしているみなさん、「恐怖のクラブ」へよ
うこそ。ここで味わう恐怖は、これまであなたが経験したことのな
いものに違いない。

それは、心配やイライラ、不安といった、ありきたりの感情ではな
い。そんな感情は、もはや取るに足らないものなのだ。

起業家につきまとう恐怖とは、己に課されるもので、意思決定を行
うときに襲ってくる。起業の世界では、安眠することは許されず、
悪夢にさいなまれ続けることになるだろう。

かく言う私も、1935年に初めて会社を設立したとき、その後に何が
待ち受けているか見当がつかなかった。私が始めたのは、クラフト
フードという食品会社の委託販売業だ。

ヨーロッパと中東にある軍事基地が担当だった。この仕事を請け負
ってから、売上はぐんぐん増え、儲けは莫大なものとなった。そん
なとき、突然とんでもない話を持ちかけられた。

【２】

クラフトフードの社長が「ドイツの軍事基地内販売を自社の販売員
に引き継がせることにしたので手を引いてもらいたい」と言うのだ。

これを聞いて茫然とした。そうなれば、収入の50％、利潤100％がカ
ットされてしまう。きっと小ざかしい社員が「自社販売員ならもっ
とうまく、安くできる」と経営陣を説得してしまったのだろう。

そこで私は社長にこう告げた。「あなたがドイツを引き継ぐという
のなら、ドイツだけでなく、私が担当しているほかの地域を全部引
き継いでもらいましょう」

我々はしばらく黙っていた。「本気ですか。それなら、検討して、
決定したらお知らせします」決定が告げられるまでの一ヶ月間、私
はどれほど恐怖に怯えていただろう。

【３】

結局、クラフト社は前言を撤回し、ドイツを引き続きわが社に任せ
ることにした。それを知ったときの高揚感は今でも忘れられない。
つまり、起業家が恐怖を克服するとき、大きな興奮が訪れるのだ。

興奮は、私たちの精神にとって食糧であり、前進のためのエネルギ
ーだ。この状態を「中毒」と言う人もいる。だが、私はむしろジェ
ットコースターのようなもの、と言いたい。

傾斜面を上りながら興奮と胸騒ぎを覚え、厳しい決断を下す。頂上
にたどりついたときは地獄へ落ちる予感に襲われ、鳥肌が立つだろ
う。そして、叫び声をあげながら未知の世界へ飛び込むのだ。

それは、恐怖以外の何ものでもない。だが、ジェットコースターを
降りるとき、恐怖は去り、うきうきとした高揚感を覚えているに違
いない。大切なのは、最初の恐怖を乗り越えることだ。

【４】

現在、恐怖を通過中の起業家もいることだろう。仮に我慢の限界を
超えそうだと感じても、決して慌てないでほしい。恐怖をありのま
まに認識し、慣れるのだ。

どうせ、その恐怖は一生、あなたのそばにいるのだ。だから、せい
ぜい睨みつけ、つばを吐きかけてやればいい。ただし、恐怖を友人
と共有するのはやめるべきだ。

事がうまくいかなかったとき、相手に共同責任を強要することにな
るからだ。恐怖を役員たちと分かち合うことは、大企業のトップだ
けに許される行為だ。起業家は、ひとりで耐えなくてはいけない。
恐怖を家に持ち帰ることもタブーだ。

クラフトフーズの創始者、クラフト氏も、ビルズバリーの創業者、
ビルズバリー氏も、そして、フォード社のフォード氏も、彼らはみ
な悪魔と握手して、この恐怖のクラブに参加した人々なのだ。

恐怖を操り、恐怖とともに生きる能力は、起業家が成功するために
唯一の、最も重要な能力だ。そして、退屈で平凡な世界に生命と興
奮を吹き込むのも、恐怖を携えた孤独な起業家たちなのだ。

目の前の恐怖を克服すべきだ。ひとたび乗り越えれば、独特の幸福
感が手にできる。恐怖クラブは、それを成し遂げたものだけの、か
なり厳選されたメンバーのためのクラブなのだ。

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本書は「起業家による、起業家のためのバイブルです。著者ウィル
ソン・ハーレル氏は、多くのビジネスを立ち上げ、成功に導いてき
ました。全米を代表する起業家に贈られる「アントレプレナー・オ
ブ・ザ・イヤー」を受賞し「起業家の殿堂」に名を連ねています。

加えてアメリカの起業家に大きな影響を与え続けている雑誌『Inc.』
の元発行人として、自分以外のたくさんの起業家の成功も手伝って
きました。

原書が発刊されたのは、10年以上前です。しかし、本書の内容は、
今でも古さを感じさせません。それどころか、ライブドア事件など
が起きた今、ますます凄みを帯びて迫ります。

起業に関する本は、日本でもたくさん発刊されています。それだけ
に、玉石混淆ですから、しっかり選ぶべきです。多くは、セールス
レターの書き方や法律にまつわるものなど、ハウツーものです。

もちろん、こうしたハウツーも大事ですが、起業家の「ものの考え
方」とか、「メンタル」な側面はさらに大事です。しかし、そうし
た起業家の頭と心の面を扱ったものに、良書は多くありません。本
書はこの点を扱ったものの中では、一級品にランクされます。

本質を説くと言っても、精神論に終始しているわけでもありません。
「適正価格の算出」や「代理店の選定」など、具体的なこともしっ
かり書いてあります。また、家族との関わり方などのプライベート
まで網羅しており、まさに起業家のバイブルです。

すでに独立を果たした起業家、および起業を志す人にとっては、欠
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