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2007/08/17
グラミンフォンという奇跡

グラミンフォンという奇跡

南アジア、アフリカ、そして中東の一部の国の発展途上国で、今力
強い経済革命が起こっている。これらの国々で劇的な経済効果をも
たらしているのが、情報通信技術だ。
ITを活用したビジネスを通じて、貧困を撲滅し、巨大市場を誕生
させるという、新たな経済開発モデルが明確になりつつある。とり
わけ急成長しているのが、携帯電話会社だ。


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■■       ビジネス選書&サマリー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<読者数53,762部>━
■今週の選書
■グラミンフォンという奇跡
■ニコラス サリバン /英治出版
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★本書の詳細、お買い求めは、→ http://tinyurl.com/2bg27w

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■■選書サマリー  
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「牛」の代わりに「携帯電話」をひろめた男の起業物語

【1】

南アジア、アフリカ、そして中東の一部の国の発展途上国で、今力
強い経済革命が起こっている。これらの国々で劇的な経済効果をも
たらしているのが、情報通信技術だ。

ITを活用したビジネスを通じて、貧困を撲滅し、巨大市場を誕生
させるという、新たな経済開発モデルが明確になりつつある。とり
わけ急成長しているのが、携帯電話会社だ。

バングラデシュにあるグラミンフォンは、1997年に新しいサービス
を開始し、今や1000万人以上の加入者を獲得している。売り上げは
10億ドル以上。利益も2億ドルを超える。

これまでに10億ドル以上の投資を行ってきたが、競合会社も含める
と、この分野への海外からの投資は、累計20億ドル以上になる。

【2】

バングラデシュの1億4800万人の人口の大半は農村で暮らしている。
そこにグラミンフォンは、25万台のビレッジフォンを通じて、1億
人に通信手段を提供している。

ビレッジフォンを保有するのは、グラミン銀行から小規模融資を受
けた各村の女性起業家たちだ。彼女たちはビレッジフォンを村人た
ちに使ってもらい、使用料金による収入でローンを返済する。

年間所得は平均で750ドル。バングラデシュの平均所得のほぼ倍だ。
このビジネスを発案したのは、バングラデシュ出身、アメリカでベ
ンチャーキャピタリストとして働いていたイクバル・カディーアだ。

彼は36歳のとき、バングラデシュに戻って全国的な電話サービスを
始める決意をした。そして投資家を探し、起業のため奔走した。

【3】

もちろん、この一大事業は外国人投資家の存在なしには実現しえな
かった。「外国人投資家」の支援を受けて「現地起業家」が「IT」
を輸入する。この3つの力が国の成長の原動力となる。

これらの力が、厄介な政府、巨額の援助で歪んだ市場によって長く
抑圧されてきた市場を変えた。これらは、いわば経済の「外燃機関」
だった。

成熟した欧米の市場では、内燃機関がうまく働く。だが、貧しい南
の市場では、内部で活気を生み出すことができない。だから、外燃
機関が必要なのだ。

指導者が新しい成長志向の政策を確立したシンガポールや台湾、韓
国、チリなどが良い例だ。あるいは、新技術とそれにともなう権限
委譲が、人々の潜在能力を解き放った東欧も典型例だ。

グラミンフォンの場合は、国外の力が好ましい連鎖反応を起こした。
利益は再投資につながり、新たな派生ビジネスを生んだ。このよう
な競争が起こると、資本市場が誕生し、政府の改革が促される。

やがて株式が売買されるようになり、資本市場に厚みが出る。自由
化政策、規制の整備が行われ、自国の技術、起業家、国内資本から
なる内燃機関で自律的に成長するようになる。

【4】

貧困国の最大の敵、それは国内経済を牛耳る政府だ。彼らが持つ、
社会主義や民族主義、外国企業や投資家などへの反感、巨額の援助
などの要因が重なり、政府はますます肥大化する。

一方で、民間事業は抑圧され、内燃機関の働きが妨げられてしまう。
先進国は「貧困国にもっと援助を」と呼びかけているが、施しは役
に立たない。市場開放どころか、逆に歪めてしまうことが多い。

ほとんどの場合、首都近くにダムや大型発電所を建設するといった
巨大インフラプロジェクトが行われるだけだ。低所得層の国民には
なんの機会も与えられない。

だが、グラミンフォンは民間投資を活用して技術的な手段を普及、
新しい富を生み出した。バングラデシュを長続きする成長軌道に乗
せることに成功したのだ。

バングラデシュへの海外直接投資は、現在年間10億ドルに達してい
る。だが、援助はむしろ減少傾向にある。まだ実現はしていないが、
近い将来、民間の海外投資は、海外援助を追い越すはずだ。

★本書の詳細、お買い求めは、→ http://tinyurl.com/2bg27w

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■■選書コメント  
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本書は、一人の起業家の勇気ある一歩が、世界中の貧しい国々に携
帯電話を普及させ、それが次々に世界を変えていく物語の全貌を描
いた一冊です。

アジアやアフリカの発展途上国で、急速に携帯電話が普及しつつあ
ります。これまで電気すら通っていなかったような地域の、貧困層
にある人々にまで、その勢いは及んでいます。

結果、経済や社会構造が、大きく変化しはじめています。情報通信
の活発化で、農業も工業もサービス業も一気に発展したのです。今
やアフリカの貧困層の人さえ、ケータイで買い物をしています。

本書は、そんな「貧しい」人々に携帯電話を広め、世界を変えた起
業家イクバル・カディーアの起業物語です。そして、それを専門家
が詳しく解説する、途上国ビジネスの専門書でもあります。

本書は2部で構成されています。前半は、起業家カディーアが、ビ
ジネスの着想を得た経緯や、「牛を携帯電話に置き換える」という
理念、投資を得るための不断の努力などを紹介しています。

後半は、携帯電話が世界の貧しい農村部にまで広がり、各地で様々
な影響を及ぼしながら、世の中を変えていく様子を取り上げ、その
背景などを解説していきます。

300ページを越えるハードカバーの翻訳本で、図版も全くない体裁に、
躊躇するかもしれません。しかし、ひとたび読み始めれば、ぐいぐ
い引き込まれるはずです。

起業を志す人・興味のある人はもちろん、携帯関連の仕事に従事す
る人、貧困問題など世界の動きに関心を寄せる人など、幅広いビジ
ネスパーソンが、読んで楽しめ、勉強になる一冊です。

★本書の詳細、お買い求めは、→ http://tinyurl.com/2bg27w

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■ビジネス書をこよなく愛する藤井が、徒然に書きます。
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●本が呼んでいる!キラリと光る本の見つけ方

書店で本を手にするかどうか、結局、最後の決め手になるのは、表
紙のデザインです。「一枚の写真は100の言葉に勝る」などというよ
うに、人は言葉よりも映像やビジュアルから得る情報が圧倒的に多
いのです。

それだけに表紙のデザイン如何で、本は売れたり売れなかったりし
ます。特に、オンライン書店で買う人が増えたこともあり、売る側
に「表紙で目立たなければ」という焦りがあるのだと思います。

このように、売上の決め手になる表紙のデザインは、タイトル同様、
売るためのしかけが満載です。だから、デザインが優れているから
と言って、中身が優れているとは限りません。

ただ、表紙のデザインにはお金がかかりますので、表紙のデザイン
に力を入れている本は、少なくとも出版社は力を入れている一押し
の本と考えて間違いないと思います。

なお、デザインにも流行、廃りがあります。かつては、書店で目に
留まるように、原色や蛍光色一色の本がたくさんありました。競争
がエスカレートして、メタリックまで現れたあたりで収束した感が
あります。

また、著者がTVなどで顔を知られていたり、ビジュアル的に有利
な美男・美女だったりする場合、表紙に著者の顔写真を大きく載せ
ることも流行ました。

最近は、こうした反動からか、シンプルなものに戻っているようで
す。イメージ写真を使ったり、白ベースに黒いテキストを使うなど、
ベーシックなものが増えています。

いずれにしろ、ベストセラーが出ると、各社とも「右へ倣え」しま
す。これが流行廃りになっているのです。

なお、最近人気の新書だけは、出版社ごとに表紙のデザインを統一
しています。そのため、表紙のデザインで判断する手は使えません。
前出のタイトルや著者名などから判断するしかありません。

最終的にその本を手に取るかどうかを決めるのは直感です。本好き
が集まると、よく「この本、書店で呼んでたんだよね?」などとい
う言い方をします。

時々、本の洪水の中から「自分を読んでくれ!」と言っているよう
に思える本が、本当にあるのです。このようにして手にとった本に
は、意外にハズレがほとんどありません。

このあたり、本好きならではの独特のカンであり、職人芸みたいな
ものかもしれません。もし、書店に出向いて何となく気になる本が
あるなら、たぶん、直感が働いたのだと思います。ぜひ手に取って
みてください。

(つづく?)

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主宰者

藤井孝一
藤井孝一
経営コンサルタント
週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)発起人・元代表
(株)アンテレクト取締役会長

慶応義塾大学文学部を卒業後、大手金融会社でマーケティングを担当。米国駐在を経て、中小企業と起業家への経営コンサルティング開始する。2002年6月「週末起業フォーラム(現・週末起業実践会)」を設立。この新しい起業スタイルを全国のビジネスパーソンに普及させるべく奔走中。

株式会社アンテレクト

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